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    無双青ルート準拠のクロヒル+ロレマリ小説です。
    全10話予定。

    真昼の月と花冠.6───ヒルダさん、直接お会いする方が先かもしれませんが、私の身に何かあった時のためにやはり手紙を書いておくことにします。帝国はフォドラ三国の中で最も歴史が長く領土も広い国でした。しかし今後、三国の有り様は変化を迎えることでしょう。レスター出身の私どもにとって望ましくとも帝国の人々にとって耐えがたいのは明白です。
     王国軍にはアンヴァルで何があったのか把握している方は存在しません。私のみたところ、エーデルガルトさんは聡明な方でした。だからこそ帝国の方々は皆諦めきれないのでしょう。
     こちらの主だった将に戦死者がいないことが不思議なほど抵抗は激しくなってきました。私が基地にある礼拝堂で祈りを捧げられるのは、今こうしてヒルダさんに宛てた手紙が書くことができるのはローレンツさんのおかげなのです。
     敵に囲まれ命を落としそうになった私をかばった彼は重傷を負いました。そして頭を強く打ち、意識を失ってしまったのです。たまたま近くにラファエルさんがいらしたのでローレンツさんを安全な場所に連れて行くことができました。
     メルセデスさんやリンハルトさんの助けをお借りしたおかげで、ローレンツさんはもう元気にしています。全て私の失態で、消えてしまいたいとすら思ったのですが彼は意識を回復してすぐ、落ち込む私を気遣って下さったのです。
     生きたいと願うことに資格はいらない、とローレンツさんから言われた晩、私はずっと自分の天幕で泣いていました。それは今回のことだけでなく、ヒルダさんにお教えしていなかったこれまでのことが関係しています。
     人間は安心しても泣いてしまうものなのですね。流石に手紙に書き記すわけにいかないので、ゆっくりお話しできそうな時にこれまでのことを聞いていただきたいです。激戦に次ぐ激戦で命を落とす方も増えてきました。私がその一員に加わるかどうかは女神様がお決めになります。その時、ローレンツさんの言葉でどれほど救われたか書き記しておかねば後悔する。そんな気がしたのでこうして筆を取ることにしました───



     王国に派遣した部隊はへヴリング領辺りにいる頃だろうか。クロードたちはベルグリーズ領にいる帝国軍に気取られずに軍を二分し、アリルに向けて進軍せねばならない。うまく説明できないが、そろそろその辺りの事情が読まれているような気がした。
    「これは拙いかもしれない」
     領主にとって何よりも大切な自領を守るための戦いにも関わらず、彼らはあまりにあっさりと撤退しようとしている。ベルグリーズ伯の部隊を本気で追撃するかどうか決めなくてはならない。
    「どう拙いのか教えて!」
     フライクーゲルを手にしたヒルダがきびきびとした口調で問うてくる。兵たちはこれまでになくベルグリーズ領の奥深くに侵入できたので大いに沸いていた。突撃できてしまったことを不審に思う者は殆どいないだろう。
     心の内が外に漏れていたこと、喧騒の中でヒルダに聞き取られてしまったことにクロードは驚いた。フォドラに来て以来クロードは独り言を言わないように心がけている。パルミラ語とフォドラ語、どちらの言葉で言ってしまうか分からない。いつの間にか夢はフォドラ語で見るようになった。悪夢の舞台も王宮からフォドラに移っている。
    「ベルグリーズ伯に俺たちが本気でないことがばれちまったかもしれない」
    「マリアンヌちゃんたちの方に行っちゃうかもしれないってこと?」
     そう言うとヒルダは口を閉ざした。よどみなく話すべきなのに何故かクロードの舌がいつものように動いてくれない。
    「いや、まだ確証がある訳じゃないんだ。帝都で見過ごせない何かがあったのかもしれないし……」
     クロードが見る悪夢の中でヒルダは二度と話しかけてくれなくなる。自分のしくじりのせいで彼女は命を失ってしまうからだ。
    「マリアンヌちゃんたちならきっとベルグリーズ伯に負けないよ!」
     フライクーゲルを握りしめていた右手がクロードの背中を勢いよく叩く。勝てるよ、と言わないその冷静さが素晴らしい。
    「ギュスタヴさんだって褒めてたし、それに心配なら合流地点に一番乗りすれば良いんだよ!」
     クロードは素直にヒルダを美しい、と思った。外見の問題ではない。友人たちを信頼しているその姿勢が、咄嗟に最適解を出せる賢さが、この上なく美しいと思った。



