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    昨年赤i也の誕生日用に書いたココiスコラボの白赤(+種赤?)のお話。途中までだけどこれ以上書けそうにないので供養します。

    #白赤
    whiteRed
    #種赤
    seedRed

    誕生日に白石君のバイト先に行く赤也君の話。.


     なんで、こんなことになってしまったんやろ。
    俺は目の前の惨状に頭を抱えて嘆くことしか出来なかった。


     話は一ヶ月前に遡る。夏も終わりに近づいたある日の夜、いつものように恋人の赤也クンと電話で他愛もない会話をしていると彼は突然こんなことを切り出した。

    「九月二十五日なんすけど、白石さんバイト休みっすか?」

     九月二十五日──考えるまでもなくその日は赤也クンの誕生日。シフトはまだ出してないけど当然俺は休みを取るつもりやった。

    「赤也クンの誕生日にバイトなんて入れるわけないやん! なんや、そんなこと心配しとったん?」
    「いや、白石さんのことだから予定空けてくれてると思ってるんすけど……出来ればバイト入れてほしいなって」
    「へ? な、なんで……?」

     赤也クンの言葉に俺は思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。
    恋人の誕生日にバイトしろって、まさか俺じゃない他の誰かと過ごす気なん? 俺、赤也クンの誕生日のためにこの数ヶ月必死にバイトしてお金貯めてきたんやけど……?
    想定外の事態に軽くパニックを起こしていると電話の向こうで彼はケラケラと笑いながら続ける。

    「なんか勘違いしてる気がするけど、別に他の予定を入れたいわけじゃないっすからね!」
    「ほ、ほんまに? せやったらなんでシフト入れろやなんて……」
    「それはぁ、誕生日に白石さんがバイトしてる店に行きたいなぁーって思って!」
    「え、えぇ!? なんでまた急に?」
    「だって、白石さんの働いてるとこ見たいって前から言ってんのに一度も遊びに行かせてくれたことなかったじゃん!」

     誕生日なら言うこと聞いてくれると思って、と続ける赤也クンに俺は言葉を詰まらせた。
    そんなこと言われても働いてる姿を恋人に見られるのはなんや気恥ずかしいし……。
    いや、それ以上に問題なのは俺のバイト先に赤也クンを溺愛している幸村クンと種ヶ島先輩が居ることや。
    普段と違う二人の姿を見て赤也クンが惚れでもしたら(幸村クンのギャップは大丈夫やと思うけど)……そんなん、想像するだけで恐ろしい。絶対に会わせたくないっちゅうのが本音やった。器が小さいとか知らん。

    「日帰り旅行とか、いろいろ考えてたんやけど」
    「それよりも今年は白石さんとこのお店がいいっす!」
    「えー……」
    「ねぇ、俺のお願い聞いてくれないの?」
    「うっ……」

     電話越しでも目をうるうるさせて可愛くおねだりする赤也クンの顔が浮かぶ。たく、それをやれば俺が断れないことわかっててやってるやろ……!

    「はぁ……うん、赤也クンがそこまで言うんやったらええよ」
    「え、ほんとに!? やったぁー! 約束っすよ!」

     こうして俺のパーフェクトなバースデープランは早々に崩れ去ったのだった。



     迎えた誕生日当日。

    「そろそろやな」

     時計を確認した俺は誰に言うともなく一人呟いた。
    なんだかんだ言っても恋人の誕生日を祝えることは素直に嬉しい。
    二人きりで過ごせないのは残念やけど、まぁ夜になれば赤也クンを独占出来るしな。
    自然と緩む頬を隠しきれないまま赤也クンを待っていると入り口のチャイムが鳴った。

    「いらっしゃいませ、赤也クン」
    「えへへ、会いに来たっす!」

     ドアを開けると照れくさそうに笑う赤也クンが立っていた。
    その笑顔が可愛くて堪らず頭を撫でると赤也クンは気持ち良さそうに目を細めて擦り寄ってくる。
    ああもう、俺の彼女可愛すぎるやろ!
    今すぐ連れて帰りたい衝動に駆られながらもグッと我慢してる俺を誰か褒めてや!

    「……さて、お客様。お席にご案内します!」
    「ふふ、お願いしまーすっ!」

     実は今日のために“赤也専用お誕生日席”が用意されていた。
    「俺の大事な後輩の誕生日なんだ。皆わかってるよね?」という神の子の一声で店内装飾までもが特別仕様になったのだから恐ろしい。


     席についた赤也クンはメニュー表をパラパラと捲りながら「全部美味しそうで迷っちゃう!」やなんて言って楽しそうにはしゃいでいた。
    その無邪気な姿はさながらファミレスに迷い込んだ天使。
    もう好きなだけ迷ってくれ。というか全メニュー注文してええよ。跡部クンに頼んでどうにかするから。

     一通りメニュー表に目を通した赤也クンはニコニコと眩しい笑顔で写真を指差した。

    「決めた! この、“おーきに☆煌めきココットハンバーグ”ってやつにするっす!」
    「えっ、それは……」
    「すげぇ美味そう! あ、しかも種ヶ島先輩のメニューじゃん!!」
    「あ、うん。それもええけど俺のおすすめは──」
    「えー! 絶対これがいい!」
    「……」
    「ほらぁ、早く注文取ってよ! 俺朝から何も食べてないから腹減って限界っ!」
    「……かしこまりました」
     
     キラキラと目を輝かせながらハンバーグの写真を眺める赤也クンにそれ以上何も言えなかった。

    ……こんなんで嫉妬するなんて俺の心が狭いんやろか?

