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    ねこまんま

    @GWT60624633

    GW:T K暁
    ねこが自分の食べたいものを自炊するところ🍙

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    ねこまんま

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    キスの日の話暁人視点。謎時空な上、残念ながらチューはしてない。

    #K暁

    ───水の音がする

    深い眠りから目覚めた暁人はぼんやりとした意識を徐々に集中させ周りに目を配る。

    遥か頭上に見えるは朝を迎えた渋谷の町並みか。
    足元は底が見えずひたすらに冥い。
    まるで深海だな。

    暁人の身体は沈んでゆくわけではなくただただ見えない水の中をゆらりゆらりと漂っている。

    「あの夜」を超えてどうなったのか。記憶はまるで水で滲んでしまったように曖昧で、思い出そうとすればするほど頭の芯がじりじりと痺れた。自分に起きた出来事を把握することは諦め、今度は自分の身体に意識を向ける。

    掌を見て驚いた。掌から逆さまになったカゲリエが透けて見えている。あの夜渋谷中に漂っていた何万もの幽霊の姿を思い浮かべた。

    ──僕は、死んだのか

    そういえば、呼吸をしていないことに改めて気づく。そうだ、バイクに乗っていて事故にあったんだった。あの夜のことは死ぬ前に見た最期の夢だったのかもしれない。
    もう一度掌を見ると指先はかなり薄まり輪郭は水に同化してしまったかのように曖昧になっている。

    ──このままここに溶けてしまうのかな

    不思議と恐怖は無かった。それほどに自身を包む水の音は心地良い。

    ──また、眠ろう

    あの夢の続きを見れますように、そんな期待を込めてゆっくりとまぶたを閉じる。

    ◆◆◆

    己と他人の境界が失われ、一つに溶け合いつつある世界。その姿はまるで恒星が誕生する瞬間のようで、ただよう個々の意識がそれぞれに惹かれあい渦を巻きながら徐々に集まり、やがて一つのコアを形成する。
    そこに一筋流れてゆくのは暁人の意識。このまま渦の中心に飲み込まれてしまえば他人の意識と混じり合い、二度と「暁人」に戻ることはできない世界。

    ──月が、眩しい

    いや、こんなところに月があるわけないじゃないか。
    身体の輪郭をほとんど失い、もはや自分の身体の何処に目があるのかがわからない。ただ視線を動かすようにして意識を光源のある方に向けると水面の向こうには大きな満月が浮かんでいた。その姿はあまりにも大きく、手を伸ばせば届くのではないかと錯覚を起こす。
    そして月の方向からこれまた月の光のように温かい声が自分に向かってはっきりと語りかけて来る。

    『お前とまた一緒に過ごしたいんだ』

    ──あの声は、KK?
    もう一度声が聞きたいとひたすら願っていた。夢でもいいからもう一度会いたかった。流れに飲まれまいと足で踏ん張るように意識を働かせる。

    『オレは、早くまたお前に会いたい』
    もう一度彼の声が届いた。

    ──僕もKKに会いたい

    そう思うや否や暁人は月明かりに向かって我武者羅になって泳ぎ始めていた。大きなうねりに逆らい、他人の意識をどうにかかき分けるようにして進んでいく。この姿になってから初めて息が苦しいと感じていた。まだ死ねない。死にたくない…生きてKKに会わなければ。その思いを叶えるため必死になって腕を動かす。
    そして月明かりに近づけば近づくほど指先に、爪先に、全身に力が漲ってゆく。

    とうとう水面から顔を出した暁人は大きく息を吐き出した。月明かりに目が眩む。


    ◆◆◆

    まぶたを持ち上げると白い天井が目に映った。ゆっくりと視線を動かすと人影が見えた。月を背にした男の顔は見えないが暁人はそれが誰か確信していた。

    「…おはよ…けぇけぇ…」

    唇が湿っていてそこだけが温かい。初めて感じたKKの温もり。
    それをもっと感じたくなって思わずKKの背中に手を回そうとしたが思っていたように力が入らない。そんな暁人の身体をKKが優しく支える。

    「…またKKに逢えてよかった」

    支えきれなくなった身体をKKの胸に預けると、KKはそれを受け止めるようにしてぎゅっと抱きしめた。
    とくとくと伝わるKKの心音は水の音より遥かに心地良い。

    「おかえり、暁人」

    そう囁いた彼の言葉が吐息と混じって暁人の耳を擽ると、頭の芯がじんわりと温かくなった。
    溢れ出てくる言葉は形にならず、目から流れ落ち暁人の頬を濡らした。
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    32honeymoon

    DONE◇#毎月25日はK暁デー ◇お題:匂い
    ・久しぶりのあまいちゃ糖度120ぱーせんとなので苦手な方は要注意!
    ・KKと暁人くんが同棲してる世界のおはなし
    ・相変わらずKKが暁人くん大好きマン

    長編をあげた後だったので、今回は短くさらっと。
    豪雨つづくここ最近、太陽が恋しくなって書いた作品です。
    台風の余波で大変な思いをしている皆さまの地域に、
    はやく気持ちいい秋晴れが届きますように。
    おひさまのにおいはしあわせの匂い。ーそれは秋晴れがさわやかな、とても良い天気のとある一日のおはなし。


    「KKー、布団下ろすの手伝ってー」
    「お?ああ、分かった」

    ソファでくつろいでいた休日のとある夕方。ベランダから聞こえてきた柔らかな声に、KKはよっこらせ、と立ち上がる。

    「布団、干してたのか。いつの間に・・・」
    「そうだよ。気づかなかった?」
    「・・・気づかなかった」

    少しだけばつが悪そうに目をそらす姿にはにかみながら、
    「だって今日はお日様の機嫌が良い一日だったからね。あやからなきゃ」と暁人が言う。

    「お日様の機嫌ねえ・・・また随分と可愛い事言うじゃねえか、」
    オレにしてみりゃただの暑い日って感じだったがな、と続けようとしたのを、KKが済んでの所で飲み込む。
    2373

    リキュール

    DONE #毎月25日はK暁デー
    7月お題【宿題】を書かせていただきました。またも大大大遅刻。
    可愛いこと言い出すあきとくんとそんな可愛いやつを甘やかしちゃうけけの話。
    美味しいもの食べるあきとくん。
    生姜の辛味は何にでも合う気がする。
    甘やかしには辛味を足して七月、それはある者にとっては書き入れ時、またある者にとってはただの平日、そして僕らの様な学生にとっては長い夏休みの始まりである。

    休みに何しようかと楽しそうに予定を立てる友人たちを横目に僕は頭を抱えていた。
    夏は夜に肝試しをする若者が増える季節ということもあってか、禁足地や事故物件が騒がしくなり毎夜KKと共にパトロールに精を出していたのだが、そんなこんなで忙しくしていたので、すっかり忘れていたのだ。
    前期の試験やレポートは問題ないが、引き続き後期でも受講する選択科目の講義には宿題が存在することを…!
    普通ならば夏休み中にやればいいんだから焦らなくても、なんて思うだろうがこれは資料集めが厄介で、どれも大学の図書館にしか無いようなものばかり。休みに入る前に資料の検討をつけてコピーしなくてはならないのである。ただでさえ難しい科目で前期レポートもギリギリだったのだ、生半可なレポートは出せまい。夏休み中も図書館に来ることはできるが休みには遠出の依頼があるため資料を求めて毎回行くわけにはいかず、できるだけ必要な資料は今のうちにまとめておきたい。それにあわよくばKKとの時間ももっと確保できれば…大丈夫僕ならやれる。
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