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    last_of_QED

    @last_of_QED

    ディスガイアを好むしがない愛マニア。執事閣下、閣下執事、ヴァルアルやCP無しの地獄話まで節操なく執筆します。デ初代〜7までプレイ済。
    最近ハマったコーヒートーク(ガラハイ)のお話しもちょびっと載せてます。

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    last_of_QED

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    ディスガイア4で悪魔一行が祈りに対して抵抗感を露わにしたのが好きでした。そんな彼らがもし次に祈るとしたら?を煮詰めた書き散らしです。

    #フェンヴァル
    fenval
    #ディスガイア4
    disgaea4

    【地獄の祈り子たち】



    人間界には祈る習慣があるという。どうしようもない時、どうすれば良いか分からぬ時。人は祈り、神に助けを乞うそうだ。実に愚かしいことだと思う。頭を垂れれば、手を伸ばせば、きっと苦しみから助け出してくれる、そんな甘い考えが人間共にはお似合いだ。
    此処は、魔界。魔神や邪神はいても救いの手を差し伸べる神はいない。そもそも祈る等という行為が悪魔には馴染まない。この暗く澱んだ場所で信じられるのは自分自身だけだと、長らくそう思ってきた。

    「お前には祈りと願いの違いが分かるか?」

    魔界全土でも最も過酷な環境を指す場所、地獄──罪を犯した人間たちがプリニーとして生まれ変わり、その罪を濯ぐために堕とされる地の底。魔の者すら好んで近付くことはないこのどん底で、吸血鬼は気まぐれに問うた。

    「お言葉ですが、閣下、突然いかがされましたか」

    また始まってしまった。そう思った。かすかに胃痛の予感がし、憂う。
    我が主人、ヴァルバトーゼ閣下は悪魔らしからぬ発言で事あるごとに俺を驚かせてきた。思えば、信頼、絆、仲間……悪魔の常識を逸した言葉の数々をこの人は進んで発してきたものだ。良いと判断したものは人間や天使の発想であっても取り入れる。その恐ろしく柔軟な考え方が閣下の強さの秘訣でもあるのだろうが、今日はまた「祈り」などと不穏な単語を口にされている。……まさか天使に吹聴されたのではと殺気立つ。

    「そう渋い顔をするな。ただの世間話だ、少し付き合え」

    椅子に腰掛け直し、閣下は笑う。ティーカップを口元に運ぶ所作が悪魔の粗暴さを微塵も感じさせず、惚れ惚れする。しかし、その品格もこのような場所では霞んでしまうというものだ。
    地球、月、天界までもを巻き込んだ世紀の騒動……断罪者ネモと恐怖の大王プログラムから世界中を救った張本人は、未だにこの辺境の地でプリニーの教育係を続けていた。何故か?
    吸血鬼ヴァルバトーゼの偉業は魔界を超えて全世界に知れ渡り、歴史にその名を残すこととなった。最早この英雄を地獄に縛る者はいない。勿論俺からも、もっと相応しい場所があると進言した。が、まだ此処で為すべきことがあると本人が最後まで首を縦には振らなかった。
    結局、執事である自分もこの場所に残ることとなり、今なおプリニーの更生を見届けているのだった。

    「会話に彩りを添えるのも執事の役目。お付き合いいたしましょう。祈りは……そうですね、最早為す術のなくなった人間が神サマ仏サマと縋るイメージです」
    「ウム、悪魔らしい回答だな。口ぶりが実に嫌味っぽい。よいぞ」
    「一方、願いはこうであれという願望を指すのではありませんか。願いは誰しも持ち得えます、それこそ悪魔にだって願いはありましょう」
    例えば私にも閣下に人間の血を口にしていただきたいという願いがありますと、にっこり微笑みかける。

