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    甘味。/konpeito

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    甘味。/konpeito

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    クロリン/恋のエチュード/書きかけ

    売り言葉に買い言葉だった。
     あの日はふたりで酒瓶を五本開けていて、お互いにずいぶん酔っていたのは自覚していた。
    「相変わらず色恋の噂一つ聞かないが、そんなんでいざというとき大丈夫なのかよ」
    「大丈夫ってなにが」
     強かに酔った頭でどうにか聞き返す。ハイボールの入ったグラスを傾けたクロウ・アームブラストが器用に片眉をあげた。こんなときだって惚れ惚れするほどいい男だ。ふん、と鼻で笑われてリィン・シュバルツァーの眉間に皺が寄った。
    「そんなんじゃ、いざ本命ができたときにデートのひとつもスマートにできなくて恥かくぞ」
    「本気じゃない相手とデートするなんて、相手に失礼じゃないか」
    「真面目」
    「そんなに言うくらいだ、もちろんクロウはデートのひとつやふたつスマートにできるんだろうな」
     妙に棘のある言い方をしてしまう。呆れたようなその眼差しが、彼は本命でない相手ともデートできるといっているようだった。
    「へえ。そんじゃあいっちょ試してみるか?」
    「ああ。クロウのお手並み拝見といこうか」
     そのまま話の流れでお互いの休日の摺り合わせをおこない、結局二週間後にある第二分校の休養日にクロウが合わせる形となった。覚悟しておけとのたまうクロウに、受けて立つなどど返したリィンはふらつく足でどうにか宿舎に帰宅したのだった。
     クロウと飲んだ翌日、久しぶりの二日酔いに苦しみながらも鮮明に覚えているやりとりに頭を抱えた。いっそ向こうが忘れてくれていたらと願ったものの、彼とのデートを翌週に控えた頃には意識しないようにすればするほど空回っていたのか担当しているⅦ組の生徒らからたいそう心配されてしまい、事の経緯を説明する羽目になった。
     デートを翌日に控えた日には、カプア急便でリィンの元にクロウから荷物が届けられた。明日着てくること、と彼らしい文字の並ぶカードが添えられた洋服一式に彼の本気が窺い知れ、いよいよ覚悟を決める。
     そして訪れたデート当日。彼から贈られた服を身につけ、申し訳程度に髪型を整えたリィンは彼との待ち合わせ場所へと向かった。
     待ち合わせ場所に指定されたドライケルス広場は、多くの観光客で溢れていた。遠目に見える宮殿を背景に写真を撮る者。広場に出ている屋台で買ったらしい軽食を食べている者。広場の中央に鎮座する銅像を見上げている者など様々だった。
     クロウの姿はすぐに見つけた。また新調したらしいジャケットをそつなく着こなし、首元に巻かれたスカーフは彼によく似合っていた。自身の首に巻いた、揃いだろうデザインのスカーフを整えているうちに彼と視線が合う。早く来いよと振られた手に釣られて慌てて駆け寄った。
    「どうしたんだよ」
    「こういうの、つけ慣れていなくて。変じゃないか」
     使い慣れないスカーフを首元に巻いては解き、また巻くのを繰り返していると笑うのを堪えているようなクロウに取り上げられ、さっさと巻き直される。リィンの首を掠めた彼の手にどぎまぎしているうちに整えられ、これで大丈夫だと太鼓判を押される。彼の手が触れた首を擦ってどうにか礼の言葉を絞り出した。
    「さて、そろそろ行こうか」
     あっちと指差され、身体の向きを変えたときだった。自然な動作でクロウの手がするりとリィンの手を絡め取る。指と指を絡ませ合い、密着した手のひらが熱かった。緊張でじんわり手汗が滲む。彼がグローブをつけてくれていてよかったと、ほっと胸を撫で下ろした。
    「なんで、手……」
     手汗が気付かれないうちに解いてしまおうともがいていると、ことさら強く手を握られた。
    「あのなあ、デートだろ。相手の手くらい繋いでやれよ」
    「初めてのデートでも?」
    「初めてのデートでも」
     復唱され、慣れた調子で繋がれた手を見下ろした。いったいこれまで何人の手を引いてきたのか考えるだけで胸が痛む。こんな硬い男の手よりも柔らかい手を何度握ったのだろう。
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    さらさ

