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    last_of_QED

    @last_of_QED

    ディスガイアを好むしがない愛マニア。執事閣下、閣下執事、ヴァルアルやCP無しの地獄話まで節操なく執筆します。デ初代〜7までプレイ済。
    最近ハマったコーヒートーク(ガラハイ)のお話しもちょびっと載せてます。

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    last_of_QED

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    溺れた先の水底で貴方と呼吸を分け合って。
    執事閣下🐺🦇全年齢ですが事後描写あります

    #ディスガイア4
    disgaea4
    #執事閣下
    deacon
    #フェンヴァル
    fenval

    その水底で呼吸を分けて【その水底で呼吸を分けて】



     満ちる光の気配で意識が鮮明になっていく。俺は此処に堕ちて来るまで、地獄という場所を誤解していたらしい。
     魔界の最底辺。そこは朝と夜の区別などなく、陰鬱と、居心地の悪さに満ちた空間だと長らく思い込んでいた。

     身体が鉛のように重い。理由ぐらい、言われずとも分かっている。視線を隣の枕へ向けると確かにいたはずの人がもぬけの殻で心臓が止まる。慌てて上半身を起こし目をこすれば、窓際に人影を見て胸を撫で下ろす。
     そこには揺れるカーテンの隙間から薄日を浴びる主人の姿があった。光を自ら浴びる吸血鬼などこの人以外にいるのだろうか。羽織っただけのシャツからのぞく素肌は魅惑的と言うよりも、柔い光に包まれ、神秘的なものに思えた。血を吸わなくなったために縮んでしまったその体格には今なお不安を覚え、肉のない肋骨を直視出来ない。腕を掴んでも腰を掴んでも、その華奢な体つきに力を込めるのを躊躇ってしまう。
     勿論我が主人のこと、その程度で折れたり壊れたりすることがないのは良く分かっている。しかしこれは精をつけていただかなければ。そんな気持ちでいつも人間の血を摂取してしまえるよう画策しているのに当の本人には中々その想いは伝わらない。

     ぱちり目が合って、吸血鬼はおはようと微笑んだ。朝という時間はある種の神聖を纏い、隠し事を、心の内のやましさを暴く。光が見たくないものまでもを人の目に焼き付けんとする。夜に見ていた都合の良い夢も、この眩さの下にすっかり覚めてしまうのだ。

     朝が突き付ける現実は中々どうして残酷で。首、胸、内腿……鬱血した痕の数々が否応無しに昨晩の情事を思い起こさせる。目に毒、というよりも主人を前に歯止めのきかなくなった自分を見るようでいたたまれない。色白い肌に痛々しくも見える。俺が今閣下に掛けるべき言葉は──

    「どうした、ぼんやりして」
    「おはようございます、ヴァル様。お身体は……」
    「大丈夫に見えるのか?」

     内腿のキスマークを長い爪の指がなぞる。その挑発するような指つきについ喉が鳴り、己の浅はかさに首を振る。悪魔といえ、背徳的なことにはどきりとするものだ。

    「責任は取ります」
    「良く言う。男同士で、何の責任を取ろうというのだ」

     それに、悪魔は責任などとらん。そんなことを言うのはよっぽどの物好きだけだ。お前がその物好きだと言うのなら止めないが。
     そう笑った閣下の表情は柔らかい。暴君と呼ばれた頃には見ることのなかった表情に、形容し難い気持ちが込み上げる。

     恐ろしいまでの魔力量、鮮やかな身のこなし、惚れ惚れするほどの畏怖。そして、裏切り者の俺に向けられた「俺のために尽くせ」というあの言葉。このお方こそ世界の覇者に相応しい、そんな風に魅せられて俺は400年前、月の下に忠誠を誓ったのだ。吸血鬼ヴァルバトーゼ。こんな辺鄙な地で燻っていて良い方では決してない。そう心の底から思い、日々画策しているのに。
     その一方で主人と過ごすこの地の底に、ある種の充足感を覚えてしまっている自分もまた、認めなければならなかった。住めば都とはこのことか。それとも、此処が貴方と堕ちた先だから、なのでしょうか。
     「全ては我が主人のために」? そんな口癖のような口上も、心で唱えてみれば嗤えてしまう。何が主人のためか。きっと本当は俺のためなのだ。そんな後悔と自己嫌悪が、主人の穏やかさを前にいつまでも付き纏う。

