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    霜花(しもか)

    @kirina_hgrkuri

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    霜花(しもか)

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    森の行き止まりでキュオーンが「記録の魔女」に追い詰められるお話です。
    ※Ver6.01以降の内容のネタバレ及びかなりの自己解釈・捏造設定による表現あり

    #ミマモロール
    mimamorole

    [ミマモ完結版ネタバレ注意]記録の魔女に追い詰められるウェアウルフ これは、昔の話。
     迷いの森と呼ばれることもある、「フルシュポスケ」の中にある、とある花畑で、ウェアウルフの子供であるキュオーンは焦っていた。
     
     足元には絵本の妖精が出てきそうなくらい、あたりには美しい花が咲いているが、その空間は高く太い幹絡み合う根を持つ木々に囲まれ、ほぼ行き止まりであるという点で、今のキュオーンにとっては苦難以外のなにものでもなかった。
     
    「やあ、かわいいわんちゃん。ここで会えるなんて偶然だねえ」

     今キュオーンの目の前にいるこの女性……「記録の魔女」メタリカは、自分を保護してくれた「希望の魔女」シュトラールの親友だ。
     
     キュオーンはある雨の日に一人で倒れていた時シュトラールに保護され、心の中ですっかり彼女を溺愛していた。
     対して、あるものに興味を湧き始めるとしつこく追うらしいこのメタリカという魔女は苦手だった。

     朝、メタリカが家に来るとシュトラールに言われ、あらかじめキュオーンは森の中へ姿をくらまそうとしていたが、結局まだシュトラールの家へ向かっている途中らしいメタリカに出会ってしまった。
     というより、どうやら彼女はキュオーンの気配を察知してこの花畑へやってきたようだ。
     
    「な、なんだよ……ぼくをいじめたいのか?」

     キュオーンは、両手に持っている小さなナイフをぎゅっと持ちながらメタリカを睨む。

    「やだなあ。私はそんなことはしないよ。ただ純粋に君に対して、とてもとても興味があるだけさ」

     対してメタリカはそう、真剣なまなざしを向けて言った。
     
     「記録の魔女」の興味が、普通でないことはキュオーンも察することができていた。

     これは普段からシュトラールが「希望の魔女」として、村にある廃村に対して異常な形で心身を貢献しているのを近くで見ており、それと同じことだと思うところもあったからだった。

    「私は結構旅してきたんだけど、君のようなマモノをよく見てきたものさ。だけど狼男に関しては、オトナは見たけど子供は初めて見るんだ」
    「……だからなんだ。なにがいいたい?」
    「触っていいかい? 撫でてみていいかい?」

     メタリカは一歩、キュオーンに近づいて言う。
     
    「君の耳と尻尾に」
    「な、なんだよおまえ……きもちわるい」
    「単純に触ってみたいんだよ。絶対かわいいし、その毛並みは気持ちいいに決まってるじゃん」

     キュオーンは護身用のナイフを持って見せて威嚇し続けていた。
     
     しかし、触られるのは嫌だからと言って、シュトラールの親友である彼女を傷つけるわけにはいかない……なんて考えていた。
     とにかくキュオーンはこの場から逃げたかった。
     持ち前の足で、彼女の横をすり抜けるように逃げたかったが、メタリカの足もまた速い。
     どうすれば……。
     
    「ちょっと、メタリカ! こんなところにいたの?」
    「あ……」

     キュオーンが困っていた時、この花畑の入口から別の女性の声が聞こえてきた。
     
     本来なこのような花畑に似合いそうな、赤ずきんが似合う可憐な少女だった。
     
    「う、シュトラール……いや、それはその……」

     シュトラールが来て、彼女が珍しく怒っているような表情を見せていることに、メタリカはたじろぐ。

    「まさか、うちのわんちゃんをちょっかいだしたりしていないでしょうね」
    「興味があったんだよ。ただそれだけ」
    「あなたが言う『興味』は、人を怖がらせるものだから、その言い訳は猶更通じないわよ」
    「はは……まいったな。お前に言われるとなっちゃここは引かないとなぁ……」

     そう言って、メタリカはわざとらしく、降参するように両手を上げて見せた。

    「もう彼を追い詰めるようなことはしないでよ」
    「分かったよ。ごめんね、わんちゃん。怖い思いをさせちゃったかな」
    「……」

     メタリカから謝られても、キュオーンはただじっと睨んで黙っていた。
      
    「ああ、嫌われちゃったかな」
    「メタリカ。私はとにかくキュオーンを安心させてあげたいの。こんなことはしないでちょうだい」
    「うん……分かったよ。またね、キュオーンくん。じゃあシュトラール、私は先にお前の家に行くから」

     そう言って、メタリカはさっさと花畑を出た。
     
    「……ごめんね、キュオーン。あの人の嗅覚、もしかしたらあなたより鋭いかもしれないのよ」

     メタリカの背中を見送って、それからシュトラールはため息をついてキュオーンに言った。

    「……シュトラールはわるくない。きみが謝る必要はない……」

     キュオーンはナイフを腰につけていたポーチに仕舞いながら言った。
     
    「それに……あいつも悪くないって思ってる……あいつだって魔女だから……」
    「魔女だから……か」

     花畑の中で、俯いていたキュオーンに対し、シュトラールはどこか複雑そうな表情を浮かべていた。
     
     そんな彼女に、キュオーンは何か励ますような、それともただ自分の考えていることを伝えたいような、気がしたが口からは何も出てこず、ただ黙っていた。
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