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    クロロレ。ェュ前提なのでご注意ください。
    紅花ルート。

    有情たちの夜.15「枠の外へ3_5」 クロードの腹立たしい点はいくつもある。まず、ヒューベルトたちと考えが重なる点があったことが腹立たしい。英雄の遺産に頼らずやってのけようとしたこと、全力を尽くさなかったこと、そのどちらも神経に触る。
    「クロードは人の手だけで何とかしようとしたのだ……。知識は間違っていることがあるし、信頼も儚い。未来は観察できないからな」
     親友の淹れた紅茶を口にして気が緩んだのか、ローレンツはそう呟いた。領主は即決する力と判断を保留する力、矛盾する二つの力をどちらも求められる。
    「ローレンツ、これは私見でしかない。だが私が思うに……最後に残るのは感情や想像力なのだ」
     当事者である自分なしに全てが決まっていくことへの憤り、そして悲しみがヒューベルトの主君エーデルガルトの原動力だ。ローレンツは彼自身が傷つかぬよう、得するようにクロードからお膳立てされたがそれでもひどく馬鹿にされた気分だろう。
    「おや、想像力はともかく貴殿は感情に振り回された王国の者たちに引導を渡して回っていたではありませんか」
     アリアンロッドでもタルティーンでもフェルディアでもフェルディナントは返り血まみれになっていた。彼の燃えるような橙色の髪と違って死人の血はどす黒く、布にこびりついたまま固まると擦れて引っ掻き傷ができる。彼はあの寒い王国でも湯が沸くまで我慢できず、川や池で血を洗い流していた。貴族らしい身なりを保つために野蛮なことをしているのだが、びしょ濡れの彼が火にあたりに行くと兵たちが貴族らしくない、と言って喜ぶ。
    「ヒューベルト、混ぜっ返すのはやめてくれたまえ」
     苦境はフェルディナントから優雅さを奪うことに失敗した。そして彼の思索はより深い領域まで到達し、政策に活かされることも多い。
    「笑顔の奥でどんな感情を抱いていたのやら……」
    「ローレンツ、私が共にいるのだから怖がらずに自分の感情を認めて欲しい」
     ヒューベルトのフェルディナントに対する評価は戦乱の時を経て、目障りで薄っぺらな理想主義者から生まれついての人たらしへと変化していった。



     そもそもローレンツはクロードを疑いの目で見ていた。徹底的に疑ってかかり、理性で彼の人柄や行為に判断を下した結果、なんとも言いがたい関係になっている。
    「喜びを感じようとしても常に惨めさと寂しさがまとわりついてくる。現にこうして尋問まで受ける羽目になった」
    「矛盾など感じる必要はない。全て自然な感情ではないか」
     そう言えば先ほどヒューベルトはまず、と言った。クロードはフェイルノートの損壊以外に何をやらかしたのだろうか。
    「こちらは貴殿が彼と共謀していない、という確証が欲しいだけです。では密貿易の件はご存知ですか?」
    「当家の立場では推理しかできない」
     デアドラ防衛戦で軍港が使用不可能になったため、帝国軍は民間用の港を接収した。活動拠点を奪われても商人や漁師たちは食べていかねばならない。彼らはデアドラ市の対岸にある小さな島に船を移した。その島はかつてクロードが平民たちや商船や漁船を避難させていた島の一つで、急拵えの設備しかない。保安を名目として取り扱いできる荷の量には制限がかけられた。超過分の取引は全て密貿易扱いになる。
     逮捕も拿捕も帝国の匙加減次第という危うい状況にも関わらず、その島は戦乱で壊滅的な打撃を受けたファーガスとの貿易の拠点となっていた。彼の地は復興のため、ありとあらゆる物資を必要とする。そこに最近やたらとスレンやパルミラからの荷が増えたらしい。
     リーガン領の管理を任せるが港湾および海上を除く、という帝国本土からの通達をローレンツの父エルヴィンが素直にのんだ理由はこれか、とローレンツは悟った。帝国本土から派遣された官吏たちが大型船が接岸出来る港湾関係を取り仕切っている。ファーガスと旧リーガン領の反帝国派同士連携させないために彼らは必死だ。
    「ヒューベルト、恣意的な運用に私は反対だ。公正でなくては我々は正当性を失う」
    「フェルディナントくん、フェルディアはまだ……」
     フェルディナントの表情だけで状況が分かる。民たちにはまだ、どの土地の小麦が口に入っているか考える余裕はない。
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    DONE #クロロレ春のこども祭り2021重力から自由になったと思った矢先、クロードは全身に強い痛みを感じた。跳ね起きようとしてマヌエラ先生から身体を押さえられる。押さえられた拍子に視界がぐるぐると回りやがて上下が定まった。

