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    #タビヴェン

    taviven.

    きって

    MOURNING初夜失敗

    前半はTwitterに載せてた内容と同じなので読み飛ばしてください。
    えろくもないしほぼ会話文。
    リビングへと続くドアは細く開いたままになっている。開けっ放しはやめろと何度諌めても「どうせまた開けるんだからいいだろ?」と素っ頓狂な顔でタビコが言うものだからヴェントルーはその悪癖を直すことをとっくの昔に諦めていた。それでも開いたままのドアが目に入る度にその隙間を無くしてはいたものの、今日は全くその気になれない。
    タビコは今シャワーを浴びているはずだ。湯浴みが終わればあのドアからこの寝室に入ってくる。その事が恐ろしいのと待ち遠しいのとでヴェントルーの緊張は最骨頂に達していた。なんの前触れもなく寝室に入ってこられるよりかはドアの隙間からタビコの気配が伺えた方がいい。そう思って敢えて視界の端でリビングの様子を見てはいるが、結局はざわつく胸が抑えられず最終的には壁の一点を見詰めるのに留まった。ヴェントルーは落ち着きを取り戻そうとベッド脇に置いたルームライトに目を向けた。家電量販店で急遽手に入れた小ぶりなライトはリラックス効果だとかムード演出だとかそんな謳い文句が箱に書かれていて、ヴェントルーはむずむずとした心地でそれを手にしてレジへと向かった。アロマフューザーにも手を伸ばしかけたが、それはやり過ぎだろうとやめにした。今はそれを仇かのように睨み、ヴェントルーはベッドに正座する。
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    もちごめ

    DONE過去に書いたタビヴェンの短編3種です。支部にあげているものと内容も同じです。
    ちょこっとタビヴェン【バースデーケーキにロウソクふたつ】
    ※2021年タビコちゃんお誕生日おめでとう
    ※靴下ハントはじめて2年目設定
    ※家庭事情捏造あり

     それはいつも通り靴下ハントを終えて帰宅した時のことだった。今日は随分と不猟な方で、帰宅途中のタビコはあまり良い気分ではなかった。だがそれは、玄関のドアを開けた瞬間、変わることとなる。
    「・・・帰ったか」
     そこにはいつものようにエプロン姿のヴェントルーの姿があった。頭にはこれまたいつもと同じようにきっちりと三角巾が結ばれている。ただ違うのは、机に置かれた代物ひとつである。普段と同じく食事が用意された机の真ん中を、小さなホールケーキが陣取っていたのだ。
    「手を洗ってこい」
     素っ気なくそう言うヴェントルーだったが、その表情にはどこかそわそわとした落ち着きのなさが読み取れる。タビコは靴を脱ぎ、その男の顔とケーキを交互に見た。ちょうどふたり分ぐらいのサイズのケーキは、買ってきたものではないだろう。その証拠に、シンクには泡だて器が入ったままのボウルが置かれている。それを認識した途端、にまーっとタビコの口元には緩いカーブがつくられた。そして、再度手を洗うように促されて、はいはい、と手を洗って戻ってくる。
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    きって

    CAN’T MAKE死ネタ 卵を孵す話
    抱卵タビコに小さな卵を渡された。私が産んだんだと言うタビコに奇っ怪な冗談を言うものだと鼻で笑って見せると、至極真剣な顔で本当だと言うものだから面食らう。卵は一般的な鶏卵ぐらいの大きさで心做しか青みがかった殻を持つひどく冷たいものであった。
    「温めるのはお前に任す。孵るまで割れないようにするんだぞ」
    それじゃあといつも通りにタビコは仕事に向かって私と卵2人だけが家に残った。温めろと言われても吸血鬼の体温では具合が悪い。かと言っても湯で煮立たせる訳にもいかず、途方に暮れた私は野外の椋鳥に助けを求めると丁度産卵期だとかでついでに温めてくれるという。見返りとしてベランダの一角に巣作りと当面の餌やりを保証してやる。巣に置こうとするとそこには同じ様相の卵が4つ並んでいて自分の手元の卵と見比べるとこのまま置いてはどれがどれだかわからなくなるだろうと思いあたる。部屋にあったサインペンを片手に少し考え靴下のイラストを描いて、椋鳥の番には台所にあったイリコを分け与える。そうやって始まった抱卵は椋鳥の雛が孵化した後も終わることはなく、椋鳥の番と雛達はとっくに巣立って行ってしまった。仕方が無いので羽を入れた巾着袋にそっと卵を入れ、素肌に触れないよう首から下げる。最早手遅れなんじゃないかとタビコに聞いてみても彼女は慌てるんじゃないという。
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    きって

    DONEタビさんの喫煙があります
    対吸血鬼用の煙草は非常に廉価で下等吸血鬼避けとして広範囲に使用できるので常備している退治人は多い。娯楽と実用を兼ね備えて愛飲している者も多く、私のかつての師匠もそうだったらしい。もっとも家族が増える時にすっぱり辞めてしまったと言っていたから師匠の喫煙を見るのは仕事中数える程だった。
    「煙を肺に入れきって吐く息は透明にする方が喫煙家としては粋だけど、退治人としては煙は残したまま吐いた方が効果が大きい。ままならないね」
    困ったように笑う元師匠はそう言って煙をくゆらせていた。
    月に1回ベランダで煙草を吸う。虫除けだけなら先端を長時間炙って線香みたく焚けばいいだけだが、現場でそんな悠長なことは言ってられず吸う必要性に駆られることは往々にしてある。ライターの調子をみるため、煙草の吸い方を忘れないため、師匠のことを思い出すため。いろんな理由を作ってベランダで煙草に火をつければ独特な刺激臭が辺りに広がり、紫煙が夜空に吸い込まれる。そんなもので徒に寿命を縮ませるなと以前ヴェントルーに言われたことを思い出して笑いが込み上げてくる。煙草よりなにより私の余命を減らしているものは多々あるだろう。
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