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    甘味。/konpeito

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    甘味。/konpeito

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    本日の800文字チャレンジ
    クロリン/メリークリスマス
    一足早いですが、思いついたときに書きたい人

    ユミルほどではないが、冬のジュライは寒い。
     リィン・シュバルツァーは港の欄干に身を預け、波が次々に砕けていく様をなんともなしに眺めていた。港に停泊している船は暗い闇の波間に揺れ、静かだ。
    「見つけた。ここにいたのか」
     後ろからリィンより大きな身体に抱きすくめられ、穏やかな声が降ってくる。見上げるように振り向くと、垂れた目尻をますます下げた恋人、クロウ・アームブラストだった。
    「クロウ。少し海が眺めたくて」
    「やっぱり山育ちには珍しいもんかね」
     彼の顎が肩口に乗せられる。寒い、寒いと言いながら彼のコートはしっかりリィンを包んでいた。
    「過保護」
    「俺も暖をとれるからいいんだよ」
     抱き込む彼に寄りかかる。びくともしない。リィンもそれなりに鍛えていると自負しているが、得物が太刀であり、元々の体質も手伝って彼ほどしっかりした筋肉は未だに得られていない。
     悔しさをぶつけるようにますます背後に体重を預けた。
    「これだけ寒けりゃ雪でも降るかもな」
     独り言のようなそれが白い息に交じる。吹き付ける海風に晒された鼻頭も赤くなっていた。
    「積もるか?」
    「わくわくすんな。お前んところほどじゃない。ここであんなに降ったら一大事だ」
     顔をしかめる彼にそれもそうかと納得する。
     リィンの故郷、ユミルでは山のように雪が降り、ウィンタースポーツが楽しめるほどだった。それに、雪景色を眺めながら温泉に浸かるのもなかなかにおつだ。クロウも去年の暮れ、ともにユミルを訪れたときには初心者ながらもリィンと並んでスノーボードを楽しんでいた。
    「そろそろ家に入ろうぜ。スタークがホットワインでも作って待ってるだろ」
    「あ、その前に」
     抱きしめられた腕のなかで身をよじらせる。向き合った彼の肩に手を乗せ、リィンから口付けた。
    「メリークリスマス、クロウ」
     さすがにみんなの前ではな、と照れていると顎が掬われた。
    「おう、メリークリスマス」
     ちらちら舞い降る雪のなか、小さな熱が唇に灯った。
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    さらさ

    MOURNING「何かあって不機嫌そうなクロリンが戦闘では息ピッタリな話」の続き。やっとくっつきます。
    付き合ってないのに痴話喧嘩は犬も食わない リィンとクロウの不仲騒動から数時間。第五階層の最奥まで回って《円庭》に戻ってきた面々は二人を除いて疲れ切った表情をしていた。余りにも不毛な痴話喧嘩、それでいて付き合っていないというのだから手に負えない。瞬く間にそれは広がり、新旧Ⅶ組は総出で溜息をつき、他の面々も事情を察したように苦笑いをしていた。一部生温かい目で見る者もいたようだが。

    「全く、本当にいいのかい?リィン君だって同じ気持ちを持っているのだろう?」
    「……あいつには悪いが、応えられるほど真っ直ぐじゃねぇんだ」

    テーブルを囲って、かつて試験班だった面々がクロウに詰め寄る。アンゼリカの言葉に彼は首を振った後、真剣に迫ってきたリィンの事を思い出す。構えば構う程、愛情と執着心そして独占欲が生まれ、その度にクロウは己を律してきた。果たしてそれは必要か、と。必要であるならばいくらでも利用できる。だと言うのに彼の場合はどうだ、根も真っ直ぐでたくさんの人から慕われている。そんな彼を利用するだなんて出来ないし、したくもなかった、これはフェイクでも何でもない本音であった。未だに《C》だったころの話も出してネタにするのは正直言ってやめて欲しいのだが。
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    さらさ

    DONEクロリンwebオンリーのエア小話より「内容指定無しの更紗が書いたクロリン」です。
    12月に不安定になっちゃうリィンが今年はしっかりしなきゃと思いながらクロウにメールすることから始まるシリアスクロリン。



    ランディが出てくるのは私の趣味です(書き分け難しかったけど楽しかった)
    慣れぬくらいならその腕に ――冬、か。リィンは仕事が一段落した寮のベッドで、バタリと倒れながらそう思う。《黄昏》が終結してから三度目になるその季節に、そろそろ拭えていい筈の不安がまだ心の奥底で突き刺さっていた。

    「流石に通信は女々しいかな」

    流石に三度目ともなれば慣れなくてはならないと、彼は思う。今は異国を巡りながら情報収集やら遊撃士協会の協力者やらで忙しい悪友を、年末には必ず帰ってくる優しい人を心配させない為に。開いたり、閉じたりしてどうも定まらない思考をなんとか纏めようとする。

    「今年は帰ってこなくても大丈夫だって、言おうかな……」

    移動距離だってそんなに短くないのだ、忙しい時間を自分に割かせるには余りにも勿体無さすぎる。そもそも、帰ってくるという表現さえ正しいのかは分からないが。導力メールで今年は帰ってこなくても大丈夫だという旨だけ書いて送信して、そのまま目を閉じる。通信を告げる着信音がやけに遠く感じながら、リィンはそのまま眠りについた。
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