[ミマモ]砂漠に散らばる遺物 ある日の、ゴルトオール城下町から離れた砂漠のとある場所。
午後の、まだ暑い中、画家のピクチャンは、この砂漠のとある場所に散らばっていた骨を観察していた。
「ふむふむ……別に新しいわけでもなく、太古の化石ってほど古くもない。一体ここでは何が起こったんだろうにゃあ……」
見てみると動物の骨と思われると推測できるものも見かけはする。
ラクダ、キツネ、ネズミ……。
だがそれらに限ったものでもなさそうだ。
ピクチャンは素手で触れはしなかったが、そこには明らかに自分の持っている「もの」と同じ形をしていると推測できそうなものもあった。
別にこの場所にあったような真相を「確実」に知りたいとは、とても気になりはしつつも、もし解明が難しいのならそれでいいと考えていた。
もちろん、それを知ったら知ったで、また素晴らしい視点を得ることはできるだろうが、今はふと浮かんだ、この空間に漂う「絶望」も描いてみたかった。
「ふふふ……夜になったら、またここに来てみようかにゃあ。きっと良い絵になる」
「誰がニヤニヤしてるかと思ったら、猫みてえな画家かよ」
「ん?」
ピクチャンの背後から声が掛けられた。
振り返ると、この砂漠のある地点の地下に住む、ゴーレムのマミーがいた。
「やあ、チミか。猫みてえなゴーレム。どうしたの?」
「……まあ、俺も猫みたいなヘッドホン愛用してるけどさ。それは置いといて、どうしたもこうも、骨を見てにやにやするなよ、気色悪い」
「ごめんごめん。確かに傍から見ればそうだよねえ。でもちょっと見てみたくなっちゃった。誰の骨で、何があったんだろうにゃあ……って」
「やっぱりお前、ちょっと……いやそれとも探偵に頼まれたりしてんの?」
「いんや。ぼくの興味だよ?」
「おまえ結構こわいぞ……」
ピクチャンはそれからもじっと骨を見ていた。
一体何があったのだろうか。
大規模な爆発とか、何か事故のようなことでもここであったのだろうか。
それとも、大規模なキャラバンが一斉に飢え死にしたのか。
もう少し行けば城下町に着けたかもしれないが、必ずしも彼らがいた時に、城下町が食糧に余裕のある状態だったとは限らない。
長いスパンで考えれば、この砂漠にもいろいろなことがあったかもしれない。
自分が生きていた間のことを遡るだけでも、たとえば「絶望の病」の蔓延や「リビングデッドパレード」の時は、ゴルトオールもあの城下町もそれどころじゃなかっただろう。
悩んだ末、ふとピクチャンは気さくそうにマミーに聞いた。
「きみさ」
「なんだよ」
「ここで何があったか、分かったりしないかにゃあ?」
「そ、そんなの俺は知らないよ。目が覚めた時にはこうなってたんだから」
「ほう、そうかい」
「俺だって、まあ別に骨には興味ないけど、どうにかしたいのはやまやまだよ!」
「この近くには俺の倉庫の入口もあるし! でも量は多いんだよ! 片付けられねえし、きっと勝手に片付けちゃいけない気もするし……」
「確かに、これは一大工事をしないと片付かないよねえ。国として考えても、いくらエルエルル王のような素晴らしい為政者がいても、予算をさくだけのメリットがあるかは分からない」
「その辺のことはしらねーけどな……砂漠は広いし、通行の邪魔にならないよなー」
ピクチャンはふと思い出したことあり、それをマミーに言った。
「以前、砂漠でゴーレムの開発実験をしたと聞いたことがある」
「な、なんだよ、いきなり」
「きみは、その時のことについて、なんか知ってることはあるかい?」
「こっちが知りたいわ! 何をもって、俺やマムーを、こんなに寂しいところに埋めやがったのか分からねえし!」
「ふむ、そうか」
ピクチャンは再び、骨がたくさん集まっているのを見る。
「何があったんだろうにゃあ、わくわくが止まらない」
「やっぱりおまえこわいよ」