長義の同僚「――えっ。清麿が来てるのか」
「何。誰」
もうすぐ終業というタイミングで、長義が自身のスマホを見て珍しく声をあげた。そしてお約束の「寝そべる姿勢」から身を起こして、スマホの画面に向かって親指を動かす。
誰って? きよまろ? 知り合い?
「うん。同期なんだけど、出張でこっちに来てるから寄るって、……もう、いつも急なんだから……」
「へえ……。長義の同期……。なんでわざわざ連絡を?」
「だから、出張でこっちに来たんだって」
「飯食いに行くのか?」
「そうだねえ……。せっかくだし、行けたらいいかな……」
「なんで? そいつ、長義に何の話があるんだ?」
「さあ……? 行けばわかるんじゃない?」
「おかしいだろそんな急にあんたに話があるとか!」
「うるっさいな! メッセージが打てないし、お前何なんだよ!」
スマホを机に置いて長義がこちらに手を伸ばす。目つぶしでもされそうないきおいに思わず防御の構えを取ったとき、長義の背後にものすごく、ものすごーーく華やかな人影が現れた。
「わあ長義、楽しそうにしてる」
「あっ。清麿。本当に来たんだ」
「この人がキヨマロサン……」
防御の構えのまま棒読みで言ったら、キヨマロサンはこてんと小首をかしげて(めちゃくちゃかわいい)
「そうだよ。始めまして。きみは、長義の……?」
「トモダチですっ」
「隣の席のへんな同僚だよっ」
「仲良くしてくれてるんだ。長義、めんどくさいとこ、あるでしょ」
「めっちゃ面倒臭いですっ。でも、仲良くシテマスっ」
「国広、あとで絶対絞める」
「いたあっ」
「ふふっ。長義、資材部にいたころより楽しそうじゃない。いいね」
こめかみをグーでごりごりと挟まれて涙目になっていると、キヨマロサンはすごくふんわりと笑った。
「清麿……」