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    甘味。/konpeito

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    甘味。/konpeito

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    クロリン/綻ぶ笑顔は花のよう

    薄暗い倉庫のなか、無造作に積まれたコンテナに囲まれたクロウは、両手を後ろで縛られていた。
    「ってー。口んなか切れてるなこりゃ」
     動かすだけで口のなかに広がる鉄の味に眉をしかめた。尋問された際に切れたのだろう。拘束されているせいで頬についた汚れでさえ、ぬぐうこともできない。
     痛む唇をもごもごさせていると、見張りの厳しい視線が刺さる。えへらと笑みを浮かべてごまかした。
     最近帝都で暗躍している組織の本拠地を調査するためこうして敵にわざと捕まったクロウは、あらかじめブーツのなかに仕込んでおいたナイフを袖の内側へ移動させ、脱出する機会を窺っていた。
    「さてと。腹も減ったし、そろそろ帰るとしますかね」
     複数ついていた見張りが無線で呼び出されていった頃だった。拘束を解くためにかかる時間。見張りを無力化する時間。この場から脱出する時間を計算したうえでいよいよ動き出した。
     脱出前に雇い主の情報を聞き出したり、メインシステムへ侵入していくらか情報をせしめていこうと、ひとり取り残された見張りを視界に納めながら袖の内側に隠していたナイフで縄に切れ目を入れていく。あともう少しで切れる。そのときだった。
     急に騒がしくなった扉の外に、見張りだけでなくクロウの視線も釘付けになる。怒号が飛び交うなか、轟音がどんどんクロウの捕らえられた倉庫へ近づいてくるのがいやでも分かった。
    「クロウ! 無事か!」
     恐らく鍵がかかっていたであろう扉を吹き飛ばしたリィンが駆け込んでくる。背後には台風が通過したような光景が広がっていた。
     唖然とリィンが通ってきただろう通路を眺めているクロウの背後で、残っていた見張りが彼の手により鎮められる。
    「お、おいおい。まだ情報聞き出してないんだが」
    「そんなことより」
    「そんなこと」
     リィンの気迫に数歩後ろへ下がるも、彼によって空いた距離が詰められる。
    「よかった……無事で」
     顔を綻ばせ、ほうと安堵の息をつく姿にようやく自由になった手で頭を掻くのだった。
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    recommended works

    さらさ

    MOURNING『瞳の交換』

    Q.何日遅れましたか?
    A.三日です(大遅刻)
    バレンタインデーの続編のつもりで書いたクロリン。ホワイトデーの昼から夜にかけた二人の話。
    「よっす、トワ。リィンいるか?」

     三月十四日、世間ではホワイトデーと呼ばれる日。バレンタインデーのお返しをする日と言われる今日は、当然のごとくクロウは先月から晴れてお付き合いを始めた恋人の所に顔を出す――つもりでいた。しかし、尋ね人はどうやら不在らしく。

    「今日は自由行動日だし買いたいものがあるからって、帝都に行ったみたいだよ。珍しいよねぇ」

    トワの言葉にクロウは同意する。何せ、自由行動日ともなれば率先して依頼を引き受けては忙しなく動く性分なのだから。だからこそ、これは珍しい。

    「今日はホワイトデーだし、クロウ君が来るのは予想してると思うけど……。先月の事、まだ気にしてるのかなぁ?」
    「ああ、あの赤飯事件な……」

    東方に伝わるという不思議な風習に倣って、勘のいい生徒の一部が赤飯を炊いた事件があった。勿論、ある程度東方由来の文化に通じている当事者がその意味を知らない筈もなく。その場で倒れてしまい大騒ぎになってしまった。分校中に広まってしまったそれは彼にとっては勿論羞恥以外何もなく。主導者が彼の教え子だった事もあり、新Ⅶ組を中心にその話題は御法度となった。ただ、そうなる前にクロ 3650

    さらさ

    DONEクロリンwebオンリーのエア小話より「内容指定無しの更紗が書いたクロリン」です。
    12月に不安定になっちゃうリィンが今年はしっかりしなきゃと思いながらクロウにメールすることから始まるシリアスクロリン。



    ランディが出てくるのは私の趣味です(書き分け難しかったけど楽しかった)
    慣れぬくらいならその腕に ――冬、か。リィンは仕事が一段落した寮のベッドで、バタリと倒れながらそう思う。《黄昏》が終結してから三度目になるその季節に、そろそろ拭えていい筈の不安がまだ心の奥底で突き刺さっていた。

    「流石に通信は女々しいかな」

    流石に三度目ともなれば慣れなくてはならないと、彼は思う。今は異国を巡りながら情報収集やら遊撃士協会の協力者やらで忙しい悪友を、年末には必ず帰ってくる優しい人を心配させない為に。開いたり、閉じたりしてどうも定まらない思考をなんとか纏めようとする。

    「今年は帰ってこなくても大丈夫だって、言おうかな……」

    移動距離だってそんなに短くないのだ、忙しい時間を自分に割かせるには余りにも勿体無さすぎる。そもそも、帰ってくるという表現さえ正しいのかは分からないが。導力メールで今年は帰ってこなくても大丈夫だという旨だけ書いて送信して、そのまま目を閉じる。通信を告げる着信音がやけに遠く感じながら、リィンはそのまま眠りについた。
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