    「ですから、知略の限りを尽くしても叶わないと知れば私の願いは哀れ、祈りに変わるのでしょう。諦める気など毛頭ありませんが、閣下の血を断つそのお覚悟も相当のもの……悪魔の私に祈らせるようなこと、終ぞなさらないでくださいね、閣下。血を飲む気になればいつでも教えてください」

    一息に言い終えて小さな胸騒ぎを覚えたのはいつまでも天界へ帰らない天使のことが再び頭をよぎったためだ。あの女と約束さえしなければ閣下は今も血を啜り、暴君として在っただろう。こうして祈りだなんだとも言いださなかったかもしれない。腹立たしい。やはりヴァル様の覇道に女など不要なのだ。

    「流石は我がシモベ、嫌という程分かりやすい説明だったな。つまりだ、願いは単独で成り立つ願望、祈りは誰かに頼らざるを得ん望みと言えるな?」
    「そういって差し支えないでしょう」
    「だとすると、俺には今祈らねばならんことがあるのだが、どう思う」
    「……は、今、なんと」
    「祈りごとがあるのだ」

    顔色一つ変えず言い放つ主人に俺は言葉を失った。時が止まるとはこのことを言うのだろう。息を呑み、呆然と立ち尽くす。鼓動が速くなり、胸の辺りが締め付けられる。
    悪い冗談だ。これ以上、聞きたくない。崇高な悪魔であるあなたが、祈る? 神サマ、とそのうすい唇が紡ぐのか。左右の細指を組み合わせ、天に向かって跪くのか。
    想像しただけで虫唾が走る。

    「……おやめください」

    閣下が祈るぐらいなら……そう思ってあの時は──月の破壊を防ぐために。敬いエネルギーをグレートフロンガーXに集めるために──俺自身、仕方なく祈ってしまったが。脅威の去った今、悪魔が何を祈る必要があるでしょう。
    そんな無数の言葉が喉元まで出掛かった。すんでのところで口に出さなかったのは、閣下も祈りたくて祈ろうとしている訳ではないのだろうと気付いたからだ。思い立ったら即行動の主人のことだ、並大抵のことならばマントを靡かせて一人颯爽とこの執務室を出て行っただろうが、そうはしなかった。閣下が祈らねばならぬほどの望みとは、一体何なのか。
    その先を考える暇を与えず主人は続けた。

    「覚えているか? 月に危機の迫ったあの時、お前に言ったことを。『俺を敬う気持ちを信じ、俺との絆が永久に続くよう願え、それが祈りだ』と」
    「勿論、覚えていますとも」
    「祈りとは、何も神に対するものばかりではない。何者かに信じ託すということだろう」

    今日の閣下はやけに回りくどい言い方をする。意図を汲み取れない自分自身に苛立ちを隠せない。もう良いでしょう。そろそろ、冗談だと笑ってください、閣下。

    「ですが、あなたのような高貴な悪魔に祈りなど必要ない。閣下ほどの力を以ってすれば、叶えられるのですから」
    「そう、できれば良いのだがな」

    ぽちゃり。ティーカップに角砂糖が落とされる。閣下が砂糖を使うのは珍しい。既に紅茶は冷めているようで、砂糖は固形のまま底に沈み、溶けゆかない。それを見つめる表情は、何処か不安げだ。

    「どうも上手くいかんのだ、フェンリッヒ」

    伏し目がちに呟く主人の姿を見かねて、そっと手を重ね、弧を描くスプーンを止めてやる。主人の手は薄い手袋越しにも伝わってくるほどに冷え切っているようだった。
    此処は寒い場所ですから、閣下。直ぐに淹れ直して参ります。そう告げ、ティーポットを手に取った。今すぐ此処を離れなければならないと思った。
    閣下に背を向け扉に手を掛けると、遠慮がちな視線を感じたような気がしたが、振り返ることはない。

