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    takami180

    @takami180
    ご覧いただきありがとうございます。
    曦澄のみです。

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    続長編曦澄11
    これからの恋はあなたと二人で

    #曦澄

     寒室を訪れるのは久しぶりだった。
     江澄は藍曦臣と向かい合って座った。卓子には西瓜がある。
     薄紅の立葵が、庭で揺れている。
    「御用をおうかがいしましょう」
     藍曦臣の声は硬かった。西瓜に手をつける素振りもない。
     江澄は腹に力を入れた。そうしなければ声が出そうになかった。
    「魏無羨から伝言があると聞いたんだが」
    「ええ」
    「実は聞いていない」
    「何故でしょう」
    「教えてもらえなかった」
     藍曦臣は予想していたかのように頷き、苦笑した。
    「そうでしたか」
    「驚かないのか」
    「保証はしないと言われていましたからね。当人同士で話し合え、ということでしょう」
     江澄は心中で魏無羨を呪った。初めからそう言えばいいではないか。
     とはいえ、魏無羨に言われたところで素直に従ったかどうかは別である。
    「それだけですか?」
    「いや……」
     江澄は西瓜に視線を移した。赤い。果汁が滴っている。
    「その、あなたに謝らなければならない」
    「その必要はないと思いますが」
    「聞いてほしい。俺はあなたを欺いた」
     はっきりと藍曦臣の顔が強張った。笑顔が消えた。
     江澄は膝の上で拳を握りしめた。
    「あなたに、気持ちを聞かれたとき、同じだと答えたが」
    「それが、偽りですか」
     江澄がうなずくと、「何故」とかすれた声がした。理解できないのだろう。自分でもよくわかっていないのだから、それも当然だ。
    「あなたと、もっと一緒にいたかった」
     毒をくらわば皿まで、と江澄はまくし立てた。
    「あなたの隣は居心地がいいんだ。何故かと聞かれても分からないけれど、とにかく、落ち着ける。でも、もし俺があのとき、ただの友だと言ったら、あなたは離れていっただろう。だから」
    「待って、待ってください、江澄」
     藍曦臣はなんともいえない、おいしいと思って食べた蓮の実がえぐかったときのような、そんな顔をしていた。
    「つまり、私があなたから離れていくと思って嘘をついたと?」
    「そうだ」
    「口付けを受けたのも?」
    「それは……嫌ではなかったから」
    「私があなたを抱きしめた時は」
     それは、言わなければならないのだろうか。
     藍曦臣をうかがい見ると、重大事を問いただす雰囲気だった。
     江澄は顔を背けて、小声で答えた。
    「……嬉しかったから」
     藍曦臣は勢いよく立ち上がると、卓子を回り込んで、江澄の傍らに膝をついた。
     江澄は驚いてその様子を見守り、気づいたときには両手を握られていた。
    「江澄、それは」
     藍曦臣は言葉を迷うように視線をさまよわせ、続けてゆっくりと声を紡いだ。
    「それを、恋というのではないでしょうか」
     江澄は目を瞬いた。
     何を言っているのだ、この人は。
    「違うだろう、だって」
    「私に会いたいと思ってくださっている」
    「そうだが、しかし」
    「こうして触れても嫌ではない」
    「そ、そうだが……」
    「こうして」
     藍曦臣の顔がさっと近づいて、唇が触れた。
    「口を合わせるのも」
     嬉しいと思うし、またしたいと思う。寝るときは隣に臥し、起きたときにも隣にいてほしい。
     その気持ちに名前をつけるなら。
     江澄の顔は一気に、立葵よりも鮮やかに染まった。ひょっとすると西瓜にも勝ったかもしれない。
    「江澄、嬉しい」
     藍曦臣が再び顔を近づけてくるものだから、江澄は慌てて目をつぶった。くすりと笑われた気がしたが、抗議をするより前に口がふさがれる。
     押し当てられた唇が熱い。
     二度三度と口付けを受ける間に、江澄は藍曦臣に抱きすくめられ、身動きが取れなくなった。
     しかたがないので、指先だけで白い衣の端をつかんだ。
     すると、不思議なことに、抱きしめる腕がいっそうきつくなる。
     江澄は握った衣を引っ張ることもせず、離すこともせず、息苦しさに耐えた。
     目の端にあふれたものは藍曦臣の加減知らずのせいだった。
     絶対に、間違いなく、藍曦臣のせいだった。
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    「何をしている!」
     江澄は鋭い声を飛ばした。ずかずかと房室に入り、傍の小円卓に水差しを置いた。
    「晩吟……」
    「あなたは怪我人なんだぞ、勝手に動くな」
     かくいう江澄もまだ左手を吊ったままだ。負傷した者は他にもいたが、大怪我を負ったのは藍曦臣と江澄だけである。
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    「とりあえず、水を」
     藍曦臣の手が江澄の腕をつかんだ。なにごとかと振り返ると、藍曦臣は涙を浮かべていた。
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    1437

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