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    すぺ2

    すぺ2という牛天垢です。Twitter上でタグとかで書かせていただいたのをまとめようかなーと思って作ってみました
    ゆるーくよろしくお願いいたします

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    すぺ2

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    バームクーヘンの日(3/4)に書いたバッドエンドじゃないバームクーヘンエンドを考えてみました。続きは「THANK YOUの日」(https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=14822429)のR指定になっています

    【バームクーヘンの日】

    「天童、引き出物はバームクーヘンで良いだろうか?」
    突然かかって来たマブダチからの電話に衝撃を受けてしまったのは、俺がまだそのマブダチへ別の感情を諦めきれていなかったからかもしれない。

    若利くんがポーランドのチームに移籍してきた年、俺は勝手にお祝いを兼ねてケーキを焼いた。ホワイトチョコで作ったプレートには『Best wishes』とわりと綺麗に書けていたし、スポンジ部分もムース部分も最高の出来だった。これからも今までも沢山の幸せが若利くんにもっともっと訪れますように。俺の方の店も忙しい中だったけど、今までよりもずっと近くなった物理的な距離に、俺自身が勝手に一人で舞い上がっていたのだ。
    ホールで焼いたチョコケーキを見た瞬間の若利くんのその驚いたような顔と、その後にほころんだ目元にまたもう一度、恋に落ち直してしまったのが、確か、数年前。
    「ありがとう。俺も嬉しい」
    スマホ越しじゃない生の若利くんのその時の声を一生忘れないでいられれば、そのままマブダチとして自制して一生過ごすことが出来ると思った。6号サイズしかケーキ型を持っていなかったのでかなり大きめに作ってしまっていたが、若利くんがペロッと平らげてしまったのでその後の彼が太ったりしてしまわないか暫くハラハラはしたけれど。

    その年、俺は若利くんへの密かな恋心を一生バラさ無いように自分に誓い、ピアスを開けた。たった一つ、左の軟骨に。もっと痛いものかと思ったけど、大したことが無かった。
    それからというもの、お互いに何回もお互いの家を行き来して、時々お互いの家に泊って。白鳥沢に居た頃よりももしかしたらずっと密に連絡を取っていたかもしれない。
    念願の情熱大陸にも出演した。物理的な距離が近くなってからというもの、若利くんから「会おう」とか「時間があるだろうか?」と訊かれることが多くなってウキウキしていた。俺や若利くんが忙しい時は、結構マメにメールや電話なんかをしたりして。ただ、一向に若利くんがスカイプを使い慣れない様子はちょっと面白くてちょっとかわいいと思ったりしていた。
    嬉しいことに、俺がピアスを開けたのを知った若利くんがピアスを買ってくれたこともあった。デザインとか普段使いとかに疎い若利くんは、高ければ間違いないと思ったのだろう。何故かダイヤの入ったメチャクチャ高価なピアスをくれた。誰かに勧められたかからかわれたのか、バラまで付けて渡して来るもんだからなんの冗談かと思った。ただ、思わず大声で笑ってしまったのは正直、悪かったと思っている。
    情熱大陸のラストについてはテレビの企画に乗っかったのもあるけど、あそこまで綺麗に『マブダチ』と言った声が被ったのはその頃のかなり密な関係の影響もあったと思う。
    お互いの仕事も順調で、穏やかな日々が続いていた。

    もちろん、年々『マブダチ』の枠に収まり切れない思いが俺の中で溢れてくることが増えていた。でも、言えるわけない。若利くんの人生にしても、バレーにしても邪魔したくないし。時々、ほんの時々、感情が溢れてちょっとイカガワシイ夢を見ちゃうけど、それを若利くんに伝える気も無くって。思わず何かを伝えてしまいそうになる時はぐっとピアスを触る癖がいつの間にか出来ていた。耳の軟骨と小さな石や金属が擦れると流石に現実に引き戻される。そう、俺らは、マブダチだ、と。
    そうやってズルズルしていたら、俺達もそろそろイイ歳になっていたらしい。