    釈然としない気持ちを抱えながらも俺はオーダーを伝えるためにキッチンへと向かった。




    ***


     あーあ。白石さん、拗ねちゃった。
    いつもは優しくて完璧人間なのに、あの人たまにああいうところあるんだよなぁ。
    心の中で溜息を吐きながらも俺はこっそりスマホを取り出した。

     実はこの日のために俺はある作戦を考えていた。
    誕生日プレゼントの代わりに幸村部長と種ヶ島先輩にも協力してもらったんだけど……なんとか上手くいきそう。この後の白石さんの反応が楽しみだなぁ。
    そんなことを考えながら俺が密かに笑ったのを白石さんは知らない。



     暫くすると湯気が立ち昇る料理を持った白石さんがキッチンから出てきた。

    「お待たせしました。“おーきに☆煌めきココットハンバーグ”です」
    「えへへ、白石さんありがとうっ!」
    「……」

     白石さんはまだ不満そうな顔をしていた。
    もう、今日は俺の誕生日だってのにいつまで不貞腐れてるつもりなんだろう。

    「すげぇ美味そうっすね!」
    「そりゃよかったな」
    「……」

     こういうときの白石さんってほんと頑固なんだよね。
    いつものカッコいい白石さんは何処行っちゃったんだよって感じ。
    まぁでも、仕事に影響出て怒られたら可哀想だし、たまには俺が折れてあげようかな……。

    「わっ、これ結構熱いっすね! 口の中火傷しちゃいそう……」

     なんて、嘘だけどね。熱々ラーメンの早食いが得意な俺は猫舌とは無縁なんだ。
    ここに丸井先輩と仁王先輩が居たら即バラされてそうけど。

    仕上げに上目遣いで白石さんを見つめる。
    俺にはさっぱり理解できないけど、案外こういうあざといのが好きなんだよね。

    「……っ! 火傷したら大変やから俺がフーフーしたるわ!」

     ほらね。ふふ、ほんと白石さんチョロいなぁ。
    まぁ、こういうところも可愛くて大好きなんだけどさ。

    すっかり機嫌を直した白石さんは仕事中ということを忘れているのか、ハンバーグを一口サイズに切り分けると俺の口元にフォークを近づけた。

    「はい! 赤也クン、あーん」
    「それはやらなくていいから」
    「え、ごめん」
    「ほら、早く仕事に戻らないと幸村さんに怒られちゃうよ?」
    「……急にドライやん」

     だって、食べさせてもらうなんて赤ちゃんみたいで恥ずかしいに決まってんじゃん。
    俺がフォークを奪って食べ始めると白石さんは捨てられた仔犬のような表情を浮かべて渋々仕事に戻って行った。




    ***


    「赤福、誕生日おめっとさん☆」

     白石さんと入れ替わるように現れたのは種ヶ島先輩。

    「種ヶ島先輩あざっす!」
    「おっ! なんや、俺のメニュー頼んでくれたん?」
    「っす! このハンバーグめちゃくちゃ美味いっすね!」

     そう言ってハンバーグを頬張ってみせると種ヶ先輩は嬉しそうに微笑んだ。
    白石さんとはまた違う大人の色気を放つ種ヶ島先輩にドキッと胸の鼓動が高鳴る。
    流石、読モやってただけあってカッコいいよなぁ……。
    そんなことを考えながら見惚れていると種ヶ島先輩はニヤリと口角をあげた。

    「そんなに好きなん?」
    「え? あ、はい! 好きっす!」
    「赤福はほんまに俺のことが好きやなぁ☆」
    「へ!? いや、違くて! ハンバーグが……」

     何言い出すんだ、この人……!
    予想外の言葉に咽せそうになった俺は慌てて水を飲んでハンバーグを胃に流し込んだ。

    「えー、俺のことは好きじゃないん?」
    「そ、そういうわけじゃ……」

     しゅん、とした表情で見つめられて思わず言葉に詰まる。
    うっ……そんな可愛い顔するの狡いよ!
    女子だったら間違いなく落とされてるじゃん。

    「……種ヶ島先輩のことも好き、っすよ……」
    「ほんまに?」
    「う、嘘じゃないっす!」
    「あはは、赤福は可愛ええなぁ」
    「……」

     絶対面白がってるよ、この人。
    俺の考えてることなんて全部見透かされてる気がしてなんだか居心地が悪い。

    「はぁ……そんなことより仕事しないでいいんすか? サボってると徳川さんに──」

     話題を変えようと口を開くと遮るように種ヶ島先輩は俺の頬を優しく撫でた。
    真っ直ぐに俺を見つめる瞳はあまりにも真剣で目を逸らすことが出来ない。
    あれ? なんか今日の先輩、いつもより距離近い……?


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