    MOURNING遅刻大魔王によるすったもんだクロリンがバレンタインデーにくっついて分校全体に知られるまで。ポイピク練習も兼ねてる舌先の魅惑


    「え、え~!?クロウくんにチョコレートあげてないの!?」

     トワの素っ頓狂な声が、第Ⅱ分校の食堂に響き渡った。七耀歴1208年、2月。もうすぐバレンタインデーだ、食堂やら寮のキッチンを貸し切っての菓子作りに女子生徒たちが浮足立っている。去年の同時期と言えばクロスベル解放作戦当日だ、直接参加した訳ではないとは言えど親しみある教官と生徒が参加するともなればムードもそれどころではなかった。実質、今年が初めてのトールズ第Ⅱ分校バレンタインデーである。男子生徒も一部落ち着かない様子ではあるが、それも今更と言ってしまえばそれまでなのだが。ともあれ、青春では割とお約束のイベントが差し迫ったことを踏まえ、生徒たちの押しに負けて食堂にやってきたリィンなのだが。

    「えっと、俺はクロウとは何もないですしチョコレートもあげてませんよ?」

    という言葉で冒頭に戻る。指し手であるミュゼでさえ予想外だったその回答に、誰もが頭を抱えた。この朴念仁め、は共通の認識であるが故に誰も口には出さないが。

    「で、でもでも!リィン教官はクロウさんのこととても好きですよね!?」

    ここでもユウナから容赦ない一 4406

    さらさ

    DONEエア小話 リクエストが指定なしとの事だったので
    「何かで互いに対して不機嫌そうにしてるクロリンが戦闘でも息ピッタリな話」
    です。リクエストありがとうございました。
    「……なんか、今日のクロウ機嫌悪くない?」
    「心なしか、リィンさんの機嫌も悪いような気がしますね」

     真・夢幻回廊、第五階層。最前線で戦うクロウとリィンを遠目に、後方支援役のエマとエリオットはそんな話をしていた。いつもだったらベタベタと言っていい程に距離が近いのが、二人ではありえないほどの常識的な距離だったし先程から二人で一度もリンクを繋いでいないのだ。一体何があったというのか、二人の様子を観察するにしても普段は砂糖を吐きたくなるほどドロドロに甘く見ていられないというのが新旧Ⅶ組どころか特務支援課他遊撃士等々の面子が出した結論だった。下手をしたら馬に蹴られかねない。そんな甘さを微塵も感じさせないまま、次から次へと魔獣を伸していく二人には最早感心せざるを得なかった。

    「なんというか、喧嘩したのか?」
    「それはあり得るかもしれないわね。でも……」

    サブメンバーとしてついてきているガイウスとエステルの視線は少し離れたところで戦闘を仕掛ける二人に向けられる。リンクはエマがリィンと繋ぎ、クロウはエリオットと繋いでいる。ダメージを受けることなく終わらせてしまうので、あまり意味がないのだが。
    1171

    さらさ

    MOURNING「何かあって不機嫌そうなクロリンが戦闘では息ピッタリな話」の続き。やっとくっつきます。
    付き合ってないのに痴話喧嘩は犬も食わない リィンとクロウの不仲騒動から数時間。第五階層の最奥まで回って《円庭》に戻ってきた面々は二人を除いて疲れ切った表情をしていた。余りにも不毛な痴話喧嘩、それでいて付き合っていないというのだから手に負えない。瞬く間にそれは広がり、新旧Ⅶ組は総出で溜息をつき、他の面々も事情を察したように苦笑いをしていた。一部生温かい目で見る者もいたようだが。

