創世神話 〜神と竜のはじまり〜◆ 太初の世界と創世神イース
かつて、世界は 虚無 であった。何もなく、音すら響かない、永遠に続く闇の空間。
その静寂を破り、最初の光をもたらした存在──それこそが 創世神イース である。
イースは己の力を振るい、大地を生み、空を広げ、海を満たし、風を吹かせ、炎を灯した。こうして、世界は形を得た。
◆ 金と銀の竜──セレナとセレス
しかし、ただ世界を創るだけでは、生命は生まれない。そこでイースは自身の力から 二体の存在 を創り出した。
金の存在・セレナ(姉)秩序と理を司り、世界の調和を守る存在。太陽の輝きとともに現れ、大地と水の流れを整えたとされる。山を築き、大地を豊かにし、海を清めた。
銀の存在・セレス(弟)変化と自由を司り、生命の流れを調律する存在。夜の静けさとともに飛び、風と炎を世界へもたらしたとされる。誕生と死、四季の巡りを形作り、生命の循環を定めた。
この 二体の存在こそが、世界の均衡を支える柱 となった。
◆ 世界に宿りし生命たち
セレナとセレスは、それぞれの力を用いて 世界の秩序と循環を整えた。
セレナの力 により、大地と空が安定し、山が築かれ、海が満たされた。彼女の調律により、風が吹き、気候が形作られた。
セレスの力 により、生命の流れが生まれ、誕生と死のサイクルが確立された。彼の導きにより、四季が巡り、生命が育まれるようになった。
◆ 創世神の消失と神竜の祝福
しかし、創世神イースは次第に姿を消していった。その理由について、明確な答えを知る者はいない。
ただ、一つの伝承が語り継がれている。
「イースは、創り上げた世界を愛し、その生命たちを 永遠に見守るため、自らを神竜へと変え、大地と空へ溶け込んだ」 ということ。
このとき、イースの力の一部が結晶化し、世界に「竜」が誕生した。竜たちは 神竜の意志を受け継ぎ、世界を見守る存在 となった。
セレナとセレスは、イースの創った世界を維持し、均衡を保つ役割を果たしている。
◆ 竜の唄──竜族が受け継ぎし力
竜たちは皆、「竜の唄」 と呼ばれる力を持つとされる。これは竜の魂に刻まれた 世界の理を紡ぐ力 であり、竜の血を引く者ならば、何かしらの「唄」を使うことができると言われている。
竜の唄は、自然の流れを紡ぎ、あらゆるものに影響を与える力を持つ。
風を呼び、天を駆けるもの
水を清め、大地を癒すもの
時を知り、未来を示すもの
それぞれの竜が持つ特性によって、唄の力は異なる。
しかし、その中でただ一つだけ、神竜のみが持つ唄がある。
「滅びの唄」
神竜が自らの命を代償に、世界を破壊し、再構築する唄。
この唄が響くとき、すべてが崩れ去り、新たに生まれる という。
滅びの唄は、世界の理を超えて干渉する唯一の力である。それが 世界の救済 なのか、あるいは 最後の絶望 なのか──
いずれにせよ、この唄を用いるとき、世界の運命は大きく変わることになる。
◆ 竜と人間の共存、そして軋轢
竜たちは 創世の遺志を継ぎ、世界を見守る存在 となった。しかし、時が経つにつれ、人間たちは 次第に力を持ち始めた。
彼らは 魔法 を学び、 文明 を築き、かつて竜のみが操っていた力を 独自に発展させていった。
こうして、人々の間で竜への価値観が分かれ始めた。
竜を 畏れ、敬う者。
竜を 遠ざける者。
竜の力を 求め、支配しようとする者。
竜を 憎み、討とうとする者 すら現れた。
こうして、人と竜の間に争いが生まれるようになった。
しかし、それでもなお、竜と共存しようとする者たち も存在した。
神竜が転生する時、人と竜の運命は再び交わる という。それは、和解の道を示すのか、それとも新たな争いの火種となるのか──。
世界の未来は、神竜とともに決まるのかもしれない。
それは誰にも分からない。
編纂者
アヴァンシア・ウィングロード