    ───マリアンヌちゃん、手紙読んだよ!二人が無事なこと、それと私を証人に選んでくれたことがとっても嬉しい。マリアンヌちゃんを守ってくれてありがとう、って直接ローレンツくんに言える日が早く来てくれたら良いのに!その時には何かお礼の贈り物がしたいな。邪魔にならなくて楽しい気分になれてローレンツくんにぴったりの物が何なのか考えておかなきゃ。
     すぐに休校になっちゃったからこれは本当に仮の話だけど、もしガルグ=マクで舞踏会があったら二人は踊る相手が決まったのと同じだよね!マリアンヌちゃんがローレンツくんと踊るところを見たかったな。私と違ってマリアンヌちゃんは背が高いからきっとローレンツくんとお似合いだと思うよ。
     学生時代のローレンツくんは空回りしがちでちょっと見ていられなかったけど、今の彼はとっても偉いと思う。クロードくんからお家がらみで酷い扱いをされてもめげずに頑張ってたからかな。
     でも、もしかしたらクロードくんが一番この状況を喜んでるのかもしれない。実際にどうしてふたつに分けた軍のファーガスに派遣される方にローレンツくんを配置したのか質問したらクロードくんは絶対にはぐらかすだろうし、今の状況を狙ってたのかどうか聞いてもどっちに転んでもいいと思ってた、としか言わないと思う。ああ見えてクロードくんはすごい照れ屋だから。
     でもどうせなら幸せになる人数が多い方が良いに決まってるもの。だから私は自分のためにもクロードくんのためにもクロードくんはローレンツくんが汚名を濯ぐと信じて活躍しやすい場所に派遣した、と信じることにするね。
     めげないローレンツくんみたいに私も格好よくありたいな。そのために必要なものって何だろうね?薔薇かな?勿論これは冗談だけど。
     マリアンヌちゃんたちと別行動になって以来、クロードくんが敵を騙すために短期目標と長期目標が食い違って見える作戦を立てるもんだから毎日すっごく大変!自分が今、何をやってるのかよく分からなくなる生活をしている中でマリアンヌちゃんに手紙を書いている時間は嘘や矛盾がないの───



     個人的なことだから皆を巻き込むわけにいかない、と言って沈黙を選んでいたシェズの良識が最悪の結果を生んでいた。戦いには勝ったが王国の前哨基地はひどく沈んでいる。目の前で父ロドリグを失ったフェリクス、己の全てを分かってくれる後見人であった前フラルダリウス公を失ったディミトリのことを思うとローレンツは口を閉ざすしかない。
     自然とレスター出身者同士でまた同じ火に当たっていた。流石に皆どう話したものか考えあぐね、口を閉ざしている。暖かな光に照らされるマリアンヌの顔は沈んでいたが、それでもローレンツからすればその美しさは賞賛に値する。しばらくは火の爆ぜる音だけがあたりに漂っていたのだが、ラファエルが大きく手を叩いた。何かが彼の中で定まったらしい。
    「よぉし!オデたちに出来ることをしよう!」
    「わ、びっくりした!急に大きな声出さないでくださいよ、ラファエルくん。それで一体、何をするんですか?」
    「見回りだ!」
     確かに悲しみに暮れる今は警戒が緩んでいるかもしれない。その隙に乗じてあの恐ろしい灰色の悪魔───今やファーガス全軍の敵だ───が再び攻めてくる可能性もある。
    「声のでっかいオデとローレンツくんが喋りながら皆で歩けばいいと思うぞ。そしたら、少なくとも獣は寄ってこねえ」
    「それでは静かにしていたい者たちの迷惑になるではないか」
    「足音だけでも動物たちは充分警戒しますので必ずしも話すことはないかと……」
     埒が開かないと思ったのかイグナーツが三人の会話に割って入り、二手に別れて前哨基地の中を見回ることになった。
     騎士となったイグナーツは優秀で、豪商の次男である彼を入り婿にしたい名家の者は多い。ローレンツはマリアンヌを高く評価していたが、見合い相手と結婚後に恋愛をする自信もある。
     だが、ローレンツはマリアンヌと二人きり、無言で並んで歩いたこの晩のことを生涯忘れないだろう。そして、そっと背中を押してくれた頼もしい騎士の手に込められていたのは主人への忖度ではなく友情であった、そう信じている。
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    9660moyunata

