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    甘味。/konpeito

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    甘味。/konpeito

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    ないものねだり、欲しがるばかりアシュクル
    本日の800文字

    欲しいと駄々を捏ねたところで手に入らないものはある。
     母に似た細い体躯。中性的な顔立ち。大剣を振るうには似つかわしくないそれに幾度も苦しめられた。父や兄、道場の門下生の彼らが身の丈ほどもある大剣を容易く扱うその姿に何度憧れただろう。何度、挫けただろう。
     それでもヴァンダールでは傍流である双剣術にしがみついたのは、ヴァンダール家の一員でありたいという意地だった。
    「あー。先に聞いておくが、なにがどうしてそうなった?」
     馴染みのある声で意識が引き上げられた。ソファに座ったまま声のほうに顔を向ける。
     アッシュだ。出先から戻ったらしい。コートスタンドに上着をかけた彼は不思議な顔をしていた。困っているのか、心配しているのか、むず痒そうな顔だ。
    「アッシュか。おかえり」
     外気で冷えた両手が頬に添えられた。口付けの予感についつい力んで唇を引き締める。唇を触れ合わせる、ただそれだけの行為で頭のなかを真っ白にされた。
    「ただいま。ふはっ。お前、本当いつになったら慣れんだよ。んで、どうした。それ、俺のシャツだろ?」
     クルトの座るソファに並んで腰を下ろしたアッシュが、肩に寄りかからせるように抱き寄せた。指を絡めて握る彼の手の大きさにため息がこぼれる。
    「干した洗濯物が、乾いたから取り込んで、畳んでいたんだ。そしたらお前のシャツが目に留まって」
     優しく相槌を打ち、彼のシャツからこぼれた指先を促すように擦られる。
     アッシュはクルトよりも上背があり、厚い胸板にはしっかりと筋肉が乗っている。まさにいつまで経っても追いつけない、クルトの理想を形にしたような体躯の持ち主だった。
    「もしも、もしも。自分がアッシュくらいの身体だったらと。今でも双剣術を極めたい気持ちは嘘じゃない。でも――」
    「んなの、分かってるよ。ないものねだりしたくなるものが誰だってひとつくらいあるもんだ。だいたい、この身体はお前ンだろ」
     言葉の意図が読めず、目を瞬いた。続けに押し倒され、悪い顔を向けられる。
    「この身体、お前の好きにしていいんだぜ?」
     さすがにここまで言われて察しない鈍感ではない。ソファに押し倒すアッシュを下から睨んだ。
    「いやしかし、前にエセふわが、彼シャツとはいいものです、なんて言ってたが。なかなかいいもんだな」
     舌舐めずりする男に呆れつつ、彼らしい慰めに絆されたクルトは彼の背に腕を回した。
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    甘味。/konpeito

    TRAINING両片思いアシュクル/創エピ第Ⅱ分校修学祭後自らの行いは自らでケリをつけたかった。
     皇帝暗殺の犯人が自分であるにも関わらず、世間ではそれを誤報とされている。この手で引き金を引いた感触が今でも残っているというのに。
    「ったく。めんどくせえ連中に捕まっちまったな」
     無理やり参加させられた打ち上げからひとり抜けたアッシュ・カーバイドは、今日の出来事を振り返っていた。
     学院生活最後の行事だからと妙に熱を入れてしまったのは自覚していた。不在時に決められたとはいえ、実行委員に任命されたからにはやりきりたかった。その結果、まさか出し物への投票だと勘違いしていた選挙箱で生徒会長になってしまうとは思いもしなかったが。
     来月には学院を去り、遊撃士として仕事をしながらせめてもの罪滅ぼしをしようと考えていただけに、完全に予定を狂わされてしまった。
    「アッシュ、ここにいたのか」
    「クルトか。酒もないのに付き合いきれねえ。連れ戻したかったら酒持ってこい」
    「俺たち未成年だろ」
     クルト・ヴァンダールに呆れたような目を向けられ、肩を窄めた。何事にもお堅いこのクラスメイトが未成年の飲酒を容認するはずもない。
     生活態度は至って真面目、剣技は教科書通り、 870

