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    甘味。/konpeito

    800文字チャレンジだったりssを投げる場所

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    甘味。/konpeito

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    本日の800文字チャレンジ
    クロ+リン/Ⅰ学院祭後
    今だけは優しい夢を

    「クロウ。貴方も分かっているのでしょう。間も無く御伽噺の幕が上がろうとしていることを」
     蒼の導き手、ヴィータが歌うように言った。悲しい声だった。
     彼女の語る御伽噺も、その結末のすり替えもクロウにはなんの興味もなかった。ただ祖父の仇討ちを遂行する。それだけだ。
    「ああ。分かってる。もうすぐこんな学院生活ともオサラバだってな」
     自室で双拳銃の調整をしている手は止めず、宵闇に溶けそうな淡い光を放つ魔女を横目に頷く。蒼の騎神による試しの試練を一度は通った身だ。残された時間が少ないなんて理解していた。おそらく騎神にリィンが起動者として選ばれるだろうことも想定済みだ。
     ガタン。列車の揺れで目が覚める。隣りに座るリィンはクロウの肩に寄りかかり、眠っているようだった。
    「寝ちまってたか。トリスタは――、まだだったな」
     放課後にリィンとふたり、帝都にあるブティックへ学院祭でのライブの成功を知らせた帰り道だった。
     列車の窓から見える夕日は燃えるように赤い。
     後夜祭の夜、焚き火で赤く照らされた彼の顔がちらついた。置いていかないでと迷子のような目をしていた彼に、繋がりを許してしまった。
     なんて、未練たらしい。これから全部捨てていく身だ。借りた五〇ミラの利子なんて知らぬ存ぜぬを突き通さなければならなかった。
     彼の寄りかかった肩が温かい。閉じた目蓋にかかった髪を払ってやる。穏やかな寝顔に目を細めた。
     連日続いた学院祭の準備から並行して方々からの依頼をこなし、旧校舎での最後の試し、さらにはステージを見事やり遂げた彼はようやく一息つけたのだ。これがつかの間の休息になるとも知らず、今は静かに寝息を立てている。
     ヴィータが歌う御伽噺の幕はすでに上がった。主演のふたりは結末も知らず、今はただ身を任せるまま列車に揺られていた。
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