    憂いを纏うあの視線。あの声色。これまで見たことのない主人の様子に、自分はきっと、敬愛する人の何ひとつ分かってはいなかったのだと思い知らされる。
    けれど俺には人間のように土足で他人の心には踏み込めない。ましてや閣下の心になど。閣下の祈りが何であるのかは知る由もないけれど、あなたが思い悩む何かが溶け切るまで俺は何度でも紅茶を淹れ直すでしょう。それが、執事として出来る精一杯なのですから。





    「あら、狼男さん」

    劣悪な環境であれ、少しでも主人のためにと整えた手狭なキッチンには先客の姿があった。ピンクのハート髪。白い羽根。今日、俺の脳内に既に二度も不法侵入した女。いつまで経ってもいけ好かない。
    そして、その姿を目の前にしてはたと気付く。閣下の歯切れの悪いもの言い、突然口にした「祈り」──まさか、閣下、この女との恋沙汰で悩んでおられるのでは?
    嫌な予感が頭を占領する。

    「ご機嫌いかが?」
    「よろしくない。俺は忙しい」
    「紅茶を淹れますの? それならとびきりの茶葉がありますから分けて差し上げますわ」
    「結構だ。お前……閣下に変なことを吹き込んでいないだろうな?」

    キッと睨んで牽制するがアルティナが怯むことはない。

    「なんのことかしら。私が教えられることなんて効率的な徴収の方法、それからお祈りの仕方ぐらいですよ」
    「やっぱりお前か! 閣下の心を乱す真似は金輪際やめてもらおうか」
    「相変わらず主人想いな狼男さん。でも……吸血鬼さんが祈ろうとしているそもそもの原因は、あなたじゃなくって?」
    「何を言っている? どういう意味だ」
    「普段はあんなに悪知恵の働くあなたがどうして自分のことには鈍感なんでしょうね」

    胸に手を当てて考えると良いんじゃないかしらとくすくす笑ってアルティナは胸元の十字架を引き寄せた。閉じられた瞼、睫毛の先できらきらと光るのは神の加護か、天使の威光か。

    「この先も共に在りたい。あなたにも同じ様に思ってほしい……でも、それはいつものように力を振るえば叶うものではなかった。暴を競い従わせる悪魔の皆さんには、言葉や態度で気持ちを確かめるということが難しいのかもしれませんね。だから吸血鬼さんは、どうすることもできず、あなたに、あなたとの絆が続くよう祈ろうと思った。私の目にはそんな風に映りました」

    でも、とアルティナは続ける。

    「吸血鬼さんが祈る必要なんてないんだろうと思うんです。狼男さん、あなただって吸血鬼さんと同じ想いを抱いていることぐらい、見ていればわかりますもの」

    柔らかく微笑む声に悪意は感じられないが、自分の中にどうしてもその言葉を落とし込めない。それはアルティナが憎むべき天使だからか、自分の気持ちが追い付かないからなのかすら、最早ぼんやりとして不明瞭だ。
    閣下の祈りは俺に向けられたものだと?そんなことがあってたまるか。俺が閣下に祈らせるなど、どんな理由であれあってはならないことだ。
    むしろ、祈るべきは俺の方なのだ。閣下に忠誠を誓う。閣下に尽くしたい。これは俺単独で成り立つ「願い」なのだろう。しかし、これまで胸にだけ秘めていた気持ち──私と同じだけの熱を感じてほしいとあなたに向けて密かに想い続けることは、ヴァル様、あなたの言うところの「祈り」に該当すると言うのでしょうか。

