Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    甘味。/konpeito

    800文字チャレンジだったりssを投げる場所

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 115

    甘味。/konpeito

    ☆quiet follow

    本日の800文字チャレンジ
    クロリン/湯たんぽだけじゃ、足りなくて

    「さすが豪雪地帯の冬、と言ったところか」
     鳳凰館に宿泊しているクロウは、生地の厚いカーテンの隙間から窓の外に広がる雪景色を眺めていた。夕刻から降りはじめた雪は、強くなる一方だ。
     冬のユミルに行かないか。そうリィンに誘われたクロウは、お互いの休みを利用して彼の故郷、ユミルを訪れていた。
    「おお、さみいさみい。――ん?」
     寝間着のうえに羽織ったコートの襟をかき合わせる。不意にドアの向こうへ近づく気配で振り返った。
    「リィンか。どうしたんだ」
     律儀にノックをしてから入ってくる姿に目を瞬く。彼は実家の男爵家へ、クロウはこの鳳凰館へ泊まることになっていた。
    「その、今日は特に冷えるから。湯たんぽ、持ってきたんだ」
     おそるおそる差し出されたものを受けとる。その体温ほどの温かさが冷えた身体に染みた。
    「おっ。サンキューな」
     すっかり手持ち無沙汰になってしまったリィンは、口をひらいては閉じてを繰り返していた。寒さに慣れている彼が二の腕をさすっている。
    「ほれ、早く入れって。寒がりの俺にはこんなんじゃ全然足りないんだよなあ」
     腕ごと引き寄せ、彼の身体を抱き留める。そのままふたりでベッドへ雪崩れ込んだ。
     お互いの体温が馴染んだ頃、クロウの腕に頭を預けたリィンが目を細めて静かに笑っていた。
    「なにニヤニヤしてんだよ」
    「いやなに、今日は一段とこの目が綺麗に見えたから。スノーボードは気に入ってくれたか?」
    「まあ、そこそこな」
     恥ずかしげもなく綺麗だとのたまう口を親指でなぞった拍子に、そこがきゅっと引き結ばれる。突然訪れた沈黙のなかで期待の眼差しを向けられ、誘われるまま口付けた。
    「……目、閉じろよ」
    「そっちこそ」
     文句を垂れた唇が奪われる。クロウもまた、欲の滲んだ紫黒の双眸から目が離せずにいた。脇腹を弄っていた腕が無遠慮に掴まれる。
    「ベッド、汚したくない」
    「酷いヤツめ」
     互いの足を絡ませ合い、見つめ合っては口付ける。
     しんしんと雪が降り積もるなか、静かに夜は更けていった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    ❤❤❤❤❤❤❤❤❤❤❤
    Let's send reactions!
    Replies from the creator