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    無双青ルート準拠のクロヒル+ロレマリ小説です。
    全10話予定。

    真昼の月と花冠.8 熊を狩る前に毛皮を売るような事態を避けるためディミトリもクロードもセイロス騎士団の意見を聞き、慎重に部隊を配置していた。クロードとの別れ際の会話がローレンツの脳裏に浮かぶ。
    「魔道士の件、さっきも言ったが念を押しておくぜ。それと活躍、期待してるからな。ローレンツ先生。なんてったって今後のことが絡んでるからな」
    「魔道士の件は他の者にも伝えておく。他人をあてにしないで君自身もこの僕のように奮闘努力したまえ」
     だが離れて行動している間に随分と神経を使ったのだろう。ベルグリーズ伯を騙し、東側に引きつけるために本当に複雑な作戦を立てていた、と言う話が多方面から流れてきた。気取られないように演技していたが少し顔も疲れていたし、ヒルダが心配するのも納得できる。
     全軍の方針を決めるのはディミトリとクロードだが、王国軍に組み込まれたままのローレンツたちの配置を決めるのは彼の信頼が厚いシェズだ。彼女はたまにらしくない冴えを見せる時があって、皆そこにも一目置いている。
     シェズはクロードたちと連携がとりやすくなるよう自分の近くにローレンツとマリアンヌを配置していた。周辺の砦から落として帝国軍を押し出し、ガルグ=マクへ一直線に向かう予定だと言う。とにかく足の速い彼女に振り落とされないようにするのは大変だ。
     ローレンツたちの遥か前方では皇帝直属軍の軍旗が翻っている。国内の惨状を放置してエーデルガルトは今まで何をやっていたのだろうか。
    「誰がアリルまで来ているのでしょう……気になりますね……」
     傍にいるマリアンヌが手の甲で汗を拭いながらそう呟いた。今から手巾を使っていたのでは何枚あっても足りないだろう。アリルはどの土地と比べても暑いところだが最近まで王国にいたせいで余計に暑く感じる。王国軍に降ってローレンツたちと行動を共にしているペトラやリンハルトも同じ気持ちだろう。
     フェルディナントやヒューベルト、それにモニカはどこで何をしているのか。マリアンヌは彼らを気にかけている。あの三人が健在なら自己を厳しく律しているディミトリが帝国に攻め込むほど国土が荒れることはなかったはずだ。
    「フェルディナントくんと相見えたいものだ」
    「はい、フェルディナントさんを捕虜にすればエーギル公と交渉出来る可能性が高まりますし……」
     クロードとヒルダが随分親密な仲になった、と思ったが自分もどうやらマリアンヌと親密な仲になれたらしい。これデフォドラの趨勢が決まる、と言う戦いを前にして二人で都合の良い妄想をしているのだから。
     フェルディナントは人当たりの良い好青年でローレンツともマリアンヌとも仲が良かった。ガルグ=マク奪還後に彼の安否が判ると良い。
     ローレンツは飛竜に跨り上空で檄を飛ばすクロードを指差した。よく通る声を持つ彼の言葉に兵たちが耳を傾けている。きっとその傍らにヒルダがいるのだろう。
    「その手の交渉ごとはクロードに任せよう」
     マリアンヌはローレンツの言葉に頷いてくれた。生き残ることが出来たならそろそろ新しい年がやってくる。年越しの瞬間くらいは楽しいことだけ考えていたい。その時、自分の傍らにマリアンヌが居てくれたら言うことはない。そんな未来を確実にするためにローレンツは槍を握った。



     ローレンツたちが落とした砦に伝令兵がやってきた。死神騎士が現れたので彼を捕縛するためクロードの指示に従って欲しいのだと言う。だが一対一では絶対に勝てないのだ。熊のように罠にかけるしかない。
    「クロードさんの予想通りになりましたね」
     辺りにいる傷病兵たちに回復魔法をかけおえたマリアンヌはそう言った。ガルグ=マクを抜かれたら帝国は後がないので死に物狂いで連合軍をつぶしにかかってくる。分かっていたからこそ、彼らにはみつかりたくなかったのだがこうなってしまっては粛々と対処するしかない。
    「やつの悪巧みが成功するよう微力を尽くすとしようか」
     クロードは枝分かれしていく未来に可能な限り対応しようと努力していた。死神騎士が追い込まれた砦に向けて、矢が降り注ぐ雨のように放たれている。あれで死なないのだからやはりクロードが正しかったのだろう。
     カスパルと彼の父ベルグリーズ伯もアリルに現れていた。ローレンツたちは目視したわけではないが、それなら本当にこのアリルにエーデルガルトがいる。影武者の可能性はこれで消えた。彼女さえ倒してしまえばこの戦争は終わる。全てはディミトリの選択にかかっていた。
     あくまでも友軍に過ぎないローレンツたちは最初からこれまでずっと節度を守っている。もしクロードが直接、行動を共にしていたらディミトリやフェリクスの事情を嗅ぎ回っていた筈だ。クロードからはガルグ=マク奪還まではディミトリたちと行動を共にするようにと言われている。だが彼らがエーデルガルトに固執して遠回りをしたらどうすべきか。
    「どうしてこちらに?!」
     マリアンヌは滅多に大きな声を出さない。死にかけたローレンツが意識を取り戻した時も消え入りそうな静かな声で話していた。驚いて振り向くとクロードと共にいるはずのヒルダが飛竜にまたがってマリアンヌの目の前にいる。ローレンツがあんな風に再会を喜んでもらえる立場になる、そんな日が早く来てほしい。
    「伝令兵が足りなくなっちゃったの!それにこっちの様子を見てきて欲しいってクロードくんが!」
     連合軍は大所帯な上に死神騎士を罠にかけるため、かなり広範囲に部隊が散ってしまった。ミルディン以降、目がまわるような忙しさだったろうにヒルダがドラゴンマスターの資格を取っているのは何故か。答えは言うまでもない。
    「分かった。それでヒルダさん、クロードは僕らにどうしろ、と?」
    「ディミトリくんのそばにいて見届けてくれって言ってた!」
     ダスカーの悲劇にまつわる噂話はローレンツたちも耳にしている。あれで人生が狂った者は多くディミトリたちはその筆頭だ。
    「だが、ヒルダさんそれでは!」
     エーデルガルトを失えば帝国の崩壊は確実となってしまう。それを避けるため決死隊のようになっている兵をクロードたちだけで押し留めなければならない。
    「兄さんと私がいるからクロードくんは大丈夫!だから行って!」
     咄嗟にホルストの名を出すのがとてもヒルダらしかった。こんな時でもこちらの心を軽くしようとする彼女を早くクロードの元へ戻してやらねばならない。ローレンツとマリアンヌは彼女に背を向けた。
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    DONE #クロロレ春のこども祭り2021重力から自由になったと思った矢先、クロードは全身に強い痛みを感じた。跳ね起きようとしてマヌエラ先生から身体を押さえられる。押さえられた拍子に視界がぐるぐると回りやがて上下が定まった。