    「落ち着きなさいクロード!貴方は飛竜から落ちたの。下敷きになったローレンツも骨折したわ。二人とも信仰魔法で治したけれど大怪我だったから落ち着くまで時間がかかるわ」

     落ち着く、とはなんだろうか。信仰魔法の主な副作用は吐き気と眩暈だ。先程マヌエラが起きあがろうとしたクロードを止めたのはせっかく治したのに目眩を自覚せず歩こうとして転倒されては無意味になってしまうからだろう。

    「ああ、それで視界がぐるぐると……それとローレンツが下敷きって??」
    「ローレンツも無事だから落ち着きなさい。目眩を起こしたまま歩くのは本当に危ないの。人によって体質の違いがあるけれど一日か二日は絶対安静よ」

    「せんせい、もうしわけないのだがおけをぼくのてもとにいただけないだろうか?」

     反対側の寝台から声変わり前の高くてかわいらしい子供の声がした。医務室の寝台には全て幕が掛かっていて互いが見えないようになっている。

    「ああ、 1753

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    MAIKING「説明できない」
    赤クロと青ロレの話です。
    4.遭遇・下
     犠牲者を一人も出すことなく野営訓練を終えて修道院に戻ることが出来た。ローレンツのほぼ記憶通りではあるが異なる点がある。ベレトが金鹿の学級の担任になったのだ。正式に採用された彼は既に士官学校から学生の資料を貰っている。だがグロンダーズで行われる模擬戦を控えたベレトはここ数日、放課後になると学級の皆に話を聞くため修道院の敷地内を走り回っていた。

     ローレンツはあの時、模造剣を配ろうとしたのは何故なのかとベレトに問われたが予め野盗達に襲われているのを知っていたから、とは言えない。言えば狂人扱いされるだろう。

    「歩兵の足が早すぎたからだ。補給部隊が本体と分断されたら敵に襲われやすくなる」

     食糧がなければ兵たちは戦えない。敵軍を撤退させるため戦端を開く前に物資の集積所を襲って物資を奪ったり焼き払ってしまうのは定石のひとつだ。ローレンツの言葉聞いたベレトは首を縦に振った。

    「それで足止めして予備の武器を渡したのか。装備をどうするかは本当に難しいんだ。あの場合は結果として合っていたな。良い判断をした」
    「ありがとう先生。そう言ってもらえると霧が晴れたような気分になるよ」

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    MAIKING「説明できない」
    赤クロと青ロレの話です。
    5.初戦・上
     三学級対抗の模擬戦はクロード達の勝利に終わった。これもクロードの記憶とは異なっている。容赦のなかったベレスの記憶があるクロードは事前に何か工作するかベレトに探りを入れてみたが拒否された。こんな下らないことに全力を尽くすなという意味なのか気高い倫理観の持ち主なのかはまだクロードには分からない。腹下しの薬は冗談だったが賛同してもらえたら武器庫に忍び込んで他学級の使う武器の持ち手にひびを入れてしまうつもりだった。

     母国やデアドラと比べるとガルグ=マクは肌寒い。気に食わない異母兄が王宮で働く女官を寝室に引っ張り込むような寒さだ。それでも来たばかりの頃と比べればかなり暖かくなっている。過酷な太陽の光に慣れたクロードの目にも山の緑は目に眩しく映った。長時間、薄暗い書庫で本を物色していたからだろうか。廊下に差す光に緑の目を細めながら歩いていると大司教レアの補佐を務めるセテスに声をかけられた。クロードは規則違反に目を光らせている彼のことがあまり得意ではない。

    「ちょうど良かった。クロード、後でベレトと共にこちらに顔を出しなさい」
    「分かりました。セテスさんは先生が今どの辺りにいる 2100