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    無双青ルート準拠のクロヒル+ロレマリ小説です。全10話予定。

    真昼の月と花冠.9 クロードの目論見は悔しいが当たっていた。エーギル公、そしてシェズの仇である灰色の悪魔がディミトリとエーデルガルトの間には立ちはだかっている。ディミトリたちに助太刀が必要なのは確かだった。
     何故か帝国軍はアリルからガルグ=マクへ直行するせず、ガルグ=マク周辺を彷徨っているのだという。軍議では罠かもしれないので各方面を力押しをするべし、という結論になっていた。しかしマリアンヌの意見は違うらしい。軍議の後、ローレンツたちは出立前にシェズと食事をすることになった。形勢が決定的になったと看做した商人たちが品を持ってくるので食事の質は以前より上がっている。ラファエルはイグナーツを連れて塊肉を貰いに行ってしまった。
     マリアンヌには気になることがあるようで、シェズを待っている間も口を開かず考えごとをしている。
    「帝国軍も、というかエーギル公も私どもと同じくエーデルガルトさんを探しているのではないでしょうか?」
     その成果を真っ先に聞けたことがローレンツは嬉しい。
    「それならこの不可解な帝国軍の動きも理解できる」
    「ここから先は最悪を避けるため、いつ彼女を諦めるか、の駆け引きになっていく筈です」
     エーデルガルトを確保し、ガルグ=マクを奪還することが最良の結果だが双方を追い求めてガルグ=マク奪還に失敗しては意味がない。エーギル公もエーデルガルトを確保しガルグ=マク防衛に成功したいので事情が似ている。
    「戦列を伸ばさないように心がけよう」
     ディミトリとシェズがどんな駆け引きをするか、ローレンツもマリアンヌもその目で確認せねばならない。足の早いシェズに着いていくのは大変な筈だ。
     戦場には相変わらずローレンツたちが探しているフェルディナント、そして全軍をあげて探しているエーデルガルトの姿が見えない。エーギル公を撃破した勢いをどちらに活かすのかローレンツたちが見守っていると遠くから兵たちの悲鳴が聞こえてきた。皆、口々に灰色の悪魔、と言っている。
     双剣を手にしたシェズが兵たちの流れに逆らうようにして走り出した。このフォドラには紋章の力を超えたような武の力を持つ者がいる。クロードがそんな者たちと相対する際は武で競うようなことはせず、災害か何かのように扱う。だがシェズは正面から打って出た。
     白い光と紫の光に誰に包まれて戦う二人はまるで災害のようで、誰も手出しはできない。シェズはロドリグを死なせてしまったことを深く悔いていた。士官学校にやってきた当初は皆に馴染む自信がなかったのだろう。何故ジェラルド傭兵団を探しているのか、すら明かしていなかった。今もなお奪われ、奪い、を繰り返しているのはそんな遠慮のせいかもしれない。
    「ローレンツさん、あれは一体、何の力なのでしょう……?」
     王国に降ったリンハルトも全く分からないと言っていた。ローレンツも紋章の力を身に宿している。だからこそ彼女たちがそんな枠を超えたところで戦っていることが分かるのだ。武器同士がぶつかり合う音が聞こえなければ光に包まれたニ人が何をしているのか分からなかっただろう。永遠に続くかと思われたその殺し合いは緑の光が消えたところで決着がついた。



