BLゲームのポプダイエンドを妄想 似て非なる世界に来て一月ほどのある夜、ダイは、テランの湖の付近へ来ていた。
木に凭れて座り、ぼうっと月明かりに照らされた湖を眺める。
独りになりたい時、ダイはこうしてテランに来る事が多かった。
この一月、本当に信じられない出来事ばかりだった。
バーンを倒したはいいものの、何故か異世界に飛ばされ、それがBLと呼ばれる、男同士が愛し合う世界だったなんて。
最初は驚き戸惑った選択肢というシステムも、最早慣れたものだ。
ゴメからの、『好感度を上げすぎてはいけない』というアドバイスの元、なるべくスキンシップのない選択肢を選んできたつもりだが、幸いにも今の所誰とも深い仲にはなっていない。
──まだ1ヶ月、だもんな。そりゃそうか。
この世界の人物は、本当に、ダイの見知った彼らに良く似ていた。
性格も、仕草も、言動も、全てが。
だから彼らとの関わりにも、直ぐに馴染むことができた。
但し唯一違うのは、冒険の記憶が一切無いこと。
あの短くも濃密な3ヶ月間の出来事を分かち合える者がいない事に、ダイはどうしようもないもどかしさを感じていた。
彼らは似ているが違う。同一ではない。
それがふとした時に思い起こされ、ダイは切ない想いを抱くのだった。
──会いたいな、みんなに。
雲のかかっていない、三日月を見上げる。
──あの時も、こんな夜だったっけ……。
思い出すのは、大魔王に敗れ、勇者という重圧から逃げ出したあの夜。
思わず涙した自分を、相棒は責める訳でもなく。
信じている、と。おまえはおまえだと言ってくれた。
──どうしてるかな。おれのこと、探してるかな。怒ってるかな。
じわりと瞼が濡れるのを感じ、ダイは膝を抱えて俯く。
──会いたいよ……会いたいよ、ポップ……!
堪えていた感情を堰き止められず、まろやかな頬を涙が伝う。
暫くそうして行き場のない悲しみを感じていたダイは、側に誰かが佇んでいることに気づいた。
ダイが涙で濡れた顔を上げた先──そこには、あの夜と同じ様に、ポップがいた。
「……ポップ……どうして」
「何となく、おまえならここにいるんじゃねえかと思ってな」
ポップはそう言いながら、ダイに歩み寄る。
ダイはまだ目尻に残る涙を乱雑に拭うと、立ち上がり、気恥ずかしさからポップに背を向けた。
ポップは少しおどけたように付け加える。
「なーんてな。家に行ったら、ブラスじいさんがお前はテランに出かけたって言うんでな。追いかけてきたのさ」
ハハッと軽く笑った後、
「……おまえに、言いたいことがあってよ」
急にトーンを落とした声で言うと、ポップは後ろからダイを抱き締める。
「……‼」
「泣くなよ、おれの知らねえとこで。教えてくれよ、おまえが何に苦しんでんのか」
「ポップ……」
「見たくねえんだ……おまえが辛そうにしてるのも、悲しそうにしてるのも」
ポップがそこまで告げた瞬間、例の、選択肢が出た。
そう吐き出すポップに、おれは
▶「ありがとう……でも、大丈夫」そう言って、その腕をそっと外した。
甘えても……いいかな、そんな気持ちになり身体を反転させるとポップに抱き着いた。
──ここで、選択肢なんだ……。
ポップに抱き締められたまま、ダイは目の前に浮かぶウインドウを見つめる。
──どうしよう。これ、いつもなら上だけど……。
悩んだ末、おれは……。
▶「ありがとう……でも、大丈夫」そう言って、その腕をそっと外した。
「ダイ……」
「おれは、平気だよ。みんなが……いるもの。それに、ポップも」
見上げたポップは、複雑そうな顔をしていた。
「……そうか」
「うん。ありがとう、ポップ」
出来るだけの笑顔でそうポップに言うと、ポップはがしがしと頭を掻いた後、
「ま、いいけどよ。あんま無理すんなよ」
そう言って苦笑するのだった。
→ストーリー継続!
▶甘えても……いいかな、そんな気持ちになり身体を反転させるとポップに抱き着いた。
ゴメちゃんの警告は頭にあったけど、懐かしい温もりをおれは手放すことはできなかった。
ポップの胸に顔を埋めると、ポップはしっかりとおれを抱き締め返してくれた。
あっちのあいつには、何にも気にせずこうやって抱き着くことも出来たのに。
久しぶりのポップの匂いに、また知らず知らずのうちに涙が溢れる。
「ダイ……」
ポップの声に顔を上げる。
ポップの顔がゆっくりと近づいてきて──。
おれはキスされた。されて、しまった。
あぁ、ゴメちゃん、ごめんね。
おれ、間違えちゃったみたい。
唇が触れ合ったままぼんやりしていたら、目の端にまたウインドウが映った。
▶触れ合った温かさに抵抗できなくて、おれはそのまま瞳を閉じた。
はっと我に返ったおれは、ポップを突き飛ばした。
──なんで、こんなタイミングなんだろう。下を選べば、元に戻せるかな……。
おれは……。
▶触れ合った温かさに抵抗できなくて、おれはそのまま瞳を閉じた。
──あ、これ、エンディングになっちゃうのかな。
だけど、ポップだったらいいか、なんて。
そう思えちゃうくらい、ポップのキスは優しくて。
ポップの唇が一旦離れて、おれの涙をそのまま口で拭った後、またキスされた。
今度は触れるだけじゃなくて、舌で唇をちょんちょんと突かれた。
何だろうと思って、口をちょっと開けたら、ヌルってポップの舌が入ってきて。
びっくりして思わず目をあけたら、ポップと目があった。
おれを気遣うような優しい目に、胸がきゅんてなって、もう、ポップに任せちゃおうと思って、そっと目を閉じた。
→ポプダイエンドA。甘々ラブラブ。
▶はっと我に返ったおれは、ポップを突き飛ばした。
「だ、だめっ!」
おれの口から思わず出た言葉に、ポップはショックを受けたような顔をした。
「ごめん、ポップ」
──でもおれ、やっぱりあっちのあいつに会いたいから……。
気まずい沈黙。
少し俯いていたポップは、ゆっくりと顔を上げた。
「なんでだよ……ダイ」
その目は……怒っている……?
「なんで、おれじゃダメなんだよ。他のやつの方がいいのか……?」
「ち、違う。そうじゃなくって」
「おれじゃないやつを選ぶのか。……ああ、そうか。そんなら選べねえようにしちまえばいいか」
「ポ、ポップ……?」
ポップは気味の悪い笑みを浮かべるとゆっくり近づいてくる。
──逃げないと……!
本能がそう叫ぶのに、身体は思うように動かない。
後ずさりをする程の距離もなく、背中が木の幹にぶつかる。
「逃さねえよ。おまえはおれじゃなきゃ、ダメなんだろ?………な、ダイ?」
──もしかして……これ、バッドエンドってやつ……。
迫りくる相棒に、おれは今までにない恐怖を感じていた。
→ポプダイバッドエンドA。凌辱かな……。
落差が激しい……
書くために16巻見直したら、尊すぎて…ウッ( ᵕ̩̩ㅅᵕ̩̩ )