    「朝日がこうも届くこともあるのだな。今日は随分と眩しい」

     彼は透けるような紅い目を細めた。地獄に降る、ささやかな光。俺の目には、閣下がこの薄光と重なって見えていた。
     閣下の心は光に阻まれ肝心なところがまるで見えて来ない。俺は、主人と従者である以上の気持ちをこの人に抱いてしまっていて、閣下もそのことはもう、気付いているのだろう。けれど、それを主人は否定しない。拒絶しない。それが俺には分からない。「もうやめにしよう」と言われる前に、焦がれる気持ちを一切消して、無かったことにしてしまえと何度も試みた。
     けれど一度生まれた感情の泡は潰してしまおうにもするり俺の拳を避けていく。見て見ぬ振りをしたところでその気泡は消えてくれるはずもなく、むしろ増殖しては纏わりついて、逃げ道を塞いでいく。息苦しさを増していく。
     それで、そのまま泡に飲まれ溺れた結末がこのザマだ。水底には魔物が住んでいて、俺の足を掴み、あっという間に引き摺り込んでいく。俺は息が出来なくなって、隣にいる大切な人を離さないよう掻き抱いてしまう。
     主人を暗い水底へ道連れなんてこと、従者である自分が望むはずもない。それなのに。思考と行動がちぐはぐで、噛み合わない。自分のことが分からない。

     欲をぶつけ、身体を繋ぎ。今更俺たちは清く正しくいられる訳がない。そも、悪魔が正しさなど求めることはないのだから、そんなことはこの魔界において気にかけるほどのことでもないのだろう。取るに足らない良くある話。
     しかし、少なくとも。身体の欲が満たされたなら、わざわざ朝まで共にいる必要などないはずだと己の影が囁いた。それもそうだ。けれどもそうしないのは、それはやはり何かが満たされないからで。

     このままでは俺の独りよがりのように思えて。この胸の痛みさえ思い上がりのように思えて、あまりにも虚しかった。……きっとそれが、俺を朝までこの部屋に縛り付けた。

    「明け方まで申し訳ありません、すぐにでも出て行きます」

     俺の心の内を知ってか知らずか。閣下は壁に掛けられていたジャケットを手に取ると、俺の方へと歩み寄った。何を、と俺が発するよりも先に閣下が口を開く。

    「まあ、待て。お前が普段してくれることの真似事だ」

     ベッドへと膝をついた閣下は俺の背側にジャケットを広げ、袖へ腕を通し、襟を正す。それが終わればベッドの脇へ置いていた両の手のグローブが嵌められいく。そのひとつひとつがぎこちなくも丁寧で、込み上げるこの気持ちを何と言い表すのか、俺は知らない。身体だけではない、心だって見えないけれど確かに自分のものであるはずなのに、その難解な仕組みは自分には分からないことだらけだ。
     なされるがまま、満ちていく不思議な心地に随分安い魂だと悪態を吐く。この気持ちを俺が形容することはこの先もないのだろう。想い合う言葉だって満足に交わされることはきっとないけれど。それでも俺は、

     不意をつき、主人が俺の目線まで屈んで頬に口付ける。子どものように、擦り合わせて戯れる、触れるだけのキス。けれど一方で、重ねられた手が優しいような、逃げるなと主張するような、そんな意思を持っている。「目を逸らすな」と俺をじっと見据える目が物語る。

     ああ、そうやって貴方の瞳はいつも私を見透かす。こんなに情けない心の内を覗き見てなお、拒まない。だから、だから私は期待してしまうのではありませんか。

    「そんなに見られると……気恥ずかしいのですが」
    「恥ずかしいことを散々したはずのお前が言うのか?」

     くすくす笑う閣下はまるで、水底の光だ。

    「もう、準備はいいな? フェンリッヒ」

     差し出された手を取れば、胸の中で泡が弾け、すっと息が楽になる。貴方の纏う眩さに、地獄にも確かに朝は降るのだと、そんな当然のことを俺は今、ようやく知った。


    fin.


