ぽかぽか「あ……、雪だ。」
三月と天の元に、はらりはらりと小さな雪の粒が舞い降りてきた。
今冬初めての、雪。
「本当だ。どうりで寒いわけだよ。手袋手袋……」
天は鞄の中を探って、手袋を取り出した。
アイボリーの手袋は、三月が去年のクリスマスに贈ったもの。
それだけじゃない。ミルクティー色のティペットに、ふわふわの耳当て、コートや靴の中に隠れて見えないがセーターや靴下だって。
弟の体調を気にしてばかりで意外と自分の寒さ対策にあまり頓着しない天。そんな彼のために三月が贈ったものをたくさん身に着けてくれている。
三月は改めて嬉しくなって、頬に熱を感じた。
三月の視線に気づいて、天が尋ねる。
「そんなにじっと見て……どうしたの?」
「なんかさぁ……冬って暖かいなって思って!」
三月は満面の笑みで言葉を返した。
「何言ってるの?冬は寒いでしょう。」
「いやぁ~、オレの心は暖けーんだよ!そうだ!今晩は二人で鍋にしないか?」
そう言って陽だまりのように笑う三月を見て、天も思わず笑みがこぼれる。
「……いいね、鍋。なんだか、ボクも心が暖かくなったみたい。」
「な~!今日は初雪記念の鍋!」
「ふふ、何それ。」
初雪が降った日に、二人で囲む今晩の鍋の話をしながら帰路に就く。
穏やかで、ささやかに、心がぽかぽかする。小さな幸せだ。