    DONEテレビゲームをするだけの現パロ年後クロロレ
    光属性ですご安心ください。
    「ローレンツはゲームとかしないのか?」
    「そんなもの、時間の無駄だろう」
    やっぱりそう言うと思った。庶民の娯楽に現を抜かしてる暇なんてありませんって顔に書いてある。
    「じゃあさ、1回だけ対戦付き合ってくれないか? このゲーム1人でもできるんだけどさ、せっかく買ったんだしちょっとくらい人と遊んでみたいんだよ」
    「仕方がないな、1度だけだぞ」
    ローレンツはせっかくだから、とかそういう言葉に弱い。あいつは俺のことに詳しいなんて言っているが、俺だって負けてない。ローレンツが俺のこと見続けているなら同じだけ俺もローレンツを見ているんだ。
    今始めようとしているゲームはいわゆる格闘ゲームだ。さすがに初心者のローレンツをこてんぱんにするのは気が引けるから、あえて普段使わないキャラクターを選ぶ。それでも俺の方が強いことに変わりはない。手加減しつついい感じの差で勝たせてもらった。
    「......。」
    勝利ポーズを決めている俺のキャラクターをローレンツが無表情で見つめている。よし、かかったな。
    「クロード、もう一戦だ」
    「おっと、1回しか付き合ってくれないんじゃなかったのか?」
    「せっかく買ったのに 1372

    111strokes111

    MAIKING「説明できない」
    紅花ルートで戦死した記憶があるクロードと青獅子ルートで戦死した記憶があるローレンツの話です。
    2.振り出し・下
     士官学校の朝は早い。日の出と同時に起きて身支度をし訓練をする者たちがいるからだ。金鹿の学級ではラファエル、青獅子の学級ではフェリクス、黒鷲の学級ではカスパルが皆勤賞だろうか。ローレンツも朝食前に身体を動かすようにしているがその3人のように日の出と同時には起きない。

     ローレンツは桶に汲んでおいた水で顔を洗い口を濯いだ。早く他の学生たちに紛れて外の様子を見にいかねばならない。前日の自分がきちんと用意していたのであろう制服を身につけるとローレンツは扉を開けた。私服の外套に身を包んだシルヴァンが訓練服姿のフェリクスに必死で取り繕っている所に出くわす。

    「おはよう、フェリクスくん。朝から何を揉めているのだ?」
    「煩くしてすまなかった。単にこいつに呆れていただけだ」

     そう言うと親指で赤毛の幼馴染を指差しながらフェリクスは舌打ちをした。シルヴァンは朝帰りをディミトリや先生に言わないで欲しいと頼んでいたのだろう。

    「情熱的な夜を過ごしたのかね」

     呆れたようにローレンツが言うとシルヴァンは照れ臭そうに笑った。

    「愚かすぎる。今日は初めての野営訓練だろう」

     フェリ 2066

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    MAIKING「説明できない」
    青ロレ赤クロの話です。
    6.初戦・下

     クロードから自分たちを襲った盗賊の討伐が今節の課題だと告げられた皆は初陣だと言って沸き立っていた。金鹿の学級は騎士を目指す平民が目立つ学級で入学以前に領主の嫡子として盗賊討伐を体験している者はクロードとローレンツしかいないらしい。クロードはローレンツの印象よりはるかに慎重で毎日先行したセイロス騎士団がどの方面へ展開していったのか細かく記録をつけ皆に知らせていた。セイロス騎士団に追い込んでもらえるとはいえどこで戦うのかが気になっていたらしい。

     出撃当日、支度を整え大広間で待つ皆のところへベレトがやってきた時にはローレンツたちはどこで戦うのか既に分かっていた。

    「騎士団が敵を追い詰めたそうだね。場所はザナド……赤き谷と呼ばれている」

     そう言えばクロードはザナドが候補に上がって以来やたら彼の地についた異名の由来を気にしていた。赤土の土地なのか赤い花でも咲き乱れているのか。土地の異名や古名にはかつてそこで何があったのかが表されていることが多い。土地の環境によっては毒消しが必要になる場合もある。だが先行した騎士団によると特殊な条件は何もない、とのことだった。初陣の者た 2081

