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    甘味。/konpeito

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    Ⅳノマ√後、クロリン。ク転生

    東方には、不思議な話が伝わっている。
     砂漠で迷うと火の化身、不知火が出るというものだ。不知火は白い毛に赤い目をしていて、迷い人を人里まで案内してくれる心根の優しいものなのだと言われていた。
     不知火にはかならずお供がそばに描かれている。猫のようであったり、鳥のようであったり、はたまた人のようでもあった。不知火はそれを生涯ただ唯一の相棒だと呼んでいた。その話をする不知火はアムリタの涙を流したという。



     ようやく辿り着いた家の扉をノックした。
    「どなたです……、か」
     恐る恐るひらいただろう扉の向こうから探し求めた愛しい人の顔が現れる。こちらを認識した瞬間、彼の瞳が揺れた。真っ赤な目から頬を伝い落ちる雫を指で拭う。あたたかい涙だった。
    「久しぶりだな。リィン」
    「ク、……ロウ」
     リィンは目の前に突然現れた俺の姿形を確かめるように頬を両手で包んでいる。しばらくそうしてからぎゅうぎゅう抱きついてきた。
    「いやあ、ここに辿り着くまで三回も生まれ変わったわ。まあでも、お前が変わらずお人好しで助かった。お前、伝承になってるぞ」
     案内された家のなかで当たり前のように紅茶を出されて曖昧に笑う。家を覆う数多の植物といい、豊富な家具類といい、ここが砂漠のど真ん中だという事実を忘れてしまいそうだった。
    「そんなに、探して……。すまない。どうも人里が合わなくて、ゼムリアに戻ってからはずっと砂漠地帯を点々としていたんだ。ここも人の目には見つかりにくいようにってエマとクロチルダさん、ローゼリアさんが」
    「魔女の秘術か。そりゃあなかなか見つからないわけだ。とりあえず、さっさと本題に入るぞ」
     テーブルのうえで彷徨っていたリィンの左手を掴む。薬指の根元に唇を寄せた。
    「リィン。これから先ずっと、俺と一緒に生きてくれませんか」
     リィンは幾筋も涙を流し、何度も何度も頷いてくれた。
     約束しよう。何度生まれ変わっても、君のそばで生を終えると。
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    さらさ

    DONEリクエストより「クロリンで指輪交換」でした。指輪を交換した勢いで誓ってもらいました。場所が場所だけどね!

    リクエストありがとうございました!
    誓いの環をその指に「買って、しまった……」

     十二月もまだ初旬、たまたま帝都に出たという理由だけで散策して見つけたシンプルな指環。ああ、あいつに似合いそうだと思ってうっかり買ってしまった物だったがこれを渡せる程の関係でもないという事は彼――リィンも分かり切っていた。一応、お付き合いしている関係ではある。だが余りにも空白の時間が長すぎた事、戦後の事後処理に追われて時間が取れない事が相まってしまい未だ実感が湧かないのが現実であった。だからこれは余りにも早すぎるというもので。そっとコートのポケットへと仕舞ったのだった。

    「やべぇ、買っちまった……」

     同時期、別の男もまた同じ事をしていた。たまたま見つけた最低限の装飾しか施されていない指輪。ああ、あいつの指にはめてしまいたいだなんて思っているうちに買ってしまった代物である。お付き合いを始めてそろそろ三か月、今度こそ手を離さないと誓ったものの状況がそれを許さなかった。彼らは別々の場所で必要とされ、帝国内を東奔西走するような日々である。言ってしまえば魔が差したようなものだと、彼――クロウは思う。なんせ相手は天性の朴念仁で人タラシ、所有痕の一つや二つ残しておかねば相手が近寄ってくる始末だ。その状況に頭を抱えていたのは事実だが、かといってここまでするつもりはまだ毛頭なかった。
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