    +++++++++++++++++++++


    リッヒは幸か不幸か自分のちぐはぐな感情を分析するだけの冷静さを持っていて、それ故に苦しみ、ぐるぐると葛藤するんだと思います。
    主人と従者 そんなことあって良いはずもないし 悪魔だから身体の関係ぐらいあっても良いとしたって 俺はとっくに身体だけなんてそんな気持ちじゃなくなっているじゃないか…?! こんな感じに。

    その全てを照らし見透かして、お前とならそれでも良いさと口付けるのが閣下。けれど、手を引く先は深く暗い水の底。悪魔ですから。そして共に溺れ沈んでしまった水底で息を分けてやる。それが愛という言葉を使えない悪魔たちにとっての、それなんじゃないか。そんな気持ちで書きました。やまなしおちなしいみなし。
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    DOODLEディスガイア4に今更ハマりました。フェンリッヒとヴァルバトーゼ閣下(フェンヴァル?執事閣下?界隈ではどう呼称しているのでしょうか)に気持ちが爆発したため、書き散らしました。【悪魔に愛はあるのか】


    口の中、歯の一本一本を舌でなぞる。舌と舌とを絡ませ、音を立てて吸ってやる。主人を、犯している?まさか。丁寧に、陶器に触れるようぬるり舌を這わせてゆく。舌先が鋭い犬歯にあたり、吸血鬼たる証に触れたようにも思えたが、この牙が人間の血を吸うことはもうないのだろう。その悲しいまでに頑なな意思が自分には変えようのないものだと思うと、歯痒く、虚しかった。

    律儀に瞼を閉じ口付けを受け入れているのは、我が主人、ヴァルバトーゼ様。暴君の名を魔界中に轟かせたそのお方だ。400年前の出来事をきっかけに魔力を失い姿形は少々退行してしまわれたが、誇り高い魂はあの頃のまま、その胸の杭のうちに秘められている。
    そんな主人と、執事として忠誠を誓った俺はいつからか、就寝前に「戯れ」るようになっていた。
    最初は眠る前の挨拶と称して手の甲に口付けを落とす程度のものであったはずだが、なし崩し的に唇と唇が触れ合うところまで漕ぎ着けた。そこまでは、我ながら惚れ惚れするほどのスピード感だったのだが。
    ……その「戯れ」がかれこれ幾月進展しないことには苦笑する他ない。月光の牙とまで呼ばれたこの俺が一体何を 3613

    last_of_QED

    MOURNING世の中に執事閣下 フェンヴァル ディスガイアの二次創作が増えて欲しい。できればえっちなやつが増えて欲しい。よろしくお願いします。【それは躾か嗜みか】



    この飢えはなんだ、渇きはなんだ。
    どんな魔神を倒しても、どんな報酬を手にしても、何かが足りない。長らくそんな風に感じてきた。
    傭兵として魔界全土を彷徨ったのは、この途方も無い飢餓感を埋めてくれる何かを無意識に捜し求めていたためかもしれないと、今となっては思う。

    そんな記憶の残滓を振り払って、柔い肉に歯を立てる。食い千切って胃に収めることはなくとも、不思議と腹が膨れて行く。飲み込んだ訳でもないのに、聞こえる水音がこの喉を潤して行く。

    あの頃とは違う、確かに満たされて行く感覚にこれは現実だろうかと重い瞼を上げる。そこには俺に組み敷かれるあられもない姿の主人がいて、何処か安堵する。ああ、これは夢泡沫ではなかったと、その存在を確かめるように重ねた手を強く結んだ。