    「何かのヒントになりましたか?」

    顔を覗き込まれてはたと我にかえる。こちらを見透かすような二つの青い瞳が、それでも綺麗だと思った。

    「あの狼男さんが浮かない顔をしていたからついお節介を焼いてしまいました」

    アルティナの言葉に居ても立っても居られず、足早にキッチンを後にする。勿論、主人のための温かいティーポットを手に。

    「後でヘルを請求するなよ!」
    「請求なんかしませんよ」

    テーブルの上に残された華やかに香るティーカップは、狼男さんなりのお礼の印なのでしょうから。バタバタと忙しない後ろ姿を見送って、天使は独りごちる。





    「やはりあなたに祈りは似合いません」

    主人のためティーカップを取り替えながら静かに呟く。透き通る鮮紅色の紅茶が煌めき、香る。角砂糖を落としてやると、静かに立ち上がる湯気の下で瞬く間に形を失った。

    「ヴァル様、お伝えしたいことがございます」

    テーブルを隔てて閣下の前に跪く。頭を垂れたまま、ゆっくりと言葉を絞り出す。

    「私の思い上がりでしたら、今から申し上げることはどうかお忘れください。正直に申し上げます。私はヴァル様へ忠誠以上の熱を抱いています。そして、閣下にも私のことを想ってほしいという欲望が渦巻いて、それが今にも溢れそうだと告白すれば……閣下の祈りは止められるのでしょうか」

    主人からの返事はない。物音一つない静けさに心地の悪さを覚える。静かに息を吐き、吸い、もう一度だけ、勇気を振り絞る。この悪魔(ひと)を相手に誤魔化しや偽りは要らない。洗いざらい、吐いてしまえ。そう思うと人間のする懺悔の様だと嗤えてしまえた。

    「今や脅威の去った魔界ですが、それでも私は、この先もヴァル様と共に在りたい。これだけは、お伝えしておきたかったのです。ヴァル様でなければ、誰がこんな地獄にいつまでもいたいと思うでしょう……!」

    かすかに声が震え、自分でも驚くほど緊張しているのだと知る。悪魔はそう簡単に心の内を語らない。心を知られればたちまち掌握されてしまう。気持ちを伝えることがこんなにも苦しく、恥ずかしいことだとは。「ただの執事」をこえてしまう感覚に、ぐらり目眩がする。閣下は「ただの主人」をこえてくれますか。

    「それも、そうだな」

    フッと、呆れた様な安堵の様な主人の心の声が聞こえた気がした。

    「これだけ熱烈な告白を前に、確かに祈る必要はなさそうだ」

    頭の上の方から淡々と声が降ってくる。声色から表情は窺い知れない。

    「……いつまでそうしている、フェンリッヒ。そろそろプリニー共の再教育の時間だ」

    その言葉に遠慮がちに顔を上げると、己に手が差し伸べられる。この手をとって良いものか、等と悩む間も無く手首を掴まれた。強い力で引かれ、反射的によろめき、立ち上がる。細腕の何処にこんな力があるのか、その強引さはまるで力なく手を伸ばす人間が神に掬い上げられる、そんな様を思わせた。
    腕を引かれるがまま、執務室の扉をくぐる。

    「ヴァル様!」
    「どうした」
    「この手はその……いつまで……」

    俺の方を振り返って、繋いだままの手と手首に視線が向けられる。閣下の手が緩むことはない。

    「お前がそのようでは、しばらくはこうしていないとな」

    手を離せば消えてしまいそうな、そんな顔をしているぞ、今のお前は。気恥ずかしそうにはにかむ主人の中に、その時確かに光が見えた。

    ああ、此処に祈りはあったのか。

    ヴァルバトーゼ様。
    どうかこの手を離さないでくれますようにと此処、地獄から、あなたへ祈りを捧げます。


    fin.


    ++++++++++++++++++++


    D4終盤戦で悪魔一行が祈りに対して抵抗感を露わにしたのがとても好きでした。そんな彼らがもし次に祈ることがあるとしたらどんな時だろうと煮詰めたのがこの書き散らしです。

