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    111strokes111

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    南に輝く星に背を向けた野蛮人であろうと理想を掲げる責務から逃げられはしない。撒かれた種は全力で芽を出そうとする。

    クロロレワンドロワンライ第50回「甘える」 傍にいてくれなきゃ困るんだ、とクロードは親が帝国に降ったローレンツの耳元で囁いた。まだ領主にもなっていないローレンツに何故そんなことを伝えてきたのか。それに比べれば瑣末なことだがして欲しいからあんな風に匂わせてきたと思っていたのに彼がしたい側であったことも含めて心底驚いた。何にせよ公的にも私的にも問い詰めなければならないことが多すぎる。とにかくローレンツは声を封じられたままクロードと一線を越えてしまった。自分の天幕の中で目を覚まし昨晩の出来事を思い出す。
     ローレンツが酔いと生まれて初めての体験に圧倒され立ち上がれずにいるとクロードが身体を拭き清め回復魔法をかけた。それが大して効果を発揮しなかったので彼はローレンツが身支度を整えるのに手を貸し星空の下では肩を貸してくれた。クロードの天幕を出た頃にはサイレスの効果は切れていたがだからと言って会話を交わしてしまったらサイレスを使った意味がない。
     ローレンツは自分にあんな風に他人に甘える面があったこともクロードに他人を甘やかすような面があったことも知らなかった。人間は追い詰められると自分では思っても見なかったことに手を染める。自然とため息が漏れた。とにかく身支度をして北上を続ける帝国軍からデアドラを守らねばならない。気力を振り絞って立ち上がると足腰に鈍い痛みが走った。
     ローレンツの心境と連動でもしているのか空はどんよりと曇っている。朝食をとりに食堂へ行くとグロスタール家の騎士になったせいで苦境に立たされたイグナーツとシェズが話し込んでいた。
    「おはよう、二人とも」
    「おはよう、ローレンツ!酷い顔してるわよ」
     シェズの物言いにイグナーツが目を白黒させている。
    「心配をかけて済まないね……」
    「イグナーツにもさっき言ったんだけど簡単に割り切れるもんじゃないわ。気楽な立場の私とレオニーが頑張るから早く立ち直ってちょうだい」
     誰にも知られないように工夫したからシェズが言っているのはローレンツの父のことだ。だがどうしても別のことを言われたように感じてしまう。
    「きっと義勇兵が合流したがるはずです。ローレンツくんの顔を見ればきっと安心します」
    「そうよ、まだまだグロスタール領の中を北上しなきゃならないんだから」
     シェズの方向感覚が大雑把すぎてローレンツと同じく沈んだ顔をしていたイグナーツが呆気にとられている。
    「行軍の際に道を一本でも間違えたらとんでもないことになりますよ……」
     リーガン領に行くには北西を目指さねばならない。じゃあ先頭を追い越さないように気をつけなきゃね、と言ってシェズが笑うのでローレンツもイグナーツもつられて笑ってしまった。
     ミルディン大橋の防衛に失敗し、ただでさえ落ち込んでいる兵たちに影響が出ないようローレンツもクロードも心がけねばならない。
     出発前に軍議が開かれ道中にある砦に逐一立ち寄り物資を受け取りながらかねてからの決定通りデアドラを目指してリーガン領へ向かうことになった。それぞれの砦の司令官や付近の領主や村長たちに今後の方針について直接説明する必要もある。
    「グロスタール領にいるうちは僕が露払いを務めたい。物資の受け取りも円滑に運ぶだろう。それに領民たちの不安を払拭してやりたいのだ」
    「ミルディン大橋失陥は俺の責任だ。その影響を最も受けるグロスタール領の者たちに俺も直接説明をしたい」
     クロードはローレンツと同じく昨晩のことはおくびにも出さずひどく真面目な顔をしてそう言った。
    「糾弾されるぞ」
     覚悟の上だ、と返したクロードを庇ってやりたいが匙加減が難しい。あまりに庇うと媚びているように思われるし憤りを激化させてしまうとクロードの命令に従わなくなってしまう。ローレンツは脳内で必死に領内の名士録をめくって対策を立て始めた。
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    9660moyunata

    DONEテレビゲームをするだけの現パロ年後クロロレ
    光属性ですご安心ください。
    「ローレンツはゲームとかしないのか?」
    「そんなもの、時間の無駄だろう」
    やっぱりそう言うと思った。庶民の娯楽に現を抜かしてる暇なんてありませんって顔に書いてある。
    「じゃあさ、1回だけ対戦付き合ってくれないか? このゲーム1人でもできるんだけどさ、せっかく買ったんだしちょっとくらい人と遊んでみたいんだよ」
    「仕方がないな、1度だけだぞ」
    ローレンツはせっかくだから、とかそういう言葉に弱い。あいつは俺のことに詳しいなんて言っているが、俺だって負けてない。ローレンツが俺のこと見続けているなら同じだけ俺もローレンツを見ているんだ。
    今始めようとしているゲームはいわゆる格闘ゲームだ。さすがに初心者のローレンツをこてんぱんにするのは気が引けるから、あえて普段使わないキャラクターを選ぶ。それでも俺の方が強いことに変わりはない。手加減しつついい感じの差で勝たせてもらった。
    「......。」
    勝利ポーズを決めている俺のキャラクターをローレンツが無表情で見つめている。よし、かかったな。
    「クロード、もう一戦だ」
    「おっと、1回しか付き合ってくれないんじゃなかったのか?」
    「せっかく買ったのに 1372

    111strokes111

    DONE #クロロレ春のこども祭り2021重力から自由になったと思った矢先、クロードは全身に強い痛みを感じた。跳ね起きようとしてマヌエラ先生から身体を押さえられる。押さえられた拍子に視界がぐるぐると回りやがて上下が定まった。

    「落ち着きなさいクロード!貴方は飛竜から落ちたの。下敷きになったローレンツも骨折したわ。二人とも信仰魔法で治したけれど大怪我だったから落ち着くまで時間がかかるわ」

     落ち着く、とはなんだろうか。信仰魔法の主な副作用は吐き気と眩暈だ。先程マヌエラが起きあがろうとしたクロードを止めたのはせっかく治したのに目眩を自覚せず歩こうとして転倒されては無意味になってしまうからだろう。

    「ああ、それで視界がぐるぐると……それとローレンツが下敷きって??」
    「ローレンツも無事だから落ち着きなさい。目眩を起こしたまま歩くのは本当に危ないの。人によって体質の違いがあるけれど一日か二日は絶対安静よ」

    「せんせい、もうしわけないのだがおけをぼくのてもとにいただけないだろうか?」

     反対側の寝台から声変わり前の高くてかわいらしい子供の声がした。医務室の寝台には全て幕が掛かっていて互いが見えないようになっている。

    「ああ、 1753