Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    111strokes111

    @111strokes111

    https://forms.gle/PNTT24wWkQi37D25A
    何かありましたら。

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 299

    111strokes111

    ☆quiet follow

    蒼月ルートのクロロレです。

    家出息子たちの帰還.3───精霊や神と交流する力に恵まれた巫者も大まかに二つに分類することができる。過酷な修業と儀式を経て、力を得たものたちと精霊や神に選ばれて力を得たものたちだ。一晩中、呪文を唱えながら己の身体を鞭打つ修業や焼けた炭の上を裸足で歩く儀式などが有名だ。(中略) 選ばれた、というと修業や儀式抜きで楽に力を得たような印象を受ける。だが神に選ばれたものたちは巫病と呼ばれる謎の病に長期間、苦しむ。巫病は当初、巫病として認識されない───

     敵わない。多少はある年の功も、この身に宿す紋章も残酷な格差をシルヴァンに思い知らせるだけだった。退屈なほどに静かだった夜は切り裂かれている。彼を守るためグレンは命を落としたというのにディミトリは駆け出してしまった。
     囮になってこちらを守るためだという意図は分かっている。だが訓練用の槍しか持っていない身で先王の血とブレーダッドの紋章を受け継ぐ存在がそんな係を担当する必要はない。
     盗賊たちの叫び声から察するに確かに級長、いや、後継者たちの命が主目的のようだった。だが半分はまだこの野営地に残っている。
     あたりは盗賊と学生双方の叫び声や武器を振るう音、魔法の詠唱で騒然としていた。フェリクスは実戦経験もあり、剣技も巧みだが安全のため刃が潰してある剣では真の実力を発揮できるはずもない。仕方なくシルヴァンが握っている槍も刃が潰してある。
    「危ない!メルセデスさん!」
     篝火の明るさを頼りに、頼りにならない鈍らを振るって盗賊と戦っていると自分と同じく槍を構えていた筈のローレンツの叫び声が聞こえた。シルヴァンの手元に手槍があったら、彼女の後ろで斧を振り上げた盗賊の喉目掛けて投擲していただろう。歯軋りした瞬間に盗賊の身体が炎に包まれた。どうやら彼は黒魔法も得意らしい。
     修道士希望のメルセデスは動じることなく負傷した他の学生に回復魔法をかけている。戦場においては修道士が真の勇者、というのはよく聞く話だ。修道士たちは丸腰で傷病兵の救助にあたる。
    「あら〜、ローレンツ、久しぶりね〜?助けてくれてありがとう〜」
     久しぶり、ということは彼らは顔見知りなのだろうか。そんな呑気なことを考えながらシルヴァンは槍の柄で盗賊の喉を勢いよく突いた。ぐええ、といううめき声に合わせて周囲から感嘆の声が沸いたのでゴーティエの小紋章が背に浮かんだのだろう。
    「いや、これも貴族の責務だ」
     必死で盗賊たちに抗っているとディミトリたちが援軍を引き連れて戻ってきた。後に聞いて呆れたのだが、ディミトリはクロードを追いかけていたのにクロードはうろ覚えで走っていたのだという。これが後の世に伝えられる必然の出会い、だ。



     野営地を襲った盗賊たちは赤き谷にこもっているのだという。青獅子の学級は奉仕活動として彼らを捕縛するセイロス騎士団の補助をすることになった。ローレンツは彼らの担任教師となったベレトから課題協力を求められている。
     彼は教師として採用されてすぐ、名簿を手に学生たちに聞き取りをして回っていたので魔道学院にいたことを覚えているのだろう。その際もガルグ=マクではまだ資格をとっていない、と正直に話したのだが傭兵暮らしが長いせいか腑に落ちないらしい。
    「先生のクロードより僕、という選択は高く評価しているが……」
    「……分かった。では、言い方を変えよう。練習をする機会を提供、出来るかも、しれない」
     だが言質を取られないように途切れ途切れに話すベレトが念のために、とローレンツを選ぶのも分かるような気がした。まずファーガス騎士の国なだけあって黒魔法が得意な学生があまりいない。そして担任ではないので彼が黒魔法を使えるとは知らなかった───という言い訳が可能だ。平民たちはこういった図々しさで困難な場面に保険をかけて乗り切る。手を貸さないのもなんだか貴族らしくないような気がしてローレンツは首を縦に振った。
     そんなやりとりがあったものの今のところディミトリとドゥドゥー、それにフェリクスが鬼神のような強さを発揮しているのでローレンツには一向に練習する機会、とやらが訪れない。だが得難い経験は出来たように思う。
    「分かってたつもりだが、やっぱり目指す気にもなれないな……」
     ローレンツの隣に陣取るシルヴァンが橋の向こうを眺めてしみじみと呟いた。クロードは彼の礼儀正しさや実直なところを参考にすべきだが───槍を振るう兵種としてディミトリが参考になるかならないか、で言えば全くならない。
    「三人とも無理をしていないか心配ね〜」
     魔道学院で顔見知りになったメルセデスが橋の向こうを眺めながら服についた土埃を払った。ローレンツの槍もシルヴァンの槍も盗賊たちの血で赤く汚れている。貴族の責務を果たした筈なのにあまり良い気分ではなかった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💖💖💖💖👏👏👏👏👏👏
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works