    祈り、それは必ずしも弱き者が天に向かってするばかりではないのでしょう。地の底の悪魔から、同じ地の底にいる悪魔へ捧げられるものであっても良いのだと思います。敬愛を少し超えて、相手も同じように想ってくれはしないだろうかという、欲望にも似た感情は、けれど自分だけではどうすることもできずに、祈る。
    祈る先は勿論、ひとりぼっちでいた魔界に突如差し込んだ薄光。ヴァルバトーゼにとってのフェンリッヒ、フェンリッヒにとってのヴァルバトーゼであれと私は思います。
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    口の中、歯の一本一本を舌でなぞる。舌と舌とを絡ませ、音を立てて吸ってやる。主人を、犯している?まさか。丁寧に、陶器に触れるようぬるり舌を這わせてゆく。舌先が鋭い犬歯にあたり、吸血鬼たる証に触れたようにも思えたが、この牙が人間の血を吸うことはもうないのだろう。その悲しいまでに頑なな意思が自分には変えようのないものだと思うと、歯痒く、虚しかった。

    律儀に瞼を閉じ口付けを受け入れているのは、我が主人、ヴァルバトーゼ様。暴君の名を魔界中に轟かせたそのお方だ。400年前の出来事をきっかけに魔力を失い姿形は少々退行してしまわれたが、誇り高い魂はあの頃のまま、その胸の杭のうちに秘められている。
    そんな主人と、執事として忠誠を誓った俺はいつからか、就寝前に「戯れ」るようになっていた。
    最初は眠る前の挨拶と称して手の甲に口付けを落とす程度のものであったはずだが、なし崩し的に唇と唇が触れ合うところまで漕ぎ着けた。そこまでは、我ながら惚れ惚れするほどのスピード感だったのだが。
    ……その「戯れ」がかれこれ幾月進展しないことには苦笑する他ない。月光の牙とまで呼ばれたこの俺が一体何を 3613

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    Deep Desire【悪魔に愛はあるのか】の後日談として書きました。当社比アダルティーかもしれません。煩悩まみれの内容で上げるかどうか悩むレベルの書き散らしですが、今なら除夜の鐘の音に搔き消えるかなと駆け込みで年末に上げました。お許しください…【後日談】


    「やめ……フェンリッヒ……!」

    閣下との「戯れ」はようやくキスからもう一歩踏み込んだ。

    「腰が揺れていますよ、閣下」
    「そんなことな……いっ」
    胸の頂きを優しく爪で弾いてやると、我慢するような悩ましげな吐息でシーツが握りしめられる。与えられる快感から逃れようと身を捩る姿はいじらしく、つい加虐心が湧き上がってしまう。

    主人と従者。ただそれだけであったはずの俺たちが、少しずつほつれ、結ばれる先を探して今、ベッドの上にいる。地獄に蜘蛛の糸が垂れる、そんな奇跡は起こり得るのだ。
    俺がどれだけこの時を待ち望んでいたことか。恐れながら、閣下、目の前に垂れたこの細糸、掴ませていただきます。

    「閣下は服の上から、がお好きですよね。着ている方がいけない感じがしますか?それとも擦れ方が良いのでしょうか」
    衣服の上から触れると肌と衣服の摩擦が響くらしい。これまで幾度か軽く触れ合ってきたが素肌に直接、よりも着衣のまま身体に触れる方が反応が良い。胸の杭だけはじかに指でなぞって触れて、恍惚に浸る。

    いつも気丈に振る舞うこの人が夜の帳に腰を揺らして快感を逃がそうとしている。その姿はあまりに 2129

    last_of_QED

    MOURNING世の中に執事閣下 フェンヴァル ディスガイアの二次創作が増えて欲しい。できればえっちなやつが増えて欲しい。よろしくお願いします。【それは躾か嗜みか】



    この飢えはなんだ、渇きはなんだ。
    どんな魔神を倒しても、どんな報酬を手にしても、何かが足りない。長らくそんな風に感じてきた。
    傭兵として魔界全土を彷徨ったのは、この途方も無い飢餓感を埋めてくれる何かを無意識に捜し求めていたためかもしれないと、今となっては思う。

