家族鍋島さん…啓護さんと結婚して数年、何時かこんな日がくるかも、と思っていた。
いや、正直来ないでほしい、と思ってしまっていたかもしれない。
でも…。
僕はお腹に手を当てながら病院を背に家へと足を進めた。
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僕には両親がいない。
物心付く頃には施設にいて沢山の子供と僕達を育てる先生達と暮らしていた。だって、一緒に住んでいた施設の子達にはどんな親であれ『親』を知っていたのだ。でも、僕は知らなかった。だから、僕という存在は僕ひとりでポッと生まれ、生きていたのだと思っていた。本当に子供の思考回路だったけど、これは僕自身の精神を守るために無意識にそう思い込んでいたのだろう、本当に両親はいないと思っていたんだ。
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