短編シナリオ「ネッキ(フィンランド河童)」夏休みに父ユリアンと湖畔のコテージに泊まりにきたシルヴィ。
シルヴィは湖畔で泳ごうと水着姿で歩いている。
すると湖畔から美しい歌が聞こえた。
湖畔では美しい青年が歌っていた。
彼はシルヴィの存在に気付き、彼女に微笑む。
シルヴィは美しい青年の笑顔に呆気に取られ、思わず顔を赤らめてしまう。
シルヴィ「あっ…!
邪魔してごめんなさい!
素敵な歌が聞こえたから、つい…。」
ネッキ「そんな風に言ってもらえるなんてうれしいな。
この辺じゃ見ない顔だね?観光客?」
シルヴィ「そうなの。
あっ私はシルヴィ。あなたの名前は?」
ネッキ「うーん…ナイショ」
シルヴィ「えぇ~!?」
ネッキはシルヴィに近づく。
ネッキ「もっと仲良くなったら、教えてあげる。」
シルヴィ「あ…うん…」
シルヴィははにかみながら答える。
シルヴィ「えっと…あなたはここに住んでるの?」
ネッキ「そう。生まれた時からずーっとここ。嫌になっちゃうよ。
こんなとこからさっさと抜け出したいのに…。」
シルヴィ「そんな!とっても素敵な場所じゃない!」
ネッキ「僕にとってはそうじゃない…。ここの人達は、みんな僕の事が嫌いなんだ…」
シルヴィ「!
……それは…とても辛いね。」
ネッキ「うん……。
僕、ずっとひとりぼっちなんだ。
だからこうして君と話せて、すごくうれしくて。
……でも、こんな話を聞いたら、もう僕なんかと話したくないよね。」
シルヴィ「あ…えっと……
…もし良かったら…私と友達にならない?」
ネッキ「!?
話聞いてた?
僕、みんなから嫌われてるんだよ?
そんな奴と友達なんて…」
シルヴィ「そんなの関係ない。
私はあなたの事とても素敵な人だと思ったもん。
ねぇ、友達になってくれない…?」
ネッキ「ありがとう…シルヴィ…。でも…」
ネッキはシルヴィの耳元で囁く。
ネッキ「僕は友達よりーーー」
シルヴィ「……えぇ!?」
シルヴィは顔を真っ赤にする。
ネッキ「冗談だよ!」
シルヴィ「ひ…ひどいからかったの!?」
ネッキ「はは!ごめん、ごめん。
ねぇ、泳ぎに来たんだろ?
こっちに来なよ。冷たくて気持ちいいよ。」
シルヴィ「うん……ねぇ
名前、教えてくれないの?」
ネッキ「……ここまでおいで。
そうしたら教えてあげる。」
シルヴィ「……!うん!」
シルヴィ「キャッ!?イヤ!やめて離し…」
バシャバシャバシャッ!バシャ…ッ!バシャ…
……………
ユリアン「シルヴィー!おいシルヴィー!
!」
シルヴィのバックを見つけるユリアン。
辺りを見回すと、釣り道具を持った老人が現れる。
ユリアン「あの、すみません!この辺で娘を見ませんでしたか!?
大学生くらいでショートヘアーの…。
昼にここへ泳ぎに行ったきり帰ってこないんです!」
老人「そりゃあ…お前さん、ネッキの仕業かもな。」
ユリアン「ネッキ…?」
老人「湖に住む水の精霊さ。
美しい歌で人間をおびき寄せて、湖の底に引きずり込むんだ。」
ユリアン「……ッ!こんな時にバカげた迷信を!」
老人「本当さ。
ネッキの歌が聞こえたからあたしゃ釣りができなかったんだ、ホラ」
ユリアンに空のバケツを見せる
ユリアン「……クソッ!」
振り返り別の場所を探そうとするユリアン。
…………
ネッキはぐったりとしたシルヴィを抱えている。
ネッキ「あぁシルヴィ……
これで僕達はずっと一緒だね。」
シルヴィが虚ろな目で目覚め、ネッキに愛おしそうに触れ、彼にキスをする。
シルヴィ「もう…ひとりぼっちじゃないよ……
ネッキ」