     ローレンツはどうも学校とは縁がないらしい。魔道学院も政情不安の煽りを受けて退学し士官学校に戻る数節しか居られなかった。王国軍も同盟軍もあの時、士官学校にいた者が多い。皆二年ぶりにガルグ=マク修道院を目にして何とも言い難い表情を浮かべている。そして当然と言えば当然だがここにもフェルディナントの姿がない。
     マリアンヌもローレンツもじわじわと彼のことを諦めつつあった。ディミトリの気質なのか痛くもない腹を探られたくないための方便なのか王国の者たちは降伏した敵将が尋問で明かしたことをローレンツたちと共有してくれる。
    「ねえ、ローレンツとマリアンヌに同盟軍との合流場所の確保を任せてもいい?確かあっちなんだけど」
     仇討ちに成功したシェズが指差した方向に砦はない。足は早いが彼女はとにかく道を間違えるのだ。
    「良いだろう。このローレンツ=ヘルマン=グロスタールに全て任せたまえ」
     もしアリルに置き去りにしたクロードが帝国軍相手に負けていたらローレンツたちは王国軍を守る盾にならねばならない。
    「シェズさんのおかげで真っ先にヒルダさんとクロードさんをお迎えできますね」
     そんなことは承知した上でマリアンヌは顔に笑みを浮かべた。彼女は自己否定の度が過ぎる時も多い。だが自然とこういうことを言える人物でもあるのでヒルダもマリアンヌを好いているのだ。
     敵もローレンツたちが陥落させた砦が何に使われるのか分かっているらしい。帝国軍であると偽装することを止めた怪しげな魔道士たちが群れをなして攻め込んでくる。これまで散々、苦しめられてきた怪しげな兵器も惜しみなく投入されている。敵もここを占拠されれば終わりなことがわかっているのだろう。
     降り注ぐ悪意の中、無我夢中で槍を振るい続けたローレンツは敵将を倒した。本隊の者たちがいつの間にやら砲台や怪しげな兵器を停止させたようで空は静かになっている。
     おかげで飛竜の羽音がよく聞こえた。疲れで目が霞んでいるがイグナーツが弓を構えていないので警戒する必要はない。
    「ちょっと遅れちゃったかな?みんな、王国軍に加勢するよー!」
     ヒルダの声がして、喜ぶマリアンヌの声を耳にしてローレンツはようやく安堵のため息をつくことができた。疲れ果てた身体にマリアンヌが申し訳なさそうにかけてくれた白魔法の力が満ちていく。
    「すみません、私……副官なのにローレンツさんのことを放置してしまって。クロードさんも無事で、後から来るそうです」
    「きっと何か企んでいるのだろうな」
     これは予感ですらなく、単なる確信に過ぎなかった。
    「そうだよ!今は言えないけどローレンツくんもきっとびっくりするよ!」
    「ヒルダさんに先陣を切らせたことにまず驚いたよ」
     いつも楽をしたいヒルダが今回は敵を切り開く過酷な役目を引き受けている。つまりクロードが率いる部隊はもっと厄介なことに従事しているのだ。偽りの臣従作戦と違って秘密にされても腹は立たない。
    「まあこれで最後だろうから私もちょっとだけ頑張ろうかな〜?って」
     自称・猜疑心の塊が随分と甘え上手になったものだ、ローレンツは素直にそう思う。
    「クロードを出迎えてやるに相応しい場所はどこだろうか?」
     ヒルダは黙ってフライクーゲルでガルグ=マクの高層防衛門を指した。
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    MAIKING「説明できない」
    紅花ルートで戦死した記憶があるクロードと青獅子ルートで戦死した記憶があるローレンツの話です。12月にクロロレオンリーイベントがあればそこで、実施されなければ11月のこくほこで本にするつもりで今からだらだら書いていきます。
    1.振り出し・上
     クロードが最後に見たのは天帝の剣を構える元傭兵の女教師だった。五年間行方不明だった彼女が見つかって膠着していた戦況が動き始めそれがクロードにとって望ましいものではなかったのは言うまでもない。

     生かしておく限り揉めごとの種になる、と判断されたのは故郷でもフォドラでも同じだった。人生はなんと馬鹿馬鹿しいのだろうか。だが自分の人生の幕が降りる時、目の前にいるのが気に食わない異母兄弟ではなくベレス、エーデルガルト、ヒューベルトであることに気づいたクロードは笑った。
    >>
     もう重たくて二度と上がらない筈の瞼が上がり緑の瞳が現れる。その瞬間は何も捉えていなかったが部屋の窓から差す光に照準が合った瞬間クロードの動悸は激しく乱れた。戦場で意識を取り戻した時には呼吸が出来るかどうか、視野は失われていないか、音は聞こえるのかそれと体が動くかどうか、を周りの者に悟られぬように確かめねばならない。クロードは目に映ったものを今すぐにでも確認したかったが行動を観察されている可能性があるので再び目を瞑った。

     山鳥の囀りが聞こえ火薬や血の匂いを感じない。手足双方の指も動く。どうやら靴は履 2041

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    MAIKING「説明できない」
    赤クロと青ロレの話です。
    7.背叛・上
     皆の初陣が終わるとクロードの記憶通りに事態が進みロナート卿の叛乱の知らせがガルグ=マクにもたらされた。養子であるアッシュへセイロス教会からは何も沙汰が下されていない。軟禁もされずアッシュの方が身の潔白を証明するため修道院の敷地内に閉じこもっている。鎮圧に英雄の遺産である雷霆まで持ち出す割に対応が一貫していない。前節と同じく金鹿の学級がセイロス騎士団の補佐を任された。クロードの記憶通りならばエーデルガルト達が鎮圧にあたっていた筈だが展開が違う。彼女はあの時、帝国に対して蜂起したロナート卿を内心では応援していたのだろうか。

     アッシュは誰とも話したくない気分の時にドゥドゥが育てた花をよく眺めている。何故クロードがそのことを知っているかと言うと温室の一角は学生に解放されていて薬草を育てているからだ。薬草は毒草でもある。他の区画に影響が出ないようクロードなりに気を使っていたがそれでもベレトはクロードが使用している一角をじっと見ていた。

    「マヌエラ先生に何か言われたのか?致死性のものは育ててないぜ」
    「その小さな白い花には毒があるのか?」

     ベレトが指さした白い花はクロード 2097