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    rabimomo

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    rabimomo

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    月鯉全年齢小ネタ
    シブに投げるほどではないのでポイっとな
    ギャグとか軽いノリを書くのが下手すぎでしたね…

    概要はこんな感じ

    ・ゆるふわ樺太道中(往路)
    ・月島一人称でひたすら会話シーンなのでだいぶ疲れる構成
    ・付き合っていない月鯉
    ・付き合ってないし全年齢だけど発言がいちいち怪しい
    ・杉元が気の毒過ぎた
    ・常識人…?第七師団の良心…???
    ・あな救しなさそうな軍曹

    #月鯉
    Tsukishima/Koito

    付き合ってない月鯉「月島軍曹って面食いだよね」

     唐突に投げられた言葉に、無意識のうちに眉間に力が入った。顔を上げれば、この旅路で見慣れた傷のある男の顔がある。
    「――藪から棒になんだ。そもそも俺は面食いではないぞ」
     一体この男は何を言い出すというのか。別に俺は、懇意にする相手の美醜にこだわった覚えはない。――確かに、ちよは愛らしい女性だったが、見た目の良さで彼女に惹かれたわけでは断じてない。
    「そぉお? じゃあ、鯉登少尉のどこがいいの? あのボンボン、顔くらいしかいいとこないと思うけど?」
    「ハァ?」
     杉元の口から飛び出したとんでもない一言に、俺は目を見開いた。
     俺と。鯉登少尉が。そういう関係に見えるとでも言うのか? 見える訳はないだろう? ……見えるのか? まさかそんなはずはないだろう?
    「えっ、軍曹……もしかして、隠してるつもりだったのぉ?」
     心底驚いたと言わんばかりの表情で、目を丸くする杉元に、思わず眉根を寄せる。
     何を言っているんだ、この男は。俺と鯉登少尉は、そうではないだろう? 少尉は手のかかる子供みたいなもので、俺は補佐という名の子守役だ。じゃれついてきたところを抱きしめてやり、すぐに走り出そうとするから手を繋いでいるだけだ。夜泣きせんように布団に招き入れ、口を吸ったり肌を探ったりしてあやしているようなものではないか。
     ――確かにそのまま滾ったモノを咥え込ませることも、稀に、時々、いや結局毎回のようにあるかもしれないが……それは別にそういう意味ではないはずだ、よくある子守の一環だろう?
    「……なんだと? 聞き捨てならないぞ、月島軍曹!」
     ……と。距離があったため聞こえてないだろうと油断していたが、どうやら聞きつけたらしく鯉登少尉が大股に向かって来る。ややこしいことになったと頭を抱えたくなるが後の祭りだ。
    「貴様、面食いでないなどと抜かすとは、無礼な奴だな! 杉元は気に入らんが、こればかりは杉元が正しいだろう?」
    「それ自分で言うのかよ?」
     また一触即発に小競り合いを開始しそうな雰囲気に、盛大に溜息を吐き出す。上官に対する態度ではないといえばその通りだが、聞き分けのない子供を相手にしているようなものだから、これでも問題はない。この上官は他と比べればやたらと手がかかるが、俺の雑な態度には寛大だった。だからこそ、世話をするのは面倒くさいのだが――まあ、やぶさかではない。
    「鶴見中尉殿を見ろ、あれほど美しいお方ではないか。お前が面食いでなければ何だと言うのだ、なあ月島?」
     しかし予想外の名前を口にした鯉登少尉に、固まった。どうしてそこで鶴見中尉の名を持ち出すのか、まるで理解が出来ない。ちらりと杉元の方を見遣れば、引きつった顔でこちらを凝視しており、慌てて首を振るった。