    「も……駄目だフェンリッヒ、おかしく、なる……」
    「ええ、おかしくなってください、閣下」

    甘く囁く低音に、ビクンと跳ねて主人は精を吐き出した。肩で息をするその人の唇は乾いている。乾きを舌で舐めてやり、そのまま噛み付くように唇を重ねた。
    吐精したばかりの下半身に再び指を這わせると、ただそれだけで熱っぽ 4007

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    Deep Desire【悪魔に愛はあるのか】の後日談として書きました。当社比アダルティーかもしれません。煩悩まみれの内容で上げるかどうか悩むレベルの書き散らしですが、今なら除夜の鐘の音に搔き消えるかなと駆け込みで年末に上げました。お許しください…【後日談】


    「やめ……フェンリッヒ……!」

    閣下との「戯れ」はようやくキスからもう一歩踏み込んだ。

    「腰が揺れていますよ、閣下」
    「そんなことな……いっ」
    胸の頂きを優しく爪で弾いてやると、我慢するような悩ましげな吐息でシーツが握りしめられる。与えられる快感から逃れようと身を捩る姿はいじらしく、つい加虐心が湧き上がってしまう。

    主人と従者。ただそれだけであったはずの俺たちが、少しずつほつれ、結ばれる先を探して今、ベッドの上にいる。地獄に蜘蛛の糸が垂れる、そんな奇跡は起こり得るのだ。
    俺がどれだけこの時を待ち望んでいたことか。恐れながら、閣下、目の前に垂れたこの細糸、掴ませていただきます。

    「閣下は服の上から、がお好きですよね。着ている方がいけない感じがしますか?それとも擦れ方が良いのでしょうか」
    衣服の上から触れると肌と衣服の摩擦が響くらしい。これまで幾度か軽く触れ合ってきたが素肌に直接、よりも着衣のまま身体に触れる方が反応が良い。胸の杭だけはじかに指でなぞって触れて、恍惚に浸る。

    いつも気丈に振る舞うこの人が夜の帳に腰を揺らして快感を逃がそうとしている。その姿はあまりに 2129

    last_of_QED

    CAN’T MAKE十字架、聖水、日の光……挙げればきりのない吸血鬼の弱点の話。おまけ程度のヴァルアル要素があります。【吸血鬼様の弱点】



    「吸血鬼って弱点多過ぎない?」
    「ぶち殺すぞ小娘」

    爽やかな朝。こともなげに物騒な会話が繰り広げられる、此処は地獄。魔界の地の底、一画だ。灼熱の溶岩に埋めつくされたこの場所にも朝は降るもので、時空ゲートからはささやかに朝の日が射し込んでいる。

    「十字架、聖水、日の光辺りは定番よね。っていうか聖水って何なのかしら」
    「デスコも、ラスボスとして弱点対策は怠れないのデス!」
    「聞こえなかったか。もう一度言う、ぶち殺すぞアホ共」

    吸血鬼の主人を敬愛する狼男、フェンリッヒがすごみ、指の関節を鳴らしてようやくフーカ、デスコの両名は静かになった。デスコは怯え、涙目で姉の後ろに隠れている。あやしい触手はしなしなと元気がない。ラスボスを名乗るにはまだ修行が足りていないようだ。

    「プリニーもどきの分際で何様だお前は。ヴァル様への不敬罪で追放するぞ」

    地獄にすら居られないとなると、一体何処を彷徨うことになるんだろうなあ?ニタリ笑う狼男の顔には苛立ちの色が滲んでいる。しかし最早馴れたものと、少女は臆せず言い返した。

    「違うってば!むしろ逆よ、逆!私ですら知ってる吸血鬼の弱 3923

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    DONEしがない愛マニアである私が原作の奥に想い描いた、ディスガイア4、風祭フーカと父親の話です。銀の弾は怪物を殺せるか?【銀の弾など必要ない】



    白衣が揺れる。頭をかいてデスクに向かうそのくたびれた男に私は恐る恐る声を掛ける。

    「パパ、お家なのにお仕事?」

    男はこちらを振り返りもしない。研究で忙しいのだろうか。それとも、私の声が届いていないのだろうか。
    父親の丸まった背中をじっと見つめる。十数秒後、その背がこわごわと伸び、首だけがわずかにこちらを向く。

