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    111strokes111

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    無双青ルート準拠のクロヒル+ロレマリ小説です。
    全10話予定。

    真昼の月と花冠.3 一年間クロードたちに与えられるはずだった猶予は数節で終わってしまった。エーデルガルトが何を考えていたのかクロードには全くわからない。クロードが打った手のせいで本宅のあるエドギアどころか、自領にすら戻れなくなったローレンツは不本意ながらクロードと行動を共にしている。
     クロードは最初、帝国軍の通行を妨害するためミルディン大橋を完全に破壊するつもりだった。橋の再建はどうしても北上したい帝国にやらせれば良い。シャハドは雪辱の機会を狙っているだろう。二正面作戦を避けるためにも南側にアミッド大河という蓋が欲しい。
     円卓会議でそう発言すると四人の諸侯たちは全員強く反対した。そんなことをされるくらいなら、と言うわけでグロスタール伯もコーデリア伯も偽りの臣従作戦に参加している。何も知らないのはローレンツだけだ。
     だが教えてやりたくとも息子には何一つ知らせないまま事態を進めること、それが破られるならこの企みに乗ることは不可能だ、とグロスタール伯エルヴィンから言われている。彼が親帝国派として積んできた実績なしにこの作戦は成功しない。
     ゴネリル公は国境から動けずグロスタール伯とコーデリア伯は帝国に恭順している。円卓会議を開きたくとも自由に動けるのはエドマンド辺境伯とクロードだけだ。多忙なエドマンド辺境伯があまりデアドラに顔を出さないため、軍議や書類仕事に追われていてもある面では気楽に過ごしている。
    「そろそろご婦人方は戻った方がいい」
     窓の外を見たローレンツが皆の注目を集めるため手を叩いて言った。彼は身体も声も態度も手を叩く音も大きい。
    「ローレンツ、一応ここは俺の屋敷なんだが」
     だがローレンツが言う通り独身の男女が遅くまで一つ屋根の下にいるわけにいかない。教員たちに管理されていたガルグ=マクとは違うのだ。
    「あぁ、もう日が暮れて……なんだか空がシェズさんやローレンツさんの瞳のよう……」
     榛色の瞳が窓の外を見つめている。薄暮の空は紫に染まっていた。つられたレオニーやイグナーツが夕暮れを眺めている中、ローレンツはマリアンヌをじっと見つめている。
     マリアンヌがローレンツを避けなくなったのはガルグ=マクにいた頃と違って彼が自重しているからだろう。学生の頃なら僕の名を最初に挙げてほしい、と嘆いたはずだ。
    「私、デアドラでお買い物するのも好きだけど、ここの夕暮れも大好きなの」
     ヒルダが指差す先には街の灯が広がっている。少し離れたところにあるのは灯台だろう。
    「どこで見たって綺麗なもんだと思うが……」
    「ローレンツくん、フェルディアもこんな感じ?」
    「ああ、確かにフェルディアも街の灯と暮れる夕陽が引き立てあう」
     王都育ちのクロードはガルグ=マクのように自然物が人の営為を圧倒する方が例外だと思っていた。
    「なるほど、確かに街の灯が宝石をばら撒いたみたいだもんな」
     だが皆の反応を見るに大都会こそが例外なのだ。この宝物を帝国に奪われるわけにはいかない。