    「……さすがに鶴見中尉殿とは寝ていないからな!」
     一体何を言い訳しているというのか。しかし妙な誤解は、さすがに訂正しておきたい。いくら鶴見中尉の右腕として任務にあたっているとはいえ、そうした意味ではない。
    「へえ、つまり鯉登少尉とは寝てると認めんのかよ?」
    「……あれは子守だ。添い寝みたいなものだろう?」
     一瞬言葉に詰まりそうになったが、努めて冷静に返す。そもそもあれは同衾というよりも添い寝なのは事実だ。特に樺太は北海道よりも寒く、冷えて寝つきが悪くなると添い寝をせがまれる頻度も高いのだから、仕方がない。愚図られる方が面倒であるし、実際に寒いのだから風邪をめされても困る。鯉登少尉は薩摩の生まれで、寒さには強くない。それに、寝る前に少し身体を動かした方が温まる上によく眠れるのだから、極めて自然であり合理的な方法だ。個人的な感情云々の話ではない。
     つまりよくあることだ。何ら問題はない、手のかかる上官の世話ならばこのようなものだろう? 確かに鶴見中尉にはしないが、鶴見中尉は上官ではあるが手がかかるわけではないので当たり前だ。何らおかしくはない。
    「うふふ、月島は私には興味がないからな」
     いや、まったく興味がないわけではないが、確かに可愛いとは思っているが、他の上官や部下には頼まれたって同じことをする気はないが、口に出すとややこしいので黙っておこう。
     鯉登少尉は、俺の軍帽を取り上げ短く刈り込んだ坊主頭を撫で回している。何が楽しいのかは理解出来ないが、害はないので好きにさせておく。こうしていると大人しい上に、俺も鯉登少尉に触れられることは嫌ではない。むしろ心地良くさえあるので、一石二鳥だろう。
    「だが杉元、私も面食いだぞ?」
     どうやら鯉登少尉は機嫌が良さそうだ。犬猿の仲である杉元に対し、それほど突っかかる様子もない。いつもこの調子だと助かるのだが。
    「そうですね。鶴見中尉殿は大変麗しくてらっしゃいますから」
     下手に否定しても面倒だからと、無感情のまま鯉登少尉が欲しい言葉を口にしてやる。にまりと笑みの形を口元へと浮かべ、したり顔で頷く鯉登少尉の機嫌は上々だ。杉元は何か途轍もなく奇怪なものを見たような顔をしているが、他の師団所属の、しかも既に除隊済みの元一等卒と補佐を勤める上官のどちらの機嫌を優先させるかなど、考えるまでもない。こうしたものは、合理的に考えた方が面倒がなくて良いのだ。この方の興味関心は、実際に触れている俺を通り越して心酔する上官にのみ注がれているという事実に、若干の釈然としない思いを抱かないわけではないが、それはあまりにも些細なことだ。男としての矜持だとかいうつまらないものは、軍隊生活において何一つとして役に立たないものである。そんなものは羆にでも食わせておけばいい。
    「わかっているじゃないか、月島ァ! 鶴見中尉殿はとてもお美しい! それにお前もよかにせじゃろ?」
     長い両腕を絡みつかせながら、上機嫌に笑う鯉登少尉の言葉を聞き流していたが、ふと違和感を覚えた。
     今、俺の名前を出さなかったか?
    「――よかにせ、とはどのような意味でしたか?」
     いや、聞いたことはあるはずなのだが――それは果たして、鼻が低いむさ苦しいおっさんだとか、そのような意味だったのだろうか? 薩摩の言葉に詳しいわけではないが、鯉登少尉の通訳を繰り返すうちにいくつかの単語は覚えていたはずだ。だというのに、その意味が頭の中に入ってこない。
    「なんだァ、月島? 貴様は私の補佐のくせに、よかにせも覚えちょらんのか? 美男子ち意味じゃ、お前みたいな男のことだ! よく覚えておけ!」
     偉そうにふんぞり返りながら捲し立てられたが、意味がわからない。いや、意味はわかるのだが、言いたいことがまるでわからない。