    「全く、本当にいいのかい?リィン君だって同じ気持ちを持っているのだろう?」
    「……あいつには悪いが、応えられるほど真っ直ぐじゃねぇんだ」

    テーブルを囲って、かつて試験班だった面々がクロウに詰め寄る。アンゼリカの言葉に彼は首を振った後、真剣に迫ってきたリィンの事を思い出す。構えば構う程、愛情と執着心そして独占欲が生まれ、その度にクロウは己を律してきた。果たしてそれは必要か、と。必要であるならばいくらでも利用できる。だと言うのに彼の場合はどうだ、根も真っ直ぐでたくさんの人から慕われている。そんな彼を利用するだなんて出来ないし、したくもなかった、これはフェイクでも何でもない本音であった。未だに《C》だったころの話も出してネタにするのは正直言ってやめて欲しいのだが。
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    さらさ

    DONEリクエストより「クロリンで指輪交換」でした。指輪を交換した勢いで誓ってもらいました。場所が場所だけどね!

    リクエストありがとうございました!
    誓いの環をその指に「買って、しまった……」

     十二月もまだ初旬、たまたま帝都に出たという理由だけで散策して見つけたシンプルな指環。ああ、あいつに似合いそうだと思ってうっかり買ってしまった物だったがこれを渡せる程の関係でもないという事は彼――リィンも分かり切っていた。一応、お付き合いしている関係ではある。だが余りにも空白の時間が長すぎた事、戦後の事後処理に追われて時間が取れない事が相まってしまい未だ実感が湧かないのが現実であった。だからこれは余りにも早すぎるというもので。そっとコートのポケットへと仕舞ったのだった。

    「やべぇ、買っちまった……」

     同時期、別の男もまた同じ事をしていた。たまたま見つけた最低限の装飾しか施されていない指輪。ああ、あいつの指にはめてしまいたいだなんて思っているうちに買ってしまった代物である。お付き合いを始めてそろそろ三か月、今度こそ手を離さないと誓ったものの状況がそれを許さなかった。彼らは別々の場所で必要とされ、帝国内を東奔西走するような日々である。言ってしまえば魔が差したようなものだと、彼――クロウは思う。なんせ相手は天性の朴念仁で人タラシ、所有痕の一つや二つ残しておかねば相手が近寄ってくる始末だ。その状況に頭を抱えていたのは事実だが、かといってここまでするつもりはまだ毛頭なかった。
    1833

    さらさ

    DONEクロリンwebオンリーのエア小話より「内容指定無しの更紗が書いたクロリン」です。
    12月に不安定になっちゃうリィンが今年はしっかりしなきゃと思いながらクロウにメールすることから始まるシリアスクロリン。



    ランディが出てくるのは私の趣味です(書き分け難しかったけど楽しかった)
    慣れぬくらいならその腕に ――冬、か。リィンは仕事が一段落した寮のベッドで、バタリと倒れながらそう思う。《黄昏》が終結してから三度目になるその季節に、そろそろ拭えていい筈の不安がまだ心の奥底で突き刺さっていた。

    「流石に通信は女々しいかな」

    流石に三度目ともなれば慣れなくてはならないと、彼は思う。今は異国を巡りながら情報収集やら遊撃士協会の協力者やらで忙しい悪友を、年末には必ず帰ってくる優しい人を心配させない為に。開いたり、閉じたりしてどうも定まらない思考をなんとか纏めようとする。

    「今年は帰ってこなくても大丈夫だって、言おうかな……」

    移動距離だってそんなに短くないのだ、忙しい時間を自分に割かせるには余りにも勿体無さすぎる。そもそも、帰ってくるという表現さえ正しいのかは分からないが。導力メールで今年は帰ってこなくても大丈夫だという旨だけ書いて送信して、そのまま目を閉じる。通信を告げる着信音がやけに遠く感じながら、リィンはそのまま眠りについた。
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