    「すまん、何か言ったか?」

    この人はいつもそうだ。母が亡くなってから研究、研究、研究……。母が生きていた頃の記憶はあまりないから、最初からこんな感じだったのかもしれないけれど。それでも幼い娘の呼び掛けにきちんと応じないなんて、やはり父親としてどうかしている。

    「別に……」

    明らかに不満げな私の声に、ようやく彼は腰を上げた。

    「いつもすまんな。仕事が大詰めなんだ」

    パパのお仕事はいつも大詰めじゃない、そう言いたいのをぐっと堪え、代わりに別の問いを投げかける。

    「いつになったらフーカと遊んでくれる?」

    ハハハ、と眉を下げて笑う父は少し疲れているように見えた。すまんなあ、と小さく呟き床に胡座をかく。すまん、それがこの人の口癖だった。よう 3321

    last_of_QED

    DOODLE主人に危機感を持って貰うべく様々なお願いを仕掛けていくフェンリッヒ。けれど徐々にその「お願い」はエスカレートしていって……?!という誰もが妄想した執事閣下のアホエロギャグ話を書き散らしました。【信心、イワシの頭へ】



    「ヴァルバトーゼ閣下〜 魔界上層区で暴動ッス! 俺たちの力じゃ止められないッス!」
    「そうか、俺が出よう」

    「ヴァルっち! こないだの赤いプリニーの皮の件だけど……」
    「フム、仕方あるまいな」

    何でもない昼下がり、地獄の執務室には次々と使い魔たちが訪れては部屋の主へ相談をしていく。主人はそれに耳を傾け指示を出し、あるいは言い分を認め、帰らせていく。
    地獄の教育係、ヴァルバトーゼ。自由気ままな悪魔たちを良く統率し、魔界最果ての秩序を保っている。それは一重に彼の人柄、彼の在り方あってのものだろう。通常悪魔には持ち得ない人徳のようなものがこの悪魔(ひと)にはあった。

    これが人間界ならば立派なもので、一目置かれる対象となっただろう。しかし此処は魔界、主人は悪魔なのだ。少々横暴であるぐらいでも良いと言うのにこの人は逆を征っている。プリニーや地獄の物好きな住人たちからの信頼はすこぶる厚いが、閣下のことを深く知らない悪魔たちは奇異の目で見ているようだった。

    そう、歯に衣着せぬ言い方をしてしまえば、我が主人ヴァルバトーゼ様は聞き分けが良過ぎた。あくまでも悪魔なので 7025

    last_of_QED

    DONER18 執事閣下🐺🦇「うっかり相手の名前を間違えてお仕置きプレイされる主従ください🐺🦇」という有難いご命令に恐れ多くもお応えしました。謹んでお詫び申し上げます。後日談はこちら→ https://poipiku.com/1651141/5571351.html
    呼んで、俺の名を【呼んで、俺の名を】



     抱き抱えた主人を起こさぬよう、寝床の棺へとそっと降ろしてやる。その身はやはり成人男性としては異常に軽く、精神的にこたえるものがある。
     深夜の地獄はしんと暗く、冷たい。人間共の思い描く地獄そのものを思わせるほど熱気に溢れ、皮膚が爛れてしまうような日中の灼熱とは打って変わって、夜は凍えるような寒さが襲う。悪魔であれ、地獄の夜は心細い。此処は一人寝には寒過ぎる。

     棺桶の中で寝息を立てるのは、我が主ヴァルバトーゼ様。俺が仕えるのは唯一、このお方だけ。それを心に決めた美しい満月の夜からつゆも変わらず、いつ何時も付き従った。
     あれから、早四百年が経とうとしている。その間、語り切れぬほどの出来事が俺たちには降り注いだが、こうして何とか魔界の片隅で生きながらえている。生きてさえいれば、幾らでも挽回の余地はある。俺と主は、その時を既に見据えていた。堕落し切った政腐を乗っ取ってやろうというのだ。
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