    そんな記憶の残滓を振り払って、柔い肉に歯を立てる。食い千切って胃に収めることはなくとも、不思議と腹が膨れて行く。飲み込んだ訳でもないのに、聞こえる水音がこの喉を潤して行く。

    あの頃とは違う、確かに満たされて行く感覚にこれは現実だろうかと重い瞼を上げる。そこには俺に組み敷かれるあられもない姿の主人がいて、何処か安堵する。ああ、これは夢泡沫ではなかったと、その存在を確かめるように重ねた手を強く結んだ。

    「も……駄目だフェンリッヒ、おかしく、なる……」
    「ええ、おかしくなってください、閣下」

    甘く囁く低音に、ビクンと跳ねて主人は精を吐き出した。肩で息をするその人の唇は乾いている。乾きを舌で舐めてやり、そのまま噛み付くように唇を重ねた。
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    此処は、魔界。魔神や邪神はいても救いの手を差し伸べる神はいない。そもそも祈る等という行為が悪魔には馴染まない。この暗く澱んだ場所で信じられるのは自分自身だけだと、長らくそう思ってきた。

    「お前には祈りと願いの違いが分かるか?」

    魔界全土でも最も過酷な環境を指す場所、地獄──罪を犯した人間たちがプリニーとして生まれ変わり、その罪を濯ぐために堕とされる地の底。魔の者すら好んで近付くことはないこのどん底で、吸血鬼は気まぐれに問うた。

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    そんな主人と、執事として忠誠を誓った俺はいつからか、就寝前に「戯れ」るようになっていた。
    最初は眠る前の挨拶と称して手の甲に口付けを落とす程度のものであったはずだが、なし崩し的に唇と唇が触れ合うところまで漕ぎ着けた。そこまでは、我ながら惚れ惚れするほどのスピード感だったのだが。
    ……その「戯れ」がかれこれ幾月進展しないことには苦笑する他ない。月光の牙とまで呼ばれたこの俺が一体何を 3613

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    「やめ……フェンリッヒ……!」

    閣下との「戯れ」はようやくキスからもう一歩踏み込んだ。

    「腰が揺れていますよ、閣下」
    「そんなことな……いっ」
    胸の頂きを優しく爪で弾いてやると、我慢するような悩ましげな吐息でシーツが握りしめられる。与えられる快感から逃れようと身を捩る姿はいじらしく、つい加虐心が湧き上がってしまう。

    主人と従者。ただそれだけであったはずの俺たちが、少しずつほつれ、結ばれる先を探して今、ベッドの上にいる。地獄に蜘蛛の糸が垂れる、そんな奇跡は起こり得るのだ。
    俺がどれだけこの時を待ち望んでいたことか。恐れながら、閣下、目の前に垂れたこの細糸、掴ませていただきます。

    「閣下は服の上から、がお好きですよね。着ている方がいけない感じがしますか?それとも擦れ方が良いのでしょうか」
    衣服の上から触れると肌と衣服の摩擦が響くらしい。これまで幾度か軽く触れ合ってきたが素肌に直接、よりも着衣のまま身体に触れる方が反応が良い。胸の杭だけはじかに指でなぞって触れて、恍惚に浸る。

    いつも気丈に振る舞うこの人が夜の帳に腰を揺らして快感を逃がそうとしている。その姿はあまりに 2129

    last_of_QED

    CAN’T MAKE十字架、聖水、日の光……挙げればきりのない吸血鬼の弱点の話。おまけ程度のヴァルアル要素があります。【吸血鬼様の弱点】



    「吸血鬼って弱点多過ぎない?」
    「ぶち殺すぞ小娘」

    爽やかな朝。こともなげに物騒な会話が繰り広げられる、此処は地獄。魔界の地の底、一画だ。灼熱の溶岩に埋めつくされたこの場所にも朝は降るもので、時空ゲートからはささやかに朝の日が射し込んでいる。