    「落ち着きなさいクロード!貴方は飛竜から落ちたの。下敷きになったローレンツも骨折したわ。二人とも信仰魔法で治したけれど大怪我だったから落ち着くまで時間がかかるわ」

     落ち着く、とはなんだろうか。信仰魔法の主な副作用は吐き気と眩暈だ。先程マヌエラが起きあがろうとしたクロードを止めたのはせっかく治したのに目眩を自覚せず歩こうとして転倒されては無意味になってしまうからだろう。

    「ああ、それで視界がぐるぐると……それとローレンツが下敷きって??」
    「ローレンツも無事だから落ち着きなさい。目眩を起こしたまま歩くのは本当に危ないの。人によって体質の違いがあるけれど一日か二日は絶対安静よ」

    「せんせい、もうしわけないのだがおけをぼくのてもとにいただけないだろうか?」

     反対側の寝台から声変わり前の高くてかわいらしい子供の声がした。医務室の寝台には全て幕が掛かっていて互いが見えないようになっている。

    「ああ、 1753

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    MAIKING「説明できない」
    赤クロと青ロレの話です。
    4.遭遇・下
     犠牲者を一人も出すことなく野営訓練を終えて修道院に戻ることが出来た。ローレンツのほぼ記憶通りではあるが異なる点がある。ベレトが金鹿の学級の担任になったのだ。正式に採用された彼は既に士官学校から学生の資料を貰っている。だがグロンダーズで行われる模擬戦を控えたベレトはここ数日、放課後になると学級の皆に話を聞くため修道院の敷地内を走り回っていた。

     ローレンツはあの時、模造剣を配ろうとしたのは何故なのかとベレトに問われたが予め野盗達に襲われているのを知っていたから、とは言えない。言えば狂人扱いされるだろう。

    「歩兵の足が早すぎたからだ。補給部隊が本体と分断されたら敵に襲われやすくなる」

     食糧がなければ兵たちは戦えない。敵軍を撤退させるため戦端を開く前に物資の集積所を襲って物資を奪ったり焼き払ってしまうのは定石のひとつだ。ローレンツの言葉聞いたベレトは首を縦に振った。

    「それで足止めして予備の武器を渡したのか。装備をどうするかは本当に難しいんだ。あの場合は結果として合っていたな。良い判断をした」
    「ありがとう先生。そう言ってもらえると霧が晴れたような気分になるよ」

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    MAIKING「説明できない」
    赤クロと青ロレの話です。
    7.背叛・上
     皆の初陣が終わるとクロードの記憶通りに事態が進みロナート卿の叛乱の知らせがガルグ=マクにもたらされた。養子であるアッシュへセイロス教会からは何も沙汰が下されていない。軟禁もされずアッシュの方が身の潔白を証明するため修道院の敷地内に閉じこもっている。鎮圧に英雄の遺産である雷霆まで持ち出す割に対応が一貫していない。前節と同じく金鹿の学級がセイロス騎士団の補佐を任された。クロードの記憶通りならばエーデルガルト達が鎮圧にあたっていた筈だが展開が違う。彼女はあの時、帝国に対して蜂起したロナート卿を内心では応援していたのだろうか。

     アッシュは誰とも話したくない気分の時にドゥドゥが育てた花をよく眺めている。何故クロードがそのことを知っているかと言うと温室の一角は学生に解放されていて薬草を育てているからだ。薬草は毒草でもある。他の区画に影響が出ないようクロードなりに気を使っていたがそれでもベレトはクロードが使用している一角をじっと見ていた。

    「マヌエラ先生に何か言われたのか?致死性のものは育ててないぜ」
    「その小さな白い花には毒があるのか?」

     ベレトが指さした白い花はクロード 2097