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    ラジオデアドラの第一話から第三話まではここです。
    https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=13857111

    ラジオデアドラ第四話「それでは皆様、今日もよい1日を」

     レオニーは番組の内容がどれだけ荒れようと最後に必ずこう言って番組を終える。マイクのスイッチをオフにしてレオニーは首を回しマリアンヌを睨みつけた。目の前には矢車菊の花が積まれている。

    「矢車菊の花言葉で誤魔化せるわけないだろうが!」
    「ええー!私たちの女の子らしさが出せてよかったと思うんだけど??」

     ディレクターのヒルダが選んだ今晩のテーマは"過大評価されていると思うレストランはどこか、何故過大評価されていると思ったのか"だった。当然度を超えた内容の葉書がリスナーから寄せられる。

    「大丈夫です。この時間帯の番組を好んで聴いているリスナーなら気にしません」

     放送中レオニーの向かいで黙って話を聞いている構成作家のマリアンヌが拙そうな話だ、と判断する度レオニーに矢車菊が一本渡される。その度にレオニーは台本に書いてあった通り"以上、矢車菊の花言葉でした"と言ってその話を打ち切っていく。番組が終わる頃にはレオニーの目の前に矢車菊の山が出現した。

    「でもウェイトレス同士でウェイター取り合ってる店は正直行ってみたい!!ものすごーく気になる!!」

     レオニーは食事中に背後で女の戦いが繰り広げられ味は良いはずなのに食べた気がしないようなレストランには行きたくないが矢車菊を紐でくくって紙で包んでいるヒルダは違う考えらしい。

    「だってほら!キャバレーみたいなもんでしょ?」

     キャバレーではショーガールのレビューを見ながら食事ができる。内装も華やかで音楽も生演奏だ。

    「あちらは勝敗が決まる類のものではないですが……」

     流石にマリアンヌがヒルダに反論した。彼女は本当に話し方が静かで清楚な見た目をしているのでレオニーは未だにマリアンヌが厳しい訓練で知られる士官学校出身だと信じられない。レオニーの知る軍関係者は受けた訓練が何であるのか実にわかりやすい見た目をしていた。

    「じゃあボートレース!」

     ボートレース場の貴賓席でも食事を取ることができる。

    「……そちらの方がまだ近いかもしれませんね」
    「どっちも違うだろ……なんでも良いから早くなんか食べに行こう!」

     三人は防音のため布張りになっているスタジオを後にした。局の前にあるダイナーで朝食を食べて市電や水上バスの始発を待ついためだ。いつも市電で帰れるレオニーが最初に席を立つ。マリアンヌの住むアパートが火事で半焼する前はマリアンヌとレオニーが先に帰っていた。水上バスが動くようになるまで一人で待つ羽目になるヒルダが少し辛そうなのは分かるがレオニーと共に市電の駅まで行くマリアンヌが寂しそうなのは正直言って納得がいかなかったが今は違う。リシテアがこっそり教えてくれたのだがマリアンヌがヒルダの家に転がり込むのをきっかけとして二人は交際を始めた。

    「ええっ?正反対なのに?」

     レオニーの知る女性同士のカップルは男女同士のカップルと違って見た目や雰囲気が似通っている。好みの同性がしているような格好は自分でも真似ができるからだ。

    「レオニーの言いたいことはわかりますよ。でもあの二人の場合は正反対なのが良いんでしょう」

     楚々としていかにも尽くす側に見えるマリアンヌの方が焼け出された後のことも含めて華やかなヒルダに面倒を見られている。

     デアドラの街は朝日に照らされ目覚めつつあった。水路を行き来する船は出勤する人を乗せて街を巡る。レオニーは矢車菊の花束を手に船着場から職場へ向かう人々の流れに逆らい駅に向かっていった。いったい誰が聞いているのだろうかという時間帯の番組ではあるがきちんと葉書は届くし街中でサインが欲しい、と話しかけられることもある。人生に何が起こるのか本当にわからない。

     翌日の昼過ぎに出社したヒルダはテフを飲みながらデスクの上に置いてあった報告書を読んでいた。先日のおかしな手紙が気になったヒルダはベレトにレオニーの警護を頼んでいる。時系列にまとめられた報告書の最後にデアドラ市警の地域担当部門に相談してレオニーの自宅近辺の警邏を増やしてもらうべきだと書いてあった。確かに彼はラジオ局の警備担当であってレオニー個人を守るために雇われた護衛ではない。彼の身体は一つしか存在しないし捜査権もない。

     マリアンヌは取材に出ているのでヒルダは一人で考えるしかなかった。連続放火犯が捕まるまで警戒すべきだと言うことはわかっている。問題はそれがいつか、ということだ。警察は第三者である素人の推理など参考にしない。ラジオ局への嫌がらせでは当事者であるので警察も親身になってくれたが先端技術に関わる人々を対象にした連続放火事件として見てはいないだろう。ラジオ局の一社員にどうこうできる問題ではないのは明白だ。

     だが。

     ヒルダは机の上にデアドラ市の地図を広げその傍らに電話帳を置いた。消防署を表す二本の斧が交差する地図記号は思ったより数が多く地図上でばらけているがマリアンヌをあんな目に合わされて大人しくしているわけにはいかない。
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    9660moyunata