     ミルディン大橋を占拠した帝国軍はそのまま同盟領を北上していた。デアドラまで自由に移動できるようになったら海からダフネルやフラルダリウス領を攻め、挟み撃ちにする予定だったのだろう。沿岸部を抑えられた、となれば更に帝国になびく諸侯が増える。
     戦わずに組み込むことのできる地域が増えればそれに越したことはない。だがレスター諸侯同盟にはレスター諸侯同盟なりの思惑がある。
    「あの時の父上はエドギアに居ながらにして魔道学院にいた僕よりフェルディアの情勢を把握していた」
     デアドラ防衛の成功して初めて今回の仕掛けについて明かされたローレンツはクロードを殴り倒しそうなほど怒っていた。だが今は冷静さを取り戻している。グロスタール伯は物資が帝国本土からミルディン大橋を経由して運ばれていく様子を監視していたのだ。そうすればレスターに攻め込んだ部隊がどこまでなら進軍可能なのか計算できる。エルヴィンはそれに加えて大橋を再び占拠するための部隊が派遣されなくなる、その時を我慢強く待っていた。罠に蓋をし終えたクロードたちは彼らを南へと追い立てていく。
    「思えばフェルディナントも気の毒だよな」
    「お父上が蟄居中だ。汚名を雪ごうと思ったのだろう」
     ローレンツが薪にファイアーで火をつけた。前哨基地の夜は風を遮るものがないので冷え込むのだ。皆と共にマリアンヌが火にあたりながら、クロードとローレンツの会話を聞いて神妙な顔で頷いている。二人が言う通りフェルディナントは物資が乏しくなっていく中、敵の設定した経路を辿って撤退せねばならない。絶望的な行軍となれば脱走兵も出るだろう。
    「あの……あまり彼らを追い詰めると野盗になりかねないので……」
     地縁がない土地で生きていくためにそこまで身を落とす者が出ても不思議ではない。
    「マリアンヌさんは実に冷静だ!」
     ローレンツは素早くマリアンヌの方を向いて彼女を讃えた。勢いが強く大袈裟な態度を見てヒルダは笑いを噛み殺している。
    「全滅させることが目的ではないのだから見誤るなよ、クロード」
     マリアンヌを褒め終わるとローレンツは正反対の表情と声音でクロードに釘をさした。グロスタール家の者たちは百年間隣人とうまくやってきたのに何故こんなことになってしまったのだろうか。クロードですらそう感じた。
    「早々にお帰りいただくだけさ。ローレンツも明日には自領だな」
     現在クロードたちは帝国軍を追い立て南下している最中で、明日にはグロスタール領の北西部に入る。
    「ああ、エドギアの館に皆を招けないのが残念だ」
    「ローレンツくん優しいね〜!クロードくんのこともお家に入れてあげるの?」
     しばらくの間、本当に険悪だったクロードたちをなんとか和解させるため戯けてくれたヒルダこそが真に優しいのだ。
    「当然だとも。入れてやらねばクロードが父上に頭を下げるところが見られないからね」
    「反省文も付けておくよ」
     だからクロードもローレンツもヒルダの意を汲んで戯けるのだ。
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    9660moyunata

    DONEテレビゲームをするだけの現パロ年後クロロレ
    光属性ですご安心ください。
    「ローレンツはゲームとかしないのか?」
    「そんなもの、時間の無駄だろう」
    やっぱりそう言うと思った。庶民の娯楽に現を抜かしてる暇なんてありませんって顔に書いてある。
    「じゃあさ、1回だけ対戦付き合ってくれないか? このゲーム1人でもできるんだけどさ、せっかく買ったんだしちょっとくらい人と遊んでみたいんだよ」
    「仕方がないな、1度だけだぞ」
    ローレンツはせっかくだから、とかそういう言葉に弱い。あいつは俺のことに詳しいなんて言っているが、俺だって負けてない。ローレンツが俺のこと見続けているなら同じだけ俺もローレンツを見ているんだ。
    今始めようとしているゲームはいわゆる格闘ゲームだ。さすがに初心者のローレンツをこてんぱんにするのは気が引けるから、あえて普段使わないキャラクターを選ぶ。それでも俺の方が強いことに変わりはない。手加減しつついい感じの差で勝たせてもらった。
    「......。」
    勝利ポーズを決めている俺のキャラクターをローレンツが無表情で見つめている。よし、かかったな。
    「クロード、もう一戦だ」
    「おっと、1回しか付き合ってくれないんじゃなかったのか?」
    「せっかく買ったのに 1372

