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    きって

    @kitto13

    @kitto13
    いかがわしかったり、暗かったりする
    タビヴェン🧦🐣

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    きって

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    交換日記する話


    アカジャすごかったね……

    #タビヴェン
    taviven.

    いつも顔を合わせて話しているが、こうやって文字越しで会話するのは違った趣があるな。こちとらペンを握ったのも久しぶりでいまいち自分の筆圧が思い出せない。そりゃあ退治報告書をつくって依頼人なり、行政なりに提出することはあるが、専らパソコンからの出力だ。手書きを求められる事なんて署名ぐらいなものなのに、長文を書けなんて時代錯誤にも程がある。それでもお付き合いしましょうの返答が、交換日記から始めましょうなんだから致し方あるまい。お前のペースでやっていくよ。だけど前述の通り、不慣れなんだ。誤字脱字は大目に見ろよ。わかったな。
    とりあえず何を書けばいい?夕飯のリクエストか?あれ、あれ食いたい。前作ってくれた、キャベツのみじん切りにマヨネーズとか入れたすっぱいヤツ。ケンタで売ってるやつ。自作できるんだなあれ。あとオムライスにピヨちゃんを描け🐤。巷で流行ってるらしいぞ。
    いつもご苦労。 タビコ


    知り合って日の浅い男女が交換日記無しに交際するなど言語道断。そもそも我輩は了承などしておらんからな。日記の内容如何によってこの話は無かったものとする。
    我々の行動時間は異なるのだ。連絡手段は多いに越したことはない。メールも通知音が煩わしいことだってあるだろう。都合のいい時に読め、好きな時に返事ができるのが、書簡の長所なのだ。だからと言って放置するのは怠慢だろう。日記の引渡しが3日以内になかった場合もこの話は白紙に戻す。貴様がいつ音を上げるか見物だな。
    Ps.キャベツのみじん切りとはコールスローのことか??貴様はそろそろ料理の固有名詞をおぼえるがいい。我輩は毎食献立を告げている。オムライスは、ただのオムライスなら作ってやる。
    VENTRUE


    お前はそんな字を書くのだな。知らなかったが筆記体みたいだ。インクの濃淡が光の加減で色合いが変わる羽根に似て美しいな。
    何だか私は飽きっぽいと思われているようで心外だ。しつこさは折り紙付きだと言うのに、相互理解がまるでなってない。そういった意味でこの日記は有用性がありそうだ。大いに活用しようではないか。
    料理名を覚えろって言われても、私は料理を忘れてない訳だから覚える必要性はなくないか?お前の話を聞いてない訳では無い。なんなら料理が乗っていた皿まで思い出せる。皿ごと覚えているのだから名前を覚えて何になるんだと疑問なんだ。コールスロー?とかいうやつは青い円筒形の器に入ってたな。それは覚えてる。
    日記と言うからには今日の出来事でも書いておくか。今日の戦果は5勝1引き分けってところだ。(最近シースルーの靴下があるが視認性に些か問題がある)
    いつもご苦労。 タビコ


    表紙にでかいひよこのシールが貼ってあるが、あれはなんだ??全く貴様と言う奴は子どもじみたやつだな。
    羽根ペンをやる。我輩の左の羽から誂えた品だ。どうせ貴様はインクなど持ち合わせていないだろうからついでに付けておく。書く時はインクに浸しながら書くのだぞ。使い終わったら水で洗って紙や布で拭け。ペン先が潰れたら整形しなおすから我輩に言うといい。これで少しは気品のある文字を書けるようになるだろう。
    料理の見た目だけ覚えていても、作る側からすれば材料と調理法から料理を推測する手間があるのだ。少しは頭を使うがいい。そもそも本当に料理を覚えているのか??では先週作ったにんじんしりしりが入った器を当ててみろ。にんじんしりしりとは細切りをした人参に炒り卵を和えた料理で……あー!なぜ我輩が貴様の言語能力に合わせた物言いをせねばならんのだ!甚だ不愉快極まりない。VENTRUE