     杉元は物凄い顔で俺と少尉を見比べていたが、目が合った瞬間に気まずそうな顔をした。いや、別に気を遣ってくれずとも良い、俺だって自分が『よかにせ』とは程遠い見た目をしていることくらいは自覚している。
    「…………鯉登少尉殿は、目医者に行かれたほうがよろしいのでは?」
     やっとの思いでその一言を絞り出した。からかわれているだけならば、こちらも冷静に返せばいいだけの話だ。
     だが、鯉登少尉は俺の一言に、目を丸くする。まさかこの人は、本気で言っているつもりだったのだろうか? いやまさか。
    「なんだ、月島。謙遜か? だがお前はよかにせだ、何せ私は面食いだからな!」
    「……ボンボンの趣味は、俺には理解出来ない!」
     別に自分のことを、鯉登少尉の言うよかにせだとは思っていないが、そうはっきり言われては複雑な気分だ。しかしそれよりも、杉元を睨む鯉登少尉が不穏だ。
    「なんだとっ?」
    「だってさー、鶴見中尉ってあれだろ? 月島軍曹は、まあ、まともな人だけどさあ……なんか違くね?」
    「……杉元。言っておくが、鶴見中尉殿の見目が良いのは事実だ。お前は今の姿しか知らないから仕方ないが、お怪我をされる前はそれは綺麗な顔立ちをされてらした」
     鯉登少尉に目配せをしてやれば、胸元から日露開戦前の鶴見中尉のお写真を取り出し得意気に杉元に突きつけた。俺と中尉とで撮影した写真だ――ただし俺の顔の上に、他の写真から切り取った鯉登少尉の顔が貼り付けてあるのだが。
    「えっ、何なのこれ?」
     無理矢理すげ替えた写真を見せて胸を張る鯉登少尉に、ますます杉元は変な顔をしている。呆れ半分に思わず溜息が漏れたのは、仕方がないことだろう。まったくもって、俺には理解の出来ない事柄なのだから。
    「あまり失礼な態度を取るな、杉元」
     軽く睨んでやれば、杉元は肩を竦める。何もわかっていなさそうな様相に、もう一度溜息をついたのは、ごく自然なことだろう。
    「憧れの相手のお写真を所望するなど、鯉登少尉殿は可愛らしい方なんだ。あまりおかしな目で見るな」
     鶴見中尉に焦がれるがあまり、写真を見て一喜一憂するなど、まるで女学生のようで、可愛らしいではないか。まだ鶴見中尉と一緒に写真撮影をしていない鯉登少尉が、二人で映った写真をお求めになるのも致し方ない。まったくもって可愛らしいお戯れで、もう少し暖かく見守って差し上げるべき事柄だろうに、斯様に妙な目つきを不躾に向けて寄越すとは、相変わらず無礼な奴だ。
    「いや、ボンボンは確かに見た目だけはいいけどさー、別に可愛くはないだろ……」
     杉元がまたもや失礼なことを言いながら、何か言いたげな視線を投げかけて来るので、俺はうんざりと首を振るった。
    「何を言ってるんだ。可愛いだろうが」
     俺の言葉に、鯉登少尉は嬉しそうに笑みを浮かべたので、腰を抱いて身体を引き寄せておく。こうしていると勝手に走り出さないので重宝してるのだ。
    「うふふ、月島ぁん、私のことが可愛いか?」
     それはもう、機嫌良く可愛い笑顔を向けられては、俺は頷くしかない。
    「はい。鯉登少尉殿はとても可愛いですよ」
     鯉登少尉は俺に褒められることが、どうやらとても嬉しいらしい。あまり甘やかしすぎても良くないため、やたらめったら褒めているわけではないが。とはいえ仕事とは関係のないところでは、いくらでも褒めてやればいい。その方が鯉登少尉の機嫌も良くなってやりやすく、俺も素直な少尉を見ていると気分が良くなる。鯉登少尉が可愛いのは事実なので、別に無理矢理お世辞を言っているわけでもないのだから、何一つとして問題ないだろう。
    「いや、絶対おかしいでしょ!?」
     杉元から素っ頓狂な声を上げられて、肩を竦めた。別に他所の師団所属の元一等卒に理解などして貰う必要はないが、何の因果かこうして北の果てまで旅路を共にしているのだから、少しは他所の流儀にも慣れて欲しいものなのだが。