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    MAIKING「説明できない」
    赤クロと青ロレの話です。
    9.典儀・上

     情報には出元と行き先がある。それを見極めずに判断を下すと間違いが起きる。前節、カトリーヌがロナート卿の所持品から見つけた大司教レアの暗殺計画に関する密書は様々な波紋を読んだ。真偽の程は定かではないが対応せねばならない。

     謁見の間に呼び出されたベレトから今節の課題を聞いたクロードは教会があの密書をどう判断したのか悟った。今回も彼の記憶と同じく何者かが教会を混乱させる為に作成した偽物であると判断したのだ。そうでなければ士官学校の学生に警備や見回りを担当させないだろう。だがクロードにとっては丁度良かった。賊の狙いが何処であるのか確かめる為という大義名分を得て修道院の敷地内を直接、自由に見て回れる。賊が聖廟の中で何かを探し、奪いに来たがそこでベレスが天帝の剣を手に取り賊を撃退したことをクロードは覚えているのだがだからといって日頃入れない聖廟を直接探る機会を逃したくはなかった。それにロナート卿の叛乱の時と同じくまたクロードたちが当事者になっている。詳しく調査しておいて損はないだろう。

     ガルグ=マクにはフォドラの外からやってきた住人がクロード以外にも存在する。自然と祖先を 2082

    111strokes111

    MAIKING「説明できない」
    赤クロ青ロレの話です。
    13.誘拐・上

     フレンが行方不明になった。クロードとローレンツは誘拐犯がイエリッツァであること、彼が死神騎士でありエーデルガルトの手の者であることを既に知っている。ローレンツが知る過去ではディミトリたちがフレンを見つけクロードが知る過去ではベレスとカスパルがフレンを見つけている。

    「ではこの時点でベレト…失礼、言い慣れないもので。ベレス先生は現時点で既に教会に不信感を持ち敵対すると決めていた可能性もあるのか」

     ローレンツの知るベレトは教会と敵対せずディミトリに寄り添っていたらしい。記憶についての話を他の者に聞かれるわけにいかないので近頃のクロードはヒルダにからかわれる位ローレンツの部屋に入り浸っている。彼の部屋に行けばお茶と茶菓子が出るので夜ふかし前に行くと夜食がわりになってちょうど良かった。

    「そうでもなければあの状況で親の仇を守ろうとしないと思うんだよな」
    「だが今、僕たちの学校にいるのはベレト先生だ」

     ベレスは戴冠式に参加していたらしいのでそこで何かあった可能性もある。クロードはどうしてもかつての記憶に囚われてしまう。

    「大手を振って何かを調べる良い機会なのは確 2090

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    MAIKING「説明できない」
    赤クロ青ロレの話です。
    14.誘拐・下
     ローレンツとクロードの記憶通り事態は進行した。一つ付け加えるならばクロードがセテスにちょっかいを出したことだろうか。見当違いだと分かっていることを敢えてセテスに聞いたら先方が何故か安心した、とクロードから聞いてローレンツは眉を顰めた。やはりセイロス教会は何かを隠している。五年前から問題視していたクロードが正しかった。だがそれは大乱を起こす理由になり得るのだろうか。クロードは元から英雄の遺産と白きものについて探っていたがそれに加えてエーデルガルトが檄文で言及していた教会の暗部についても調べ始めた。

    「先に掴んで暴露してしまえば檄文自体無効になるかと思ったがそんな都合の良い案件は見当たらなかった。敢えて言うならダスカーがらみか?」
    「だがあれも機能不全に陥った王国の要請がなければ騎士団が担当することはなかっただろう」

     エーデルガルトが見つけたと称するセイロス教会がフォドラの全てを牛耳っている証拠とセイロス教会の秘密は同一なのだろうか、それとも違うのだろうか。探さねばならないものが増えてクロードは大変そうだ。大変そう、と言えばベレトも大変そうだ。彼は修道院内を丹念に探 2099