    ひよこかわいいだろ??春の交通安全週間とかで駅前で配られてたのを貰ってきた。小さいのもあるから貼っとくぞ。🐤🐤🐤...♪*゚この大きさだったら爪に貼ったりするのにいいんじゃないか?残りを挟んでおくから好きに使え。
    羽根ペン、初めて使ってみたが万年筆に似て味のある書き心地がするな。コツを掴むのに時間がかかりそうだがこう見えて手先は器用なんだ。すぐ要領は分かるはずだ。
    にんじんしりしりとやらは確か薄緑の平皿だったかな。あれも美味かった。不思議なものでお前と暮らすようになってから野菜を食べるのが嫌ではなくなったな。昔はサラダなんかで無理矢理食べるかサプリに頼ってたが今の方が頗る体調がいい。お前は栄養士とかに向いてるんじゃないか?
    そういえば支払いを頼みたいのだが持ち合わせがない。カードを挟んでおくから適当に引き出して払っといてくれないか。明日までだ。番号は9243。
    いつもご苦労。タビコ


    貴様!何なのだあれは!いきなりきゃっしゅかーど?とやらをはさみおって!電話してもでないし恐ろしいではないか!訳が分からぬから我輩立て替えたが、このような貴重品は自分で管理しろ!お前の危機管理能力の低さには程々手を焼いているが程度というものがあるだろう!?
    VENTRUE



    仕事中に何度も電話してくるんじゃない!お前のせいで一人獲物を取り逃したんだぞ!埋め合わせはしてもらうからな!!
    別にお前に預けたって全額引きだすようなことはしないだろ??信用してるんだからそんな些細なことでぴーぴー泣くな!
    毎日の食費分と合わせて立て替え分も置いておくぞ。余った分は駄賃だ。受け取れ。
    いつもご苦労。タビコ。



    信用……?!いや、軽々しく他人を信用となど……うむ……とにかく、今後軽率な行為は控ろ!
    意外にも羽根ペンを使いこなしているようではないか。手入れを怠らなければ長く使えるものだ。その調子で励むがいい。
    (言い忘れていたがにんじんしりしりの器は正解だ。本当に覚えているのだな)
    VENTRUE















    深い睡眠の最中ヴェントルーは微かな違和感を覚えうっすらと目を開けた。枕元の時計は正午過ぎを指し就寝から2、3時間ほどしか経っていないことを告げる。もう一度寝直そうと掛け布団を口元までひき上げるとコンコンコン、と棺桶の蓋をノックする音がした。眠気に任せて無視しようとしたヴェントルーだったがゴトン、と蓋がずれる音がしてタビコが顔をのぞかせる。
    「ヴェントルー!これ見ろ!」
    カーテンが締め切られた部屋でも昼間は眩しい。ヴェントルーは手で顔を覆って小言を言おうと口を開けたがタビコが手にした物を見て「あっ」と声を出した。
    「懐かしいよなこのノート。確かあと5,6冊あったんじゃないかな」
    タビコはそう言ってパラパラとノートを捲る。表紙に貼られたヒヨコのシールは日に焼けて色褪せてはいるが、その存在感は変わらないままだ。タビコはまっすぐに腕を伸ばしてノートを掲げ、朗々と日記を読み上げる。
    「『今日作ったケーキはお前の口に合っただろうか? VENTRUE』!確か私の誕生日に3段ケーキを作った時のじゃないか?」
    「タビコ!!やめっ……」
    「そうそう、お前押し花なんかも挟んだりして、私も真似しようとしたらノートがべたべたになったりしたなあ!!」
    「タビコ!!」
    ヴェントルーは棺桶から飛び出してノートを奪い取ろうとしたが、するりとカーテンの外側に潜り込んだタビコは燦燦と照る日光の中、高らかに日記を読み続ける。
    「あ!レイトショーに誘ってるぞお前!『この映画は昔観たが傑作だ。お前と観てみたい』これ途中で私がいびきをかきだして追い出されたんじゃなかったか?」
    「タビコ!!」
    ヴェントルーはカーテンごとタビコを抱え込んで何とかその悪行を止めさせた。腕の中でくつくつと震えるタビコは相も変わらず「懐かしいなあ」と繰り返す。
    「どうして交換日記やめたんだっけな?」
    「……それはあれだ。今の居宅に移り住む時、荷物に紛れて有耶無耶になったのだ」
    「ああ!それでホワイトボードなんかを使うようになったよな!」
    そうだったそうだった、とタビコは納得したふうに頷いた。
    「他のノートも読み返したいな。どこにある?」
    「……それが分からんから今に至っているのだ」
    「探すぞ!」
    「……とりあえず、我輩寝てもいいか??」
    「えー、じゃあ起きたら一緒に探すぞ!」
    タビコは渋々引き下がり、カーテンの外側から出てきた。どさくさに紛れてノートを回収しようとしたヴェントルーだったが、タビコはノートをしかと握って離さず、愛おしそうに表紙を撫でる。
    「あの頃は必死だったんだよ私も」
    「必死?!貴様が?!」
    「そりゃあそうだよ。靴下だけじゃ心許なくて仕方がなかった」
    タビコはそう言ってふわりと笑う。
    「文章なんて考えるだけで頭が痛くなるのに、我ながら頑張って書いていたな」
    「……それは悪い事をした」
    「いいや!こうやって思い返せるのもいいものだ」
    タビコは上機嫌に言う。
    「昔は過去を省みることなんて時間の無駄だと思っていたが、積み重なって今があるんだ。1ページ1ページが重たいよ」
    タビコはヴェントルーの手を引いて棺桶まで先導した。
    「おやすみヴェントルー。良い夢を」
    ノートを片手にタビコは部屋から出ていった。ようやく棺桶に収まったヴェントルーはそっと枕の下に手を差し入れる。そこにある薄く頑丈に作られた箱には年季のはいったノートが6冊入っている。目が覚めた時、自分はどう取り繕えばいいのか、はたまた正直に、これ以上大切なものを増やしたくなかったと言うべきなのか思案しながら、ヴェントルーはゆるゆると穏やかな眠りにつく。



