久々に死んだ。迂闊だった。手練の退治人が徒党を組んで小賢しくも策を講じて来たらしく、同時に放たれた聖釘の内何本かを避けることができなかった。咄嗟に心臓の位置を変えて即死は免れたが命からがら飛んで逃げた。居城との距離を考えると同時にあの小娘の家を思い浮かべた自分が癪に障った。しかし選択肢は限られていた。
タビコの部屋のベランダはいつも通り閑散としていた。そのことに訳もなく安堵を覚えて私は死んだ。窓をノックする余力もなかった。じわじわと灰になる手を見ながらベランダの隅にあったプランターを見やった。吸血鬼はトマトを好むという生半可な知識を身につけたタビコが「収穫できたら食べさせてやる!」と苗を買って来たのだった。結実はしたもののまだ実は青い。収穫時期に間に合うだろうか、と思ったところで私の意識は途切れた。
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