    111strokes111

    DONE #クロロレ春のこども祭り2021重力から自由になったと思った矢先、クロードは全身に強い痛みを感じた。跳ね起きようとしてマヌエラ先生から身体を押さえられる。押さえられた拍子に視界がぐるぐると回りやがて上下が定まった。

    「落ち着きなさいクロード!貴方は飛竜から落ちたの。下敷きになったローレンツも骨折したわ。二人とも信仰魔法で治したけれど大怪我だったから落ち着くまで時間がかかるわ」

     落ち着く、とはなんだろうか。信仰魔法の主な副作用は吐き気と眩暈だ。先程マヌエラが起きあがろうとしたクロードを止めたのはせっかく治したのに目眩を自覚せず歩こうとして転倒されては無意味になってしまうからだろう。

    「ああ、それで視界がぐるぐると……それとローレンツが下敷きって??」
    「ローレンツも無事だから落ち着きなさい。目眩を起こしたまま歩くのは本当に危ないの。人によって体質の違いがあるけれど一日か二日は絶対安静よ」

    「せんせい、もうしわけないのだがおけをぼくのてもとにいただけないだろうか?」

     反対側の寝台から声変わり前の高くてかわいらしい子供の声がした。医務室の寝台には全て幕が掛かっていて互いが見えないようになっている。

    「ああ、 1753

    111strokes111

    MAIKING「説明できない」
    赤クロ青ロレの話です。
    13.誘拐・上

     フレンが行方不明になった。クロードとローレンツは誘拐犯がイエリッツァであること、彼が死神騎士でありエーデルガルトの手の者であることを既に知っている。ローレンツが知る過去ではディミトリたちがフレンを見つけクロードが知る過去ではベレスとカスパルがフレンを見つけている。

    「ではこの時点でベレト…失礼、言い慣れないもので。ベレス先生は現時点で既に教会に不信感を持ち敵対すると決めていた可能性もあるのか」

     ローレンツの知るベレトは教会と敵対せずディミトリに寄り添っていたらしい。記憶についての話を他の者に聞かれるわけにいかないので近頃のクロードはヒルダにからかわれる位ローレンツの部屋に入り浸っている。彼の部屋に行けばお茶と茶菓子が出るので夜ふかし前に行くと夜食がわりになってちょうど良かった。

    「そうでもなければあの状況で親の仇を守ろうとしないと思うんだよな」
    「だが今、僕たちの学校にいるのはベレト先生だ」

     ベレスは戴冠式に参加していたらしいのでそこで何かあった可能性もある。クロードはどうしてもかつての記憶に囚われてしまう。

    「大手を振って何かを調べる良い機会なのは確 2090

    111strokes111

    MAIKING「説明できない」
    赤クロ青ロレの話です。
    15.鷲獅子戦・上
     フレンが金鹿の学級に入った。クロードにとっては謎を探る機会が増えたことになる。彼女は教室の片隅に座ってにこにこと授業を聞いてはいるが盗賊と戦闘した際の身のこなしから察するに只者ではない。兄であるセテスから槍の手解きを受けたと話しているがそういう次元は超えていた。

    「鷲獅子戦にはフレンも出撃してもらう」

     やたら大きな紙を持ったベレトが箱を乗せた教壇でそう告げると教室は歓声に包まれた。これで別働隊にも回復役をつけられることになる。治療の手間を気にせず攻撃に回せるのは本当にありがたい。今まで金鹿の学級には回復役がマリアンヌしかいなかった。負担が減ったマリアンヌの様子をクロードが横目で伺うと後れ毛を必死で編み目に押し込んでいる。安心した拍子に髪の毛を思いっきり掻き上げて編み込みを崩してしまったらしい。彼女もまたクロードと同じく秘密を抱える者だ。二重の意味で仲間が増えたことになる。五年前のクロードは周りの学生に興味は持たず大きな謎だけに目を向けていたからマリアンヌのことも流していた。どこに世界の謎を解く手がかりがあるか分かりはしないのに勿体ない。
    2086