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    okinami_saza

    土沖とみかつるの短編小説とかアップしてます
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    土沖ワンドロライお題「おんぶ」

    ##土沖

    おんぶ 打たれ弱いドSな青年は血まみれの両手を差し出して男に言った。
    「土方さん、歩けねェ。おぶってくだせェ」



     なんてことはない討ち入りだと思われていた。強いて言えば真選組を相手取るには弱すぎることに違和感があった。それゆえにスルスルと施設内部まで誘い込まれてしまったのだ。
     先陣を走っていた沖田が真っ先に異変に気がつき、珍しく声を張り上げ警鐘を鳴らした。
    「全員戻れ!」
     隊士が命令を理解するより早く沖田は彼らを刀で峰打ちして部屋から押し出し、金属製のドアを閉じてしまった。ガチャンと絶望的な音が鳴り響く。
     何が起きたのか把握しているものはその場に誰一人いなかった。ただ扉の隙間から白い煙が漏れ出し、なんらかの薬品を撒かれたことを察した。
    「沖田隊長!!」
     慌ててドアを開けようとしたところで、第二陣であった土方と二番隊が走ってきた。
    「総悟……!」
    「ふ、副長……!」
     一番隊の隊士が追いついた土方を見てオロオロと説明をして指示を仰ぐ。土方は悲痛な顔で扉を見た後、漏れ出している煙の匂いを嗅いだりして特徴を書き出した。
    「至急山崎に調べさせろ。それと防護マスクの手配を」
     二番隊の隊士の一人にそのメモを手渡す。渡された隊士は大急ぎで元来た道を戻っていく。
    「副長、突入は」
    「……総悟がテメェらを追い出したってんなら今はまだ入るな」
     沖田とて瞬時になんの毒薬を撒かれたかなど判断はできなかっただろう。しかし犠牲を最小限にするために扉を閉めた。施錠できないタイプの扉だが薬剤が漏れ出している間はこちらから開けることはできない。
     扉の向こうからは刀が奏でる金属音が響いており、沖田の命が消えていないことだけは確認できていた。
     隙間から漏れ出していた煙が落ち着いてキッカリ五分。ようやく防護マスクを持ってきた隊士が到着した。数は三人分。もう意味はないかも知れないが沖田の分を残して土方ともう一人が装置した。
    「……開けるぞ」
     マスクのない隊士は下がらせ、土方は扉を開けた。
     中で立っていたのは二人だけ。沖田と防護マスクをつけた攘夷浪士の一人だ。残りは全て血の海に沈んでいた。その数二十人近い。
    「もう終わりやすから、絶対にこっちに来ないでくだせェ」
     沖田が対峙していたのはそこそこの使い手だった。だが普段の沖田であれば苦戦するような相手ではなかったが、何回か打ち合ってようやく沖田は斬り捨てた。
    「総悟!」
     土方が駆け寄って防護マスクをつけさせようとすると、沖田は手でそれを拒んだ。
    「もう手遅れなんで無駄でさァ」
    「……症状は」
    「目がまったく見えやせん。喉も痛いけど多分こっちは副作用レベルでさァ」
     それで沖田は戦いの最中に土方に向かってくるなと言ったのだ。見えない状態で戦うとなると殺気で判断するしかなく、敵味方を判断するのは至難の技だ。咄嗟の機転で沖田が自分以外を部屋の外に出していなかったら、混乱した隊士たちによって自滅していた可能性すらある。もちろん残った人間が沖田だったからこそ、見えない状況でも部屋の外へ敵を逃さず全員討ち取ることができたわけだが。
     土方の横に付いていた隊士は信じられないものを見るような顔で沖田と部屋の惨状を交互に見ている。化け物みたいに沖田を見るなと叱りつけたくなったが、幸い沖田自身には彼の表情が見えないのでその場で指摘するのはやめた。もちろんあとで詰めるが。
    「俺と総悟は外に向かう。撒かれた薬剤の残骸をみつけて持ってこい。薬品名がわかるとなおいい」
     とにかくまずは沖田を解毒しなくてはいけない。土方はそう命令して沖田の手を取って部屋からでた。外で待機していた隊士の二人に自分と沖田の分の防護マスクを手渡して中を手伝うよう申し付け、あとは一旦撤退させた。隊士たちがバラバラと持ち場へ走っていくと、沖田は突然土方に向かって両手を伸ばした。
    「土方さん、歩けねェ。おぶってくだせェ」
     従来沖田は打たれ弱いのだ。見えない状態で気を張りながら歩くなんてとんでもない。
    「……別人みてェだよな」
     見えないからおぶえと言ってくる男が、たった一人、仲間を逃して見えない状態で十数人の敵を地に伏したのだ。そんな偉業を成した大切な恋人相手に自分で歩けと言うほど土方も鬼ではない。
     無言で両手の間に背を入れてそのまま担ぎ上げた。昔はよく寝てしまった沖田をおぶったりしたが、重くなったなと感傷的になったのも束の間。
    「へへっ、進め! 土方丸二十一号」
     全てをぶち壊すかのような掛け声が背中から響いた。
    「馬じゃねェんだわ、落とすぞコラ」
     そんなことはできないがついそう反論して、考えていたことは全て吹き飛んでいた。
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