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    last_of_QED

    @last_of_QED

    ディスガイアを好むしがない愛マニア。執事閣下、閣下執事、ヴァルアルやCP無しの地獄話まで節操なく執筆します。デ初代〜7までプレイ済。
    最近ハマったコーヒートーク(ガラハイ)のお話しもちょびっと載せてます。

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    last_of_QED

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    フェンヴァル🐺🦇【装備品をあなたへ】これは、ただの装備品。

    #ディスガイア4
    disgaea4
    #フェンヴァル
    fenval
    #執事閣下
    deacon

    【装備品をあなたへ】 命乞いの悲鳴があがる。しかし赦しの言葉が返ることはない。剣で骨肉を貫く鈍い音、続いて断末魔が響くとやがて周辺には静寂が訪れた。

    「口ほどにもなかったな」
    「さすがは我が主。鮮やかな剣捌きでございました」

     誰もいなくなった毒の湿地帯。吸血鬼ヴァルバトーゼとそのシモベである狼男フェンリッヒは目配せをするとようやく警戒をといた。
     構えていた剣、或いは拳をおさめた二人の悪魔の元にはご褒美のアイテムがふわり舞い降りて来る。邪神の慈悲、或いは超常現象か。魔界では「そういうものとして在る」ボーナスゲージの報酬にもはや両名が疑問を呈することはない。フェンリッヒは宙へ手を伸ばすといくつかのアイテム、HLをグローブの手中に収めた。日頃、装備品の管理を任されている彼はそれらのアイテムを携行するものと倉庫へ送るものとに手早く仕分けていく。

    「おや、これは……」
    「どうした?」

     フェンリッヒは拾得物のひとつである「デビルリング」だけを主へと丁重に差し出した。

    「ヴァル様、こちらをどうぞ。──『高貴な悪魔が身につける、貴族のシンボル』でございます」
    「……地獄にいる悪魔が高貴であるものか」

     フェンリッヒの皮肉にヴァルバトーゼはやれやれとため息を吐き、しかし差し出されるままにリングを受け取った。そしてアイテムのステータスを確認した後でおや、と首を傾げる。「らしくない」と思ったのだ。

     主よりアイテム管理を一任されているフェンリッヒはその場の状況に応じて地獄党の面々へ装備品他、戦利品を割り振り与えていた。その際、その時点で持ち得る最善最優の武器、防具をヴァルバトーゼへ装備させるのがシモベたる彼の常だった。より良いアイテムを入手すれば当然のごとくヴァルバトーゼへと手渡され、外されたお下がりが今度は別の悪魔へと支給されていく。いつまでたってもランクの低い服を着ている仲間たちを見かね、ヴァルバトーゼは幾度もそのことを諌めたがフェンリッヒは、そして党の悪魔たちさえも首を横に振るのだった。

    「閣下、これはわたくしの依怙贔屓によるものではございません。こうすることこそが打倒政腐を掲げる地獄党にとっての最適解なのです。今ある資源を使い、今出来る最大を捧げ……あなた様だけは何としてでも生かします」

     ヴァル様の指揮を失っては遅かれ早かれわたくしも党員も黄泉行きでしょうからね、と肩をすくめ笑っていたシモベの姿をヴァルバトーゼは思い出す。
     だからこそ不思議だった。今しがた手渡されたデビルリングはこれまでの経験則には反するものだった。無論、悪くはないが最善ではない。最優ではない。特別なイノセントの気配も感じないこのリングをあえてフェンリッヒが寄越したことには何か意味があるように思えてならなかった。

    「ヴァル様、お手を」

     言われるがままに手を差し出せば白手袋が外される。素肌の指先に狼男の手によって妖しく輝くリングが通される。そしてそれが薬指の根本で止まったのを目にして、ヴァルバトーゼは息を呑んだ。

    「フェンリッヒ、お前……揶揄っているな!?」
    「揶揄ってなどおりません。例えプリニー教育係に成り下がろうともあなた様の崇高なお心に変わりはないのですから」
    「や、そうではなくてだな……」
    「?」
    「い、いや、良い。忘れてくれ」