    東京オリンピックが無事に終わった数年後の春。若利くんから、「引き出物にバームクーヘンを焼いてくれ」と言われた。

    最近、若利くんがテレビのインタビューなどで結婚やら恋人の話題を出されるたびにその存在を匂わせてたのは気づいていた。いや、匂わせるくらいの可愛いものじゃなくて、ハッキリと彼は「恋人が居る」と公言していたのだ。
    最初の言葉は、確か、メキメキと強くなっていく秘訣について訊かれた時に「分野は違うが遥か先を行く人間を見ていると負けられないと思う」とか言っていた時だった気がする。一瞬、俺かも? なんて自惚れたけど、すかさずレポーターが訊いた「それはもしかして恋人ですか?」の質問に静かに頷く若利くんを見てがっかりした。
    それからというもの、若利くんが活躍する度に「恋人に一言」と言われることが多くなり、「いつもありがとう」だの「いつも見ている」だの短いながらも最大限の惚気を見続けていたらもうすっかり諦められたと思ったのに。

    「俺の作るケーキは高くつくよ?」
    ツンツン、と自分の耳を突く。どういう声で話せばマブダチの結婚を祝ながらもからかう口調に聴こえるか丁寧に計算していた。
    「構わない。天童の作る物が世界一美味いのを知っている」
    「アリガト」
    明るく返事を返せたのはせめても電話だったからだろう。テレビ通話だったら一言も声を発することが出来なかったはずだ。ギュ、と耳の石を思わず摘まんでいた。
    「引き出物、どのくらい焼くわけ? あと、式っていつ?」
    「どちらもまだ詳しくは決めていないので、天童の都合に合わせる。式自体は簡素なものにしたい」
    「っつっても、そっちのリーグ始る前で、ワールドリーグ終わてからでしょ? ならまだ時間あるよね? 日本でやるの? ポーランド?」
    「いや。そちらにしようと思ってる」
    「こっちってパリってこと? あー、まぁ、こっちの方が式場とかいっぱいあるけど、高いよ?」
    フランスに比べればポーランドの方が全体的に物価が安い。それとも、若利くんのお相手の指定なのだろうか? それなら結構、イメージしていたよりもミーハーな雰囲気の女性なのかもしれない。
    「本当に簡素な物で構わない。うちの家族は来られないと思うし、呼ぶとしたらうちのチームメイトから数名くらいだ」
    「若利くんのおばあ様、結構なお年だったもんね? 空井さんは呼んだら? まだ確かアメリカでショ?」
    学生時代に数回だけ若利くんの実家にお邪魔したことがある。シャンと背筋を延ばし、とても静かにお茶をすする正座をした和服のちいさなおばあちゃんと、若利くんにそっくりなキリッとした感じの綺麗なお母さんが大き過ぎるくらいの純和風家屋に静かに暮らしていた。あの様を思い出すと、せめてテレビ電話だけでも繋いであげた方がいいんじゃないかと思う。たしか、若利くんも一人っ子と聞いたことがあるし。
    「そうだな、お父さんは呼ぼう」
    「あと、あの日本代表とか日本のチーム居た時のチームメイトとかは?」
    及川あたりにも嫌がらせで招待状送ったら? と笑えたのは、明らかにピアスのおかげだった。今日はたまたま若利くんがくれたピアスをしていた。運が良いんだか悪いんだか。
    「そうだな。なるべく昔のチームメイトには連絡しよう。ただ、あまり大々的にしたくない」
    「そうなの? 若利くん、ずっとテレビで惚気てたじゃん? 多分、マスコミいっぱい来ンじゃね?」
    「それが嫌なんだ……」
    「ソーなの? こっそりやるなら、あんま人呼ばない方がイイか」
    引き出物の数が少なくていいならもしかしたらウェディングケーキも焼いてあげられるかもしれない。
    というか、海外で挙式するのに引き出物渡そうとか思うということは、相手は多分、日本人女性なのだろう。若利くんがポーランドに移籍してからもよく会っている風のコメントが続いていたのでてっきりこっちの人かと思っていた。
    「あ、じゃぁ、この前うちのスタッフが挙式したトコとかイイかも。ちょっと郊外の方だけどワイン畑のど真ん中だから空気もいいし静かだしすっごい小さいチャペルで可愛かったよ」
    「良さそうだな」
    「ワイナリーいっぱいあるからワインも美味くて結構呑んじゃったんだよねぇ」
    またへべれけに酔ってしまえば明るく若利くんを送り出せるかもしれない。酔っぱらって管巻いてる振りして「俺の若利くん取りやがって~!」って花嫁さんに絡んでやろう。それを最後の楽しい思い出としてこの恋を終わりにしよう、ともうその時すでに薄っすらと決めていた。
    「あそこ、確か、最大で呼べて30人くらいだったかな? あと、平日しか使えなかった気がする」
    「構わない」
    「大安とか気にするの?」
    「それよりも天気のいい頃が良いだろう?」
    「まさそれ! でもヘーキ。あの辺りは日照時間多いからワイナリー多いんだよ。だから晴れの日が多い! ちょっと風強いけど」
    「それはありがたい」
    「風強いのは花嫁さんちょっと可哀想だったカナ? ヴェールとか飛んで行きそうだったよ?」
    「いや、ベールは必要ないだろう」
    「ドユこと? 和服でも着るの?」
    「いや?」
    不思議そうに返された声に俺の方がよっぽど不思議だった。花嫁と言ったらあのヴェールをめくって誓いのキスってのが定番だし、それが無い結婚式なんて想像がつかないではないか?
    「天童は、ウェディングドレスが着たいのか?」