    さらさ

    MOURNING「何かあって不機嫌そうなクロリンが戦闘では息ピッタリな話」の続き。やっとくっつきます。
    付き合ってないのに痴話喧嘩は犬も食わない リィンとクロウの不仲騒動から数時間。第五階層の最奥まで回って《円庭》に戻ってきた面々は二人を除いて疲れ切った表情をしていた。余りにも不毛な痴話喧嘩、それでいて付き合っていないというのだから手に負えない。瞬く間にそれは広がり、新旧Ⅶ組は総出で溜息をつき、他の面々も事情を察したように苦笑いをしていた。一部生温かい目で見る者もいたようだが。

    「全く、本当にいいのかい?リィン君だって同じ気持ちを持っているのだろう?」
    「……あいつには悪いが、応えられるほど真っ直ぐじゃねぇんだ」

    テーブルを囲って、かつて試験班だった面々がクロウに詰め寄る。アンゼリカの言葉に彼は首を振った後、真剣に迫ってきたリィンの事を思い出す。構えば構う程、愛情と執着心そして独占欲が生まれ、その度にクロウは己を律してきた。果たしてそれは必要か、と。必要であるならばいくらでも利用できる。だと言うのに彼の場合はどうだ、根も真っ直ぐでたくさんの人から慕われている。そんな彼を利用するだなんて出来ないし、したくもなかった、これはフェイクでも何でもない本音であった。未だに《C》だったころの話も出してネタにするのは正直言ってやめて欲しいのだが。
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    さらさ

    MOURNINGフォロワーさんのネタをサルベージした一品。二パターンのうちの一個。曰くフォロワーさん的にはこっちがお望みだったようなのでこちらを先にアップ。
    でも本当に様になるねこの男は。

    尚そんなに活躍していない偽名は、私の趣味です(特にローデリヒ)
    踊ってください、愛し君「あれが例のターゲットか」
    「そうみたいだな。さぁて、どうしてやろうか」

     帝国のとある貴族邸にて。一時期帝国とクロスベルを行き来していた偽ブランド商がこの屋敷にて開かれる夜会に紛れてどうやら密談を行うらしい。そこでクロウとリィンには穏便な形での取り押さえるという依頼が舞い込んできたのである。相談した結果、ターゲットが女性である事とクロウ曰く二人そろって見目もいい事から凝った変装は必要ないだろうという事になった。ただリィンの場合は顔と名前を知られすぎているので、一工夫必要だとクロウの手によって好き勝手され。ラウラやユーシス、時間が出来たからと顔を出したミュゼの審査を受けてようやく目的地に辿り着いたのだが。如何せん、そこまでの振り回されたこともあって少々疲弊していた。潜入捜査に男二人は流石に目立たないだろうかとは思ったものの、その手のプロから珍しい事ではないとのアドバイスをもらったので女装させられるよりはましかと腹を括った。
    1996

    さらさ

    DONEリクエストより「クロリンで指輪交換」でした。指輪を交換した勢いで誓ってもらいました。場所が場所だけどね!

    リクエストありがとうございました!
    誓いの環をその指に「買って、しまった……」

     十二月もまだ初旬、たまたま帝都に出たという理由だけで散策して見つけたシンプルな指環。ああ、あいつに似合いそうだと思ってうっかり買ってしまった物だったがこれを渡せる程の関係でもないという事は彼――リィンも分かり切っていた。一応、お付き合いしている関係ではある。だが余りにも空白の時間が長すぎた事、戦後の事後処理に追われて時間が取れない事が相まってしまい未だ実感が湧かないのが現実であった。だからこれは余りにも早すぎるというもので。そっとコートのポケットへと仕舞ったのだった。

    「やべぇ、買っちまった……」

     同時期、別の男もまた同じ事をしていた。たまたま見つけた最低限の装飾しか施されていない指輪。ああ、あいつの指にはめてしまいたいだなんて思っているうちに買ってしまった代物である。お付き合いを始めてそろそろ三か月、今度こそ手を離さないと誓ったものの状況がそれを許さなかった。彼らは別々の場所で必要とされ、帝国内を東奔西走するような日々である。言ってしまえば魔が差したようなものだと、彼――クロウは思う。なんせ相手は天性の朴念仁で人タラシ、所有痕の一つや二つ残しておかねば相手が近寄ってくる始末だ。その状況に頭を抱えていたのは事実だが、かといってここまでするつもりはまだ毛頭なかった。
    1833