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    Replies from the creator

    きって

    MOURNING初夜失敗

    前半はTwitterに載せてた内容と同じなので読み飛ばしてください。
    えろくもないしほぼ会話文。
    リビングへと続くドアは細く開いたままになっている。開けっ放しはやめろと何度諌めても「どうせまた開けるんだからいいだろ?」と素っ頓狂な顔でタビコが言うものだからヴェントルーはその悪癖を直すことをとっくの昔に諦めていた。それでも開いたままのドアが目に入る度にその隙間を無くしてはいたものの、今日は全くその気になれない。
    タビコは今シャワーを浴びているはずだ。湯浴みが終わればあのドアからこの寝室に入ってくる。その事が恐ろしいのと待ち遠しいのとでヴェントルーの緊張は最骨頂に達していた。なんの前触れもなく寝室に入ってこられるよりかはドアの隙間からタビコの気配が伺えた方がいい。そう思って敢えて視界の端でリビングの様子を見てはいるが、結局はざわつく胸が抑えられず最終的には壁の一点を見詰めるのに留まった。ヴェントルーは落ち着きを取り戻そうとベッド脇に置いたルームライトに目を向けた。家電量販店で急遽手に入れた小ぶりなライトはリラックス効果だとかムード演出だとかそんな謳い文句が箱に書かれていて、ヴェントルーはむずむずとした心地でそれを手にしてレジへと向かった。アロマフューザーにも手を伸ばしかけたが、それはやり過ぎだろうとやめにした。今はそれを仇かのように睨み、ヴェントルーはベッドに正座する。
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    きって

    CAN’T MAKE死ネタ 卵を孵す話
    抱卵タビコに小さな卵を渡された。私が産んだんだと言うタビコに奇っ怪な冗談を言うものだと鼻で笑って見せると、至極真剣な顔で本当だと言うものだから面食らう。卵は一般的な鶏卵ぐらいの大きさで心做しか青みがかった殻を持つひどく冷たいものであった。
    「温めるのはお前に任す。孵るまで割れないようにするんだぞ」
    それじゃあといつも通りにタビコは仕事に向かって私と卵2人だけが家に残った。温めろと言われても吸血鬼の体温では具合が悪い。かと言っても湯で煮立たせる訳にもいかず、途方に暮れた私は野外の椋鳥に助けを求めると丁度産卵期だとかでついでに温めてくれるという。見返りとしてベランダの一角に巣作りと当面の餌やりを保証してやる。巣に置こうとするとそこには同じ様相の卵が4つ並んでいて自分の手元の卵と見比べるとこのまま置いてはどれがどれだかわからなくなるだろうと思いあたる。部屋にあったサインペンを片手に少し考え靴下のイラストを描いて、椋鳥の番には台所にあったイリコを分け与える。そうやって始まった抱卵は椋鳥の雛が孵化した後も終わることはなく、椋鳥の番と雛達はとっくに巣立って行ってしまった。仕方が無いので羽を入れた巾着袋にそっと卵を入れ、素肌に触れないよう首から下げる。最早手遅れなんじゃないかとタビコに聞いてみても彼女は慌てるんじゃないという。
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