    111strokes111

    MAIKING「説明できない」
    赤クロと青ロレの話です。
    7.背叛・上
     皆の初陣が終わるとクロードの記憶通りに事態が進みロナート卿の叛乱の知らせがガルグ=マクにもたらされた。養子であるアッシュへセイロス教会からは何も沙汰が下されていない。軟禁もされずアッシュの方が身の潔白を証明するため修道院の敷地内に閉じこもっている。鎮圧に英雄の遺産である雷霆まで持ち出す割に対応が一貫していない。前節と同じく金鹿の学級がセイロス騎士団の補佐を任された。クロードの記憶通りならばエーデルガルト達が鎮圧にあたっていた筈だが展開が違う。彼女はあの時、帝国に対して蜂起したロナート卿を内心では応援していたのだろうか。

     アッシュは誰とも話したくない気分の時にドゥドゥが育てた花をよく眺めている。何故クロードがそのことを知っているかと言うと温室の一角は学生に解放されていて薬草を育てているからだ。薬草は毒草でもある。他の区画に影響が出ないようクロードなりに気を使っていたがそれでもベレトはクロードが使用している一角をじっと見ていた。

    「マヌエラ先生に何か言われたのか?致死性のものは育ててないぜ」
    「その小さな白い花には毒があるのか?」

     ベレトが指さした白い花はクロード 2097

    111strokes111

    MAIKING「説明できない」
    赤クロ青ロレの話です。
    11.末路・上
     クロードは先日、あんなことをしでかしておきながら怯えさせてすまない、とローレンツから逆に謝られてしまった。あれから何度か時間をとって話し合いをしてみたが互いの知る未来にかなり大きな食い違いがあることが分かりその後はおかしな雰囲気にはなっていない。

     細かな違いはあれどクロードの祖父が体調を崩し盟主代理として円卓会議に出席すること、それとマイクランが破裂の槍を盗み出すことは共通していた。

    「俺はマイクランが討ち取られたという話しか知らない」

     クロードの知る過去でもローレンツの知る過去でも級長が不在の可能性があるなら、と言うことで金鹿の学級はコナン塔へ行かなかった。

    「そちらでも箝口令が敷かれていたのか」

     教会は何かを隠している、というのが元からのクロードの主張なので教会の態度に矛盾はない。ベレトから馬の面倒を見るように命じられた二人はそれぞれ別の馬に新しい水や飼い葉を与え体を拭き尻尾の毛に櫛をかけ絡まっている塵を取り除いてやっている。いななきや馬が立てる物音が話し声を隠してくれた。今後の展開が色々と気になるところだが今回も祖父ゴドフロアの具合が悪くなるなら 2156

    111strokes111

    MAIKING「説明できない」
    赤クロ青ロレの話です。
    13.誘拐・上

     フレンが行方不明になった。クロードとローレンツは誘拐犯がイエリッツァであること、彼が死神騎士でありエーデルガルトの手の者であることを既に知っている。ローレンツが知る過去ではディミトリたちがフレンを見つけクロードが知る過去ではベレスとカスパルがフレンを見つけている。

    「ではこの時点でベレト…失礼、言い慣れないもので。ベレス先生は現時点で既に教会に不信感を持ち敵対すると決めていた可能性もあるのか」

     ローレンツの知るベレトは教会と敵対せずディミトリに寄り添っていたらしい。記憶についての話を他の者に聞かれるわけにいかないので近頃のクロードはヒルダにからかわれる位ローレンツの部屋に入り浸っている。彼の部屋に行けばお茶と茶菓子が出るので夜ふかし前に行くと夜食がわりになってちょうど良かった。

    「そうでもなければあの状況で親の仇を守ろうとしないと思うんだよな」
    「だが今、僕たちの学校にいるのはベレト先生だ」

     ベレスは戴冠式に参加していたらしいのでそこで何かあった可能性もある。クロードはどうしてもかつての記憶に囚われてしまう。

    「大手を振って何かを調べる良い機会なのは確 2090