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    甘味。/konpeito

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    甘味。/konpeito

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    クロリン/綻ぶ笑顔は花のよう

    薄暗い倉庫のなか、無造作に積まれたコンテナに囲まれたクロウは、両手を後ろで縛られていた。
    「ってー。口んなか切れてるなこりゃ」
     動かすだけで口のなかに広がる鉄の味に眉をしかめた。尋問された際に切れたのだろう。拘束されているせいで頬についた汚れでさえ、ぬぐうこともできない。
     痛む唇をもごもごさせていると、見張りの厳しい視線が刺さる。えへらと笑みを浮かべてごまかした。
     最近帝都で暗躍している組織の本拠地を調査するためこうして敵にわざと捕まったクロウは、あらかじめブーツのなかに仕込んでおいたナイフを袖の内側へ移動させ、脱出する機会を窺っていた。
    「さてと。腹も減ったし、そろそろ帰るとしますかね」
     複数ついていた見張りが無線で呼び出されていった頃だった。拘束を解くためにかかる時間。見張りを無力化する時間。この場から脱出する時間を計算したうえでいよいよ動き出した。
     脱出前に雇い主の情報を聞き出したり、メインシステムへ侵入していくらか情報をせしめていこうと、ひとり取り残された見張りを視界に納めながら袖の内側に隠していたナイフで縄に切れ目を入れていく。あともう少しで切れる。そのときだった。
     急に騒がしくなった扉の外に、見張りだけでなくクロウの視線も釘付けになる。怒号が飛び交うなか、轟音がどんどんクロウの捕らえられた倉庫へ近づいてくるのがいやでも分かった。
    「クロウ! 無事か!」
     恐らく鍵がかかっていたであろう扉を吹き飛ばしたリィンが駆け込んでくる。背後には台風が通過したような光景が広がっていた。
     唖然とリィンが通ってきただろう通路を眺めているクロウの背後で、残っていた見張りが彼の手により鎮められる。
    「お、おいおい。まだ情報聞き出してないんだが」
    「そんなことより」
    「そんなこと」
     リィンの気迫に数歩後ろへ下がるも、彼によって空いた距離が詰められる。
    「よかった……無事で」
     顔を綻ばせ、ほうと安堵の息をつく姿にようやく自由になった手で頭を掻くのだった。
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