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    久しぶりの種赤
    タイトル通り寝てる赤に××する種の話

    #種赤
    seedRed

    寝てる赤也にキスをする種ヶ島の話.

    ※時間軸は適当だけど種赤がダブルス組んだあとのお話。


     さて、どうしたもんやろか。
    気持ちよさそうに船を漕ぐ後輩を前に俺は小さく呟いた。
    後輩──もとい、切原赤也を見つけたのは偶然やった。
    消灯時間が差し迫った宿泊施設内を一人歩いていると誰も居なくなった談話室で赤福は静かに眠っていた。

    「赤福……?」

     名前を呼んでみても返事はなく、ただ規則的な呼吸音が返ってくるだけ。どこか具合でも悪いのかと顔を覗き込めばそこには安らかな寝顔があるだけやった。

    「赤福ー」
    「……」
    「こんなとこで寝たら風邪引くでぇ?」
    「……」

     何度声を掛けても赤福は目を覚まさへんかった。
    それもそうやろう。普段から寝付きの良さでは誰にも負けないと豪語してるコイツのことや。
    声を掛けたくらいで起きるはずもない。
    せやったら身体を揺すって無理矢理にでも起こせばええだけの話なんやけど、目の前のコイツがそうさせてくれへんかった。

    無防備に投げ出された白い四肢が、呼吸に合わせて上下する胸が、正常な判断を狂わせる。

    例えば、薄く開いた唇に舌を捩じ込んだら赤福はどんな反応をするやろうか。怒る?それとも怖がる?


    「赤福」

     無意識のうちに赤福の白い頬に手が伸びていた。
    指先に吸い付く滑らかな肌。触れた箇所から俺の体温が移っていくような気がして言い様のない征服感が腹の底でふつふつと沸き立つ。
    そのまま吸い寄せられるように顔を近づけると形のいい唇にそっとキスを落とした。

    「ん……」

     漏れ出た声に心臓がドクリと跳ねる。起こしてしまったやろか?反射的に顔を離して様子を窺うが、そこには先程と何も変わらない無防備な寝顔があるだけやった。

    「……っ、起きないお前が悪いんやからな」

     半ば言い訳じみた言葉を吐き捨てると俺は再び赤福の唇を塞いだ。
    小さく開かれた隙間から舌を差し込み、ぴちゃぴちゃと水音を立てて口腔内を犯す。
    歯列をなぞって上顎を舐め上げると赤福の身体がぴくりと震えた。

    「んんっ……ふ、ぁ……」

     鼻にかかった赤福の甘い吐息に心臓が激しく脈を打つ。意識がない後輩にこんな劣情を抱くなんてどうかしとると自分でも思う。それでも止められへんかった。

    呼吸さえも飲み込むように深い口づけを繰り返せば、その度に赤福の身体が小さく跳ねるのが可愛くてもっと虐めてやりたい衝動に駆られる。
    罪悪感と興奮がぐちゃぐちゃに混ざり合って気が狂いそうやった。

    「はぁ……ぁ……」

     ようやく顔を離すと二人の間に銀色の糸が伝って途切れた。
    飲み込みきれなかった唾液が赤福の口の端からつぅ、とこぼれ落ちる。
    テラテラと光る唇はあまりにも淫猥で俺は目を離すことが出来なかった。
     
    ……あかんな、これは。
    どうやら俺は思ったよりもコイツのことが好きらしい。

    全く、何が守護神や。

    ほんまに……こんなのどうかしてる。


    ***


    「……んぅ……あ、れ……?」

     深い眠りの淵から引き上げられた赤福は舌足らずな声で呟いた。
    状況が理解出来ていないのか数回瞬きを繰り返すとキョトンとした顔で俺を見つめる。
    そんな姿が可愛らしくて思わず笑みが零れた。

    「おっ、やっと起きたか。おはようさん☆」

     俺が声をかけると赤福はハッとしたように身体を起こした。

    「あ、え……?種ヶ島先輩……?え?俺、寝てた……?」
    「あはは、余程疲れてたんやなぁ。何回呼んでも全然起きひんから心配したわ」
    「ええ、マジすか!?うわっ、すげぇ涎垂れてるし……」

     恥ずかしそうに顔を赤くしながら口元を拭う赤福を見てゾクリとした感覚に襲われる。
    もっと虐めてやったらどんな顔をするんやろか?
    そんな凶暴な衝動に駆られながらも俺は平静を装って優しく微笑みかけた。

    「こんなとこで寝とったら風邪引くでぇー?体調管理も大事な仕事なんやから気ぃつけんと」
    「ううっ、すんません……宿題やってたら寝ちゃってた……俺のこと起こそうとしてくれたんすね」
    「おん、何度声かけても起きひんからもう少しで真田でも呼ぼうと思ってたとこやわ」
    「うげっ、やめてくださいよぉ。真田副部長にバレたらぜってーぶん殴られる……」
    「あはは、良かったなぁ。見つけたのが優しい優しい種ヶ島先輩で☆」
    「それ自分で言います……?ふふ、まぁそうっすけどね」

     俺の言葉に赤福は呆れたように肩をすくめると悪戯っぽく微笑んだ。
    俺の劣情にも気づかず目の前で呑気に笑うコイツがなんだか憎らしい。
    せやけど、それと同時に愛おしいとも思ってしまう自分がいた。ほんまに厄介な感情やな。

    さて、これからどうやってコイツを落としていこうか──

    「……種ヶ島先輩?どうしたんすか?」
    「ん?何もないで☆」
    「ほんとっすかー?俺達ダブルス組んだ仲なんだから隠し事はなしっすよ!」
    「あはは、なんやそれ。まぁ、赤福には隠し事なんてせんと、ちゃんと伝えるから安心しぃ」
    「……?なら、いいんすけど……」

     しゃあない、もう少しだけ優しい種ヶ島先輩で居てやるか。


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