    DONEテレビゲームをするだけの現パロ年後クロロレ
    光属性ですご安心ください。
    「ローレンツはゲームとかしないのか?」
    「そんなもの、時間の無駄だろう」
    やっぱりそう言うと思った。庶民の娯楽に現を抜かしてる暇なんてありませんって顔に書いてある。
    「じゃあさ、1回だけ対戦付き合ってくれないか? このゲーム1人でもできるんだけどさ、せっかく買ったんだしちょっとくらい人と遊んでみたいんだよ」
    「仕方がないな、1度だけだぞ」
    ローレンツはせっかくだから、とかそういう言葉に弱い。あいつは俺のことに詳しいなんて言っているが、俺だって負けてない。ローレンツが俺のこと見続けているなら同じだけ俺もローレンツを見ているんだ。
    今始めようとしているゲームはいわゆる格闘ゲームだ。さすがに初心者のローレンツをこてんぱんにするのは気が引けるから、あえて普段使わないキャラクターを選ぶ。それでも俺の方が強いことに変わりはない。手加減しつついい感じの差で勝たせてもらった。
    「......。」
    勝利ポーズを決めている俺のキャラクターをローレンツが無表情で見つめている。よし、かかったな。
    「クロード、もう一戦だ」
    「おっと、1回しか付き合ってくれないんじゃなかったのか?」
    「せっかく買ったのに 1372

    111strokes111

    MAIKING「説明できない」
    紅花ルートで戦死した記憶があるクロードと青獅子ルートで戦死した記憶があるローレンツの話です。12月にクロロレオンリーイベントがあればそこで、実施されなければ11月のこくほこで本にするつもりで今からだらだら書いていきます。
    1.振り出し・上
     クロードが最後に見たのは天帝の剣を構える元傭兵の女教師だった。五年間行方不明だった彼女が見つかって膠着していた戦況が動き始めそれがクロードにとって望ましいものではなかったのは言うまでもない。

     生かしておく限り揉めごとの種になる、と判断されたのは故郷でもフォドラでも同じだった。人生はなんと馬鹿馬鹿しいのだろうか。だが自分の人生の幕が降りる時、目の前にいるのが気に食わない異母兄弟ではなくベレス、エーデルガルト、ヒューベルトであることに気づいたクロードは笑った。
    >>
     もう重たくて二度と上がらない筈の瞼が上がり緑の瞳が現れる。その瞬間は何も捉えていなかったが部屋の窓から差す光に照準が合った瞬間クロードの動悸は激しく乱れた。戦場で意識を取り戻した時には呼吸が出来るかどうか、視野は失われていないか、音は聞こえるのかそれと体が動くかどうか、を周りの者に悟られぬように確かめねばならない。クロードは目に映ったものを今すぐにでも確認したかったが行動を観察されている可能性があるので再び目を瞑った。

     山鳥の囀りが聞こえ火薬や血の匂いを感じない。手足双方の指も動く。どうやら靴は履 2041

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    MAIKING「説明できない」
    青ロレ赤クロの話です。
    6.初戦・下

     クロードから自分たちを襲った盗賊の討伐が今節の課題だと告げられた皆は初陣だと言って沸き立っていた。金鹿の学級は騎士を目指す平民が目立つ学級で入学以前に領主の嫡子として盗賊討伐を体験している者はクロードとローレンツしかいないらしい。クロードはローレンツの印象よりはるかに慎重で毎日先行したセイロス騎士団がどの方面へ展開していったのか細かく記録をつけ皆に知らせていた。セイロス騎士団に追い込んでもらえるとはいえどこで戦うのかが気になっていたらしい。

     出撃当日、支度を整え大広間で待つ皆のところへベレトがやってきた時にはローレンツたちはどこで戦うのか既に分かっていた。

    「騎士団が敵を追い詰めたそうだね。場所はザナド……赤き谷と呼ばれている」

     そう言えばクロードはザナドが候補に上がって以来やたら彼の地についた異名の由来を気にしていた。赤土の土地なのか赤い花でも咲き乱れているのか。土地の異名や古名にはかつてそこで何があったのかが表されていることが多い。土地の環境によっては毒消しが必要になる場合もある。だが先行した騎士団によると特殊な条件は何もない、とのことだった。初陣の者た 2081

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    MAIKING「説明できない」
    赤クロと青ロレの話です。
    9.典儀・上

     情報には出元と行き先がある。それを見極めずに判断を下すと間違いが起きる。前節、カトリーヌがロナート卿の所持品から見つけた大司教レアの暗殺計画に関する密書は様々な波紋を読んだ。真偽の程は定かではないが対応せねばならない。

     謁見の間に呼び出されたベレトから今節の課題を聞いたクロードは教会があの密書をどう判断したのか悟った。今回も彼の記憶と同じく何者かが教会を混乱させる為に作成した偽物であると判断したのだ。そうでなければ士官学校の学生に警備や見回りを担当させないだろう。だがクロードにとっては丁度良かった。賊の狙いが何処であるのか確かめる為という大義名分を得て修道院の敷地内を直接、自由に見て回れる。賊が聖廟の中で何かを探し、奪いに来たがそこでベレスが天帝の剣を手に取り賊を撃退したことをクロードは覚えているのだがだからといって日頃入れない聖廟を直接探る機会を逃したくはなかった。それにロナート卿の叛乱の時と同じくまたクロードたちが当事者になっている。詳しく調査しておいて損はないだろう。

     ガルグ=マクにはフォドラの外からやってきた住人がクロード以外にも存在する。自然と祖先を 2082