探しものはここにあるのにねこにけあきさんには「探し物はここにあるのに」で始まり、「明けない夜もあるのかもしれない」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば3ツイート(420字)以内でお願いします。
#書き出しと終わり #shindanmaker
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「探し物はここにあるのに」
今夜も右手から続く黒い靄を辿る。僕と彼を繋ぐそれを辿ればいとも簡単に彼のもとに辿り着ける。
合鍵で玄関を開ける。主の返事を待つことなく部屋に上がりこむ。
「おう、来たか」
その口ぶりはまるで僕の来訪を知っていたかのようだ、いや、知っていたのであろう。
ソファに座る彼の横に体を滑り込ませると右手に絡みついていた靄が大きく揺らいだ。
肉体を得た彼が僕の頬に首筋に唇を当てる。二心同体の一夜を経て僕らの魂は時々狂おしいほどにお互いを求め合う。完全に満たされることなど二度とない事はわかっているのに。
月の暗い夜、一筋の光も入らぬようカーテンを隙間なく閉める。灯りのない部屋の中魂の形を探るかの如く互いの身体を一心不乱に弄り合う。耳元で聞こえるのは互いの名を呼ぶ声と獲物を狙うものの吐息のみ。そこにただ一つでも愛が混じればよかったのかもしれない。ただ喰らうだけのセックスで繋がる僕たちに朝はいつまでも訪れなかった。永遠に見つからないものを求め続け治らない傷を舐め合うのであれば、いっそのこと身体を捨て暗闇の中二人溶けてしまいたかった。
空が白むころカーテンの隙間から射し込む光に手をかざす。相変わらず右手に纏わりつく仄暗い靄はこちらに背を向け眠る男へと繋がっている。その靄を辿るように男の腰に腕をまわし首筋に顔を埋め、そのまま肩に歯を立てる。
目覚めた男は僕の腕をつかむと強引に引き寄せた。再び目を瞑れば僕の世界は彼の吐息と鼓動で満たされる。
「明けない夜もあるのかもしれない」