    「何もおかしくはないぞ、杉元。お前は一等卒だから知らんのだろうが、新任少尉の補佐は飴と鞭が肝心だからな。兵営では厳しく、布団の中では甘くが上手く補佐する秘訣だな」
     杉元は、いつも甘やかしているようにしか見えないと唇を尖らせる。別に俺は、鯉登少尉を甘やかしているつもりなどないのだがな。むしろ随分と厳しめに接しているはずだが、まあ一等卒のまま除隊した奴には、少尉の補佐がどのような仕事なのかがわからないのは仕方がないだろう。
    「むしろ本当は恋人だったりするんじゃないの? その方が自然だと思うけどな」
    「なんだ杉元、私と月島はどこからどう見ても上官と部下ではないか?」
     鯉登少尉は俺の方を見てふふっと可愛い笑顔を見せてから、じろじろと杉元を眺めている。心底わけがわからないと言わんばかりだ。なあ月島、と、同意を求められたのでそうですねと肯定しておく。実際、俺にもわけがわからない。
    「えぇ、じゃあ、軍曹は鯉登少尉以外の少尉にも同じことするの?」
    「いや……そんな事はない、この人は特別手がかかるからな」
     たとえばあの花沢勇作少尉のような方だったならば、このようなことをする必要はなかった。或いは、もっといけ好かない性格の少尉ならば、事細く手をかけてやりたくなどないだろう。俺だって軍人である前に一人の人間だ、目をかけ手をかけてやりたい相手は選ぶのは仕方がないことだろう。
    「それに鯉登少尉殿のことは、鶴見中尉殿から特別に頼まれているんだ。最大限に世話をするのは当たり前だろう。上官命令だからな」
    「まあ確かにこのボンボンじゃ手はかかるんだろうけど、そういう問題?」
     未だ不審そうにこちらを見てくる杉元は、面倒くさい男だ。他の師団ではどうかは知らないが、ここではこうなのだからそういうものだと思っておけばいいだろうに。そもそもこの男は何故愛だ恋だとはしゃぎたがるのだろうか? 軍人たる者、斯様に軟弱な事は言ってられないだろうに、一体この男はどういうつもりなのだろうか。
    「はーーー付き合ってられない! 勝手にやってて、でも野営中にあんまり盛んないでよぉ?」
     杉元の発言に、鯉登少尉は盛っとらん失礼な奴だと食ってかかっている。やれやれまた言い争いかと呆れながらも、一連の流れに関しては鯉登少尉の方が正しいとも思うがために強く咎め立て出来ずにいるのだった。
     ――そうだ、盛ってなどいない。あくまでこれは軍曹としての仕事の一環だ。
     鯉登少尉の可愛さに羽目を外したことがないわけではないが、それはそれ。これはこれだ。別に職務を大幅に逸脱してはいない。
    「杉元、お前ももう聞きたいことがないなら良いだろう? 俺たちはもう行くぞ」
     せっかく今日は日暮れ前に街へと辿り着いたのだった。野営でもなく、アイヌの集落での間借りでもなく、宿を取ることが出来ている。もちろん、部屋は俺と鯉登少尉で一部屋だ。今夜はゆっくり休めるのだ、杉元に構っている暇はない。
    「月島ぁ、そういえば通和散が残り少ないぞ!」
     鯉登少尉の発言で思い出した。日本人の商人がいる街でなければ、なかなか入手が難しいものだ、街に着いたら買いに行かなければと思っていたのだった。
    「そうですね、では買い物に出かけましょうか」
     鯉登少尉は嬉しそうに手を差し出して来たので、握って差し上げる。こうすれば勝手に走り出さないのだからやはり都合が良い。上機嫌な少尉に引きずられるように、俺は陽の傾きかけた街へと歩いて行ったのだった。
     とてつもなく微妙な顔をした杉元のことなど、すぐにどうでも良くなっていた。

    おわり。
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