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    takami180

    @takami180
    ご覧いただきありがとうございます。
    曦澄のみです。

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    続長編曦澄2
    あなたと手を繋いでいたい

    #曦澄

     初冬の蓮花湖にはなにもない。花は言うに及ばず、葉もとっくに枯れている。
     見えるのは、桟橋に向かう舟の影だけ。
     だというのに。
     江澄は隣に立つ男を見た。
     藍曦臣は「どこに行きたい」と尋ねた江澄に、ここを希望したのである。
     冬になる前には、と言っていたもののそれは叶わず、藍曦臣の訪問は結局、冬の訪れを待ってからになった。
     猾猿が及ぼした影響は深く、姑蘇の地は冬支度がなかなか終わらなかった。
     それでも季節は移る。冬になってしまえばできることは少ない。宗主としての仕事が一段落すれば、正月までは特別な行事もない。
     そうして、今回、藍曦臣は三日の間、蓮花塢に逗留することになった。
    「あちらに見えるのが涼亭ですね」
    「そうだが」
    「あなたに蓮の実をいただいたのを思い出します」
     江澄に視線を移して、藍曦臣は笑う。
     なにがそんなに楽しいのだろう。江澄はまじまじと見返した。
    「どうしました?」
    「こんな、なにもない湖を見て、そんなに楽しそうにできるのはあなたぐらいだ」
    「そうでしょうか」
     風が吹く。北からの冷たい風が二人の背中をなでる。
    「きっと、あなたと一緒だからですね」
     江澄はぱっと顔をそらした。
     まただ。前回会ったときから、藍曦臣はたびたびこのような言動をする。江澄が戸惑っているのは分かっているはずなのに。
    「冷えてきたな」
    「そうですね、江澄」
     するり、と手を取られた。
    (は?)
     左手に目を下ろすと、藍曦臣の指がからまっている。
    「少しだけ」
     耳元でささやかれて、顔が動かせなくなった。
     凪いだ湖面が、午後の陽光を受けてきらめいている。
     水鳥が羽ばたく。
     少しでも、不埒な動きをすれば手を振り払って抗議できるものを、藍曦臣の手はやわらかく握るだけ。
     江澄はゆっくり息を吐く。
     認めたくはないが、心地がいい。忙しい毎日の中で、こんなふうに穏やかな時間を過ごせることはない。
     半歩、藍曦臣に近づくと肩が触れた。
     びくりと震えたのは藍曦臣のほうだ。
     江澄は小さく吹き出した。自分でしかけておいて、やり返されるとは思っていなかったらしい。
    「江澄?」
    「なんだ」
    「あまり、かわいらしいことをなさらないでください」
     また耳元でささやかれる。
    「足りなくなるので」
     わずかに、手に力がこめられて、江澄は今度こそかたまった。
     藍曦臣はどういうつもりなのだろうか。からかわれているだけなのだろうか。
     あのときの言葉を嘘だと思っているわけではないが……
     その後、二人はしばらく湖畔を歩いた。
     手を繋いだまま、何も話さず、ただ湖を見ながら歩き続ける。
     最初の「少しだけ」という言葉を反故にされたと江澄が気づいたのは、たっぷり半時も手を繋いだ後だった。
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     その日は各々の牀榻で休んだ。
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     いつかの夜も、藍曦臣が隣にいてくれればいいのに、と思った。せっかく同じ部屋に泊まっているのに、今晩も同じことを思う。
     けれど彼を拒否した身で、一緒に寝てくれと願うことはできなかった。
     もう、一時は経っただろうか。
     藍曦臣は眠っただろうか。
     江澄はそろりと帳子を引いた。
    「藍渙」
     小声で呼ぶが返事はない。この分なら大丈夫そうだ。
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    「んんっ」
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