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    111strokes111

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    その柘榴に食らいつく野蛮人が我々だ。分かち合って呑んだ血は煮えたぎっていて甘く我々の喉を灼いた。

    クロロレワンドロワンライ第45回「成長」 帝国軍が対岸に集まりつつあった。父に命じられミルディン大橋に防衛線を構築していたローレンツだったが今は馬上にいる。領主として領民に信用されるには最も厄介な仕事を引き受けることだ、引き受けられるような力を備えねばならぬ、と言われてローレンツは育った。名代として前哨基地に赴くよう父に命じられたローレンツは正直言って落胆している。クロードたちのことは気になるが危険な局面はまだ任せられないと言われたも同然だし領主である父には安全な場所にいて欲しい。
     しばらくアミッド大河の河岸にいたのでこちらの前哨基地に顔を出すのは初めてだったしクロードを含め同窓生たちと会うのも久しぶりだった。士官学校の休校後、イグナーツに関してはローレンツがなんとか出来たしシェズもおそらくクロードが何とかしていただろうがラファエル、レオニーの暮らしぶりが気になっている。
    「ローレンツ、どんな按配なのか報告してくれ」
     久しぶりに会ったクロードはローレンツの目には少し痩せたように映った。リーガン家の後継者としてお披露目された時から数えても五年経っていない。付け焼き刃でも構わないから同盟領内を隈なく視察する、というのが理想だったが開戦によりそれも不可能になっている。戦争は見識を深める時間と成長する機会を奪ってしまった。ローレンツの父エルヴィンは帝国軍のレスター方面部隊が全軍渡河し終えた後で橋を完全に破壊し同盟領内で孤立させるというクロードの提案を拒否している。橋の復旧に気が遠くなるような費用が掛かるからだ。
    「大橋近辺で水深が浅く渡河が可能なところは全て監視している。橋頭堡は絶対に築かせない」
     ローレンツがそう告げるとクロードは頷いた。クロードは手元にある地図で判断するしかないしアケロンからリーガン家に提供された地図が正確かどうかは謎だ。グロスタール家やコーデリア家など周辺の領主たちに頼るしかない。
    「大橋以外から帝国の兵は来ない、と言う前提を崩したくないんで助かるよ」
    「あんな酷い作戦を立案した君からまともな意見が出るとは……成長したのだな……悪ふざけをしなくなった」
     ローレンツに感心されて不本意だったのかクロードは口を尖らせた。そんな表情をすると内面の成長が外見の幼さに覆い隠されてしまう。
    「俺だっていざとなれば地に足のついたようなことを考えられるんだよ」
     この時点のクロードの言動がほぼ演技であり自分にだけ真の作戦について明かされなかったと知ったローレンツは後に激怒するのだがこの時は素直にクロードを支えてやろうと考えていた。

    「ローレンツ久しぶり!」
     本部から出るとシェズが話しかけてきた。ヒルダと共に市場の店番を手伝って欲しいのだと言う。
    「人手が少ないのにやることが多すぎて私だけじゃ無理なのよ!」
     あっけらかんとそう語るシェズに道すがら休校になってからどう過ごしていたのかローレンツが問うてみるとなんと彼女はクロードに放置されていたらしい。自分も在学中はレオニーがグロスタール領出身であることに気づかなかった上なんの仕事も回してやれなかった。しかし少しでも手勢が必要なクロードがよりによって彼好みの謎をその身に秘めているシェズを放置していたのは意外だった。先程はクロードの成長を感じたがやはり大きな欠落は未だ彼の中に存在している。ローレンツの父エルヴィンはそこを強く警戒していた。果たして成長だけでその欠落を補えるのだろうか。
     シェズに言われた通り店番をしているとクロードがやってきた。樽の上で帳簿を付けていると軒先からヒルダとクロードが語らう声が聞こえてくる。クロードは調香を嗜むヒルダが見繕った香油を買っていた。いよいよ彼も前線に赴くつもりなのだ。ローレンツも血や汗の匂いで鼻がおかしくなる前に買い足しておくべきかもしれない。
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    9660moyunata