    ……は?



    電話では収拾がつかないようだったので、後日俺は若利くんの家に突撃訪問したら、いつの間にか処女喪失してた話まで聴きたい人はいないとは思うので、とりあえず俺はバームクーヘン焼きに行きます。
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    すぺ2

    DOODLE若利くんお誕生日に思いついたネタなんですが、なんか、薄暗い…?いや。めっちゃハートフルハッピーエンドのつもりで書きました。
    新書メーカー背景付きで投稿しましたが、なんか読みにくかったので
    Dear… 牛島家にはいつからかサンタが夏にやって来る。
     ある日の夕方、牛島若利がバレークラブから帰ってくると、玄関に両手で抱える程度のダンボール箱が置かれていた。差出人の名はなく、『若利へ』という右上がりのメモが貼られている。
     玄関まで出迎えに来てくれた母を見上げると、母は若利に小さく頷く。
    「季節外れですが、サンタさんが来ました。若利にだそうです。手を洗ったら開けてみなさい」
     何の疑問を感じないのか、若利はただ素直にこくりと頷く。そぉっとそのダンボール箱を持ち上げると、大きさの割には軽く感じられた。
     中身がなにかさえも分からないので、若利はそれを慎重に持ち運び、洗面台の足元にそっと置く。それからいつものように固形石鹸を丁寧に泡立て、爪の中まで丁寧に洗った。いつでも乾いた清潔な物がかけられているタオル掛けのタオルで丁寧に指先までしっかりと水分を拭き取ってから、もう一度若利はダンボールを抱えて居間に向かう。
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    すぺ2

    TRAININGかさねさん(@kasanedane22)の素敵絵にss付けさせていただきました!元絵が本当に!!可愛いのにえっちいのでぜひ見てください!!!
    絵も小説も描ける&書けるかさねさんに私ごときが書くの本当に恥ずかしいですが!!!恥を忍んで書きました!
    【きみは、ぼくのおきにいり】

    天童覚は変わっている。

    「ブロックは読みと勘だヨ~」
    今では珍しいゲスブロックを得意とするMB、ひょろりと伸びた手足、異様に青白い肌、それに対比する様に真っ赤な逆立てられた髪。普段は猫背な彼も、ひとたびコートに入り、ブロックに跳べば、その背はにょきりと伸び、ゴム製で出来たおもちゃのようにしなやかな手指が相手からの攻撃を叩き落としてしまう。
    初めて牛島若利がその独特なブロックを見た時。今まで見た数々のブロッカーと異なるその「叩き落とす」技術に釘付けになった。牛島の父が繰り返し話していた言葉を思い出す。
    「強いチームに行けば、強いやつ、面白いやつに会える」
    白鳥沢バレー部はどこからどう見ても強いチームだった。だからこそ、この、一味も二味も変わったゲスブロッカーに出会えた。
    ——お父さん。やっぱり、このチームは、強い——。
    自分が一番の変わり者とされていて、そのチームで最も強いと思われているとは気づきもしない牛島は、天童をはじめ、数々と集まるメンバーを見てそう感じていた。

    「若利く~ぅん!」
    間延びしたイントネーションで天童がそう呼ぶ時、牛島はただ、静かに 1326

    すぺ2

    TRAINING亜歳さん(@asai_oekaki)のかわいい牛天ワシの絵に付けさせていただきました!元絵がすごくかわいいので!!!ぜひ見に行ってください!!【にひきのわしのうしてん】