    「十字架、聖水、日の光辺りは定番よね。っていうか聖水って何なのかしら」
    「デスコも、ラスボスとして弱点対策は怠れないのデス!」
    「聞こえなかったか。もう一度言う、ぶち殺すぞアホ共」

    吸血鬼の主人を敬愛する狼男、フェンリッヒがすごみ、指の関節を鳴らしてようやくフーカ、デスコの両名は静かになった。デスコは怯え、涙目で姉の後ろに隠れている。あやしい触手はしなしなと元気がない。ラスボスを名乗るにはまだ修行が足りていないようだ。

    「プリニーもどきの分際で何様だお前は。ヴァル様への不敬罪で追放するぞ」

    地獄にすら居られないとなると、一体何処を彷徨うことになるんだろうなあ?ニタリ笑う狼男の顔には苛立ちの色が滲んでいる。しかし最早馴れたものと、少女は臆せず言い返した。

    「違うってば!むしろ逆よ、逆!私ですら知ってる吸血鬼の弱 3923

    last_of_QED

    DONEしがない愛マニアである私が原作の奥に想い描いた、ディスガイア4、風祭フーカと父親の話です。銀の弾は怪物を殺せるか?【銀の弾など必要ない】



    白衣が揺れる。頭をかいてデスクに向かうそのくたびれた男に私は恐る恐る声を掛ける。

    「パパ、お家なのにお仕事?」

    男はこちらを振り返りもしない。研究で忙しいのだろうか。それとも、私の声が届いていないのだろうか。
    父親の丸まった背中をじっと見つめる。十数秒後、その背がこわごわと伸び、首だけがわずかにこちらを向く。

    「すまん、何か言ったか?」

    この人はいつもそうだ。母が亡くなってから研究、研究、研究……。母が生きていた頃の記憶はあまりないから、最初からこんな感じだったのかもしれないけれど。それでも幼い娘の呼び掛けにきちんと応じないなんて、やはり父親としてどうかしている。

    「別に……」

    明らかに不満げな私の声に、ようやく彼は腰を上げた。

    「いつもすまんな。仕事が大詰めなんだ」

    パパのお仕事はいつも大詰めじゃない、そう言いたいのをぐっと堪え、代わりに別の問いを投げかける。

    「いつになったらフーカと遊んでくれる?」

    ハハハ、と眉を下げて笑う父は少し疲れているように見えた。すまんなあ、と小さく呟き床に胡座をかく。すまん、それがこの人の口癖だった。よう 3321

    last_of_QED

    DONER18 執事閣下🐺🦇「うっかり相手の名前を間違えてお仕置きプレイされる主従ください🐺🦇」という有難いご命令に恐れ多くもお応えしました。謹んでお詫び申し上げます。後日談はこちら→ https://poipiku.com/1651141/5571351.html
    呼んで、俺の名を【呼んで、俺の名を】



     抱き抱えた主人を起こさぬよう、寝床の棺へとそっと降ろしてやる。その身はやはり成人男性としては異常に軽く、精神的にこたえるものがある。
     深夜の地獄はしんと暗く、冷たい。人間共の思い描く地獄そのものを思わせるほど熱気に溢れ、皮膚が爛れてしまうような日中の灼熱とは打って変わって、夜は凍えるような寒さが襲う。悪魔であれ、地獄の夜は心細い。此処は一人寝には寒過ぎる。

     棺桶の中で寝息を立てるのは、我が主ヴァルバトーゼ様。俺が仕えるのは唯一、このお方だけ。それを心に決めた美しい満月の夜からつゆも変わらず、いつ何時も付き従った。
     あれから、早四百年が経とうとしている。その間、語り切れぬほどの出来事が俺たちには降り注いだが、こうして何とか魔界の片隅で生きながらえている。生きてさえいれば、幾らでも挽回の余地はある。俺と主は、その時を既に見据えていた。堕落し切った政腐を乗っ取ってやろうというのだ。
    2926