    DONEテレビゲームをするだけの現パロ年後クロロレ
    光属性ですご安心ください。
    「ローレンツはゲームとかしないのか?」
    「そんなもの、時間の無駄だろう」
    やっぱりそう言うと思った。庶民の娯楽に現を抜かしてる暇なんてありませんって顔に書いてある。
    「じゃあさ、1回だけ対戦付き合ってくれないか? このゲーム1人でもできるんだけどさ、せっかく買ったんだしちょっとくらい人と遊んでみたいんだよ」
    「仕方がないな、1度だけだぞ」
    ローレンツはせっかくだから、とかそういう言葉に弱い。あいつは俺のことに詳しいなんて言っているが、俺だって負けてない。ローレンツが俺のこと見続けているなら同じだけ俺もローレンツを見ているんだ。
    今始めようとしているゲームはいわゆる格闘ゲームだ。さすがに初心者のローレンツをこてんぱんにするのは気が引けるから、あえて普段使わないキャラクターを選ぶ。それでも俺の方が強いことに変わりはない。手加減しつついい感じの差で勝たせてもらった。
    「......。」
    勝利ポーズを決めている俺のキャラクターをローレンツが無表情で見つめている。よし、かかったな。
    「クロード、もう一戦だ」
    「おっと、1回しか付き合ってくれないんじゃなかったのか?」
    「せっかく買ったのに 1372

    111strokes111

    MAIKING「説明できない」
    赤クロと青ロレの話です。
    3.遭遇・上
     三学級合同の野営訓練が始まった。全ての学生は必ず野営に使う天幕や毛布など資材を運ぶ班、食糧や武器等を運ぶ班、歩兵の班のどれかに入りまずは一人も脱落することなく全員が目的地まで指定された時間帯に到達することを目指す。担当する荷の種類によって進軍速度が変わっていくので編成次第では取り残される班が出てくる。

    「隊列が前後に伸びすぎないように注意しないといけないのか……」
    「レオニーさん、僕たちのこと置いていかないでくださいね」

     ラファエルと共に天幕を運ぶイグナーツ、ローレンツと共に武器を運ぶレオニーはクロードの見立てが甘かったせいでミルディンで戦死している。まだ髪を伸ばしていないレオニー、まだ髪が少し長めなイグナーツの幼気な姿を見てクロードの心は勝手に傷んだ。

    「もう一度皆に言っておくが一番乗りを競う訓練じゃあないからな」

     出発前クロードは念を押したが記憶通りそれぞれの班は持ち運ばねばならない荷の大きさが理由で進軍速度の違いが生じてしまった。身軽な歩兵がかなり先の地点まで到達し大荷物を抱える資材班との距離は開きつつある。

    「ヒルダさん、早すぎる!」
    「えー、でも 2073

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    MAIKING「説明できない」
    赤クロと青ロレの話です。
    5.初戦・上
     三学級対抗の模擬戦はクロード達の勝利に終わった。これもクロードの記憶とは異なっている。容赦のなかったベレスの記憶があるクロードは事前に何か工作するかベレトに探りを入れてみたが拒否された。こんな下らないことに全力を尽くすなという意味なのか気高い倫理観の持ち主なのかはまだクロードには分からない。腹下しの薬は冗談だったが賛同してもらえたら武器庫に忍び込んで他学級の使う武器の持ち手にひびを入れてしまうつもりだった。

     母国やデアドラと比べるとガルグ=マクは肌寒い。気に食わない異母兄が王宮で働く女官を寝室に引っ張り込むような寒さだ。それでも来たばかりの頃と比べればかなり暖かくなっている。過酷な太陽の光に慣れたクロードの目にも山の緑は目に眩しく映った。長時間、薄暗い書庫で本を物色していたからだろうか。廊下に差す光に緑の目を細めながら歩いていると大司教レアの補佐を務めるセテスに声をかけられた。クロードは規則違反に目を光らせている彼のことがあまり得意ではない。

    「ちょうど良かった。クロード、後でベレトと共にこちらに顔を出しなさい」
    「分かりました。セテスさんは先生が今どの辺りにいる 2100

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    MAIKING「説明できない」
    赤クロと青ロレの話です。
    7.背叛・上
     皆の初陣が終わるとクロードの記憶通りに事態が進みロナート卿の叛乱の知らせがガルグ=マクにもたらされた。養子であるアッシュへセイロス教会からは何も沙汰が下されていない。軟禁もされずアッシュの方が身の潔白を証明するため修道院の敷地内に閉じこもっている。鎮圧に英雄の遺産である雷霆まで持ち出す割に対応が一貫していない。前節と同じく金鹿の学級がセイロス騎士団の補佐を任された。クロードの記憶通りならばエーデルガルト達が鎮圧にあたっていた筈だが展開が違う。彼女はあの時、帝国に対して蜂起したロナート卿を内心では応援していたのだろうか。

     アッシュは誰とも話したくない気分の時にドゥドゥが育てた花をよく眺めている。何故クロードがそのことを知っているかと言うと温室の一角は学生に解放されていて薬草を育てているからだ。薬草は毒草でもある。他の区画に影響が出ないようクロードなりに気を使っていたがそれでもベレトはクロードが使用している一角をじっと見ていた。

    「マヌエラ先生に何か言われたのか?致死性のものは育ててないぜ」
    「その小さな白い花には毒があるのか?」

     ベレトが指さした白い花はクロード 2097