    「ワカトシくん、ワカトシくん」
    テンドウワシが ぴょこぴょこと あかいかざりばねを ゆらしながらワカトシワシのまわりを ちょこちょこあるきます。
    「はしのむこうに、おいしいきのみがいっぱいあるんだって! いこうよ!」
    「はしのむこう?」
    ワカトシワシがみどりのかざりばねをゆらして ちいさくくぶをかしげます。
    「あのトロルのいるはしのむこうか?」
    「そーそー!」
    テンドウワシが そのまっしろなつばさをひろげます。よくみれば、そのつばさは ひかりにすけてうすむらさきいろに みえます。
    「このまえまでとなりのもりにすんでた ことりのおやこがたべられちゃったってきいたけど たぶん、おれらはだいじょうぶ」
    ふふん、ととくいげにテンドウワシはその するどいくちばしをみせびらかします。ワカトシワシは なにかをかんがえていました。
    となりのもりの ことりのおやこは テンドウワシとウシワカワシがこのもりに すみはじめたとき、となりのもりの きれいなみずばを おしえてくれたしんせつな おやこでした。
    「わかった。ほんとうにトロルがあのおやこをたべたなら おれたちはいくべきだろ 705

    すぺ2

    MOURNING栗原さん(@kuri_usiten)に大変仲良くしていただきまして!ありがたいです!!
    そんな中で、素敵絵をいただいて、それに小説付けさせていただくというものをやらせていただけたので&公開許可をいただきましたので、自慢という名の公開をさせていただきます!!いいだろ!!!
    おとぎ話パロです。
    栗原さんの素敵な絵付きのものは支部にあります(https://www.pixiv.net/artworks)
    【はだかのおうじさま】

    その国はとても美しい国でありました。人々は幸福そうに微笑み、動物たちも穏やかに過ごせる緑に溢れ、美しい空と清涼な川と湖がその領地にありました。

    そこにやってきたのが1人の赤毛の男です。正確に言うなれば、彼は男と言うにはやや幼い顔立ちをしていました。年としては10代後半といったところでしょうか? ギョロリとした白目の多い大きな目は彼を幼くも奇妙にも見せております。ただ、その長身をひしゃげるように曲げて歩く様は老人のようでした。
    彼は、ヒョロリと長い手足をブラつかせながら質素な身なりで現れました。背中には大きな木箱を背負っております。ずっしりと重そうなそれのせいで少年は背中を丸めて歩いているのかもしれませんでした。

    「王子様の17歳のお祝いに参りまシた」
    その国の真ん中の少し小高い丘、その上に質素なお城がありました。赤毛の少年はそのお城の門の前で門番の少年にそう告げておりました。太眉の門番はその特徴的な眉をㇵの字にして赤毛の少年をマジマジと眺めます。
    「えっと、祝賀会はまだ先で……」
    「分かっていマス。ですので、その、祝賀会に見合う服を仕立てるために参りまシた 9238

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    すぺ2

    DOODLE若利くんお誕生日に思いついたネタなんですが、なんか、薄暗い…?いや。めっちゃハートフルハッピーエンドのつもりで書きました。
    新書メーカー背景付きで投稿しましたが、なんか読みにくかったので
    Dear… 牛島家にはいつからかサンタが夏にやって来る。
     ある日の夕方、牛島若利がバレークラブから帰ってくると、玄関に両手で抱える程度のダンボール箱が置かれていた。差出人の名はなく、『若利へ』という右上がりのメモが貼られている。
     玄関まで出迎えに来てくれた母を見上げると、母は若利に小さく頷く。
    「季節外れですが、サンタさんが来ました。若利にだそうです。手を洗ったら開けてみなさい」
     何の疑問を感じないのか、若利はただ素直にこくりと頷く。そぉっとそのダンボール箱を持ち上げると、大きさの割には軽く感じられた。
     中身がなにかさえも分からないので、若利はそれを慎重に持ち運び、洗面台の足元にそっと置く。それからいつものように固形石鹸を丁寧に泡立て、爪の中まで丁寧に洗った。いつでも乾いた清潔な物がかけられているタオル掛けのタオルで丁寧に指先までしっかりと水分を拭き取ってから、もう一度若利はダンボールを抱えて居間に向かう。
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