     頬を赤らめそわそわと落ち着かないヴァルバトーゼとは裏腹に、狼男は顔色ひとつ変わらない。そこにいるのはただ、穏やかな眼差しで指に触れる、甲斐甲斐しい従者だけである。薬指を選んだことに深い意味など無いのか、どうなのか。吸血鬼は真相を掴めない。

    「う、うむ! サイズも丁度だ! ステータスの底上げは重要だからな。助かったぞ、フェンリッヒ」
    「滅相もございません。全ては、我が主のために」

     恭しく頭を下げるフェンリッヒの前でいそいそと白手袋を嵌め直すヴァルバトーゼ。彼らの視界から消えたデビルリングは、しかし不思議と熱を持ってヴァルバトーゼの指に存在を主張した。

    「フェンリッヒ」
    「はい、ヴァル様」
    「もう一度聞くが……俺を揶揄っているのではあるまいな?」
    「揶揄う? 何のことでしょうか」

     今度は口角を上げて見せたフェンリッヒ。その少々意地の悪い笑みに確信を得たヴァルバトーゼは顔を真っ赤にして、マントを翻す。そして地獄へ繋がる時空ゲートとは真逆の方向へと靴先を向けた。

    「ヴァル様? 一体どちらへ……」
    「決まっているだろう。やられっぱなしでは俺も気が済まん」

     吸血鬼は振り返るとぎこちなく手を伸ばす。

    「お前の分がないだろう。──デビルリング、もうひとつ探しに行くぞ」

     今度は狼男が顔を赤らめる番だった。
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    DOODLE主人に危機感を持って貰うべく様々なお願いを仕掛けていくフェンリッヒ。けれど徐々にその「お願い」はエスカレートしていって……?!という誰もが妄想した執事閣下のアホエロギャグ話を書き散らしました。【信心、イワシの頭へ】



    「ヴァルバトーゼ閣下〜 魔界上層区で暴動ッス! 俺たちの力じゃ止められないッス!」
    「そうか、俺が出よう」

    「ヴァルっち! こないだの赤いプリニーの皮の件だけど……」
    「フム、仕方あるまいな」

    何でもない昼下がり、地獄の執務室には次々と使い魔たちが訪れては部屋の主へ相談をしていく。主人はそれに耳を傾け指示を出し、あるいは言い分を認め、帰らせていく。
    地獄の教育係、ヴァルバトーゼ。自由気ままな悪魔たちを良く統率し、魔界最果ての秩序を保っている。それは一重に彼の人柄、彼の在り方あってのものだろう。通常悪魔には持ち得ない人徳のようなものがこの悪魔(ひと)にはあった。

    これが人間界ならば立派なもので、一目置かれる対象となっただろう。しかし此処は魔界、主人は悪魔なのだ。少々横暴であるぐらいでも良いと言うのにこの人は逆を征っている。プリニーや地獄の物好きな住人たちからの信頼はすこぶる厚いが、閣下のことを深く知らない悪魔たちは奇異の目で見ているようだった。

    そう、歯に衣着せぬ言い方をしてしまえば、我が主人ヴァルバトーゼ様は聞き分けが良過ぎた。あくまでも悪魔なので 7025

    last_of_QED

    MOURNING世の中に執事閣下 フェンヴァル ディスガイアの二次創作が増えて欲しい。できればえっちなやつが増えて欲しい。よろしくお願いします。【それは躾か嗜みか】



    この飢えはなんだ、渇きはなんだ。
    どんな魔神を倒しても、どんな報酬を手にしても、何かが足りない。長らくそんな風に感じてきた。
    傭兵として魔界全土を彷徨ったのは、この途方も無い飢餓感を埋めてくれる何かを無意識に捜し求めていたためかもしれないと、今となっては思う。

    そんな記憶の残滓を振り払って、柔い肉に歯を立てる。食い千切って胃に収めることはなくとも、不思議と腹が膨れて行く。飲み込んだ訳でもないのに、聞こえる水音がこの喉を潤して行く。

    あの頃とは違う、確かに満たされて行く感覚にこれは現実だろうかと重い瞼を上げる。そこには俺に組み敷かれるあられもない姿の主人がいて、何処か安堵する。ああ、これは夢泡沫ではなかったと、その存在を確かめるように重ねた手を強く結んだ。

    「も……駄目だフェンリッヒ、おかしく、なる……」
    「ええ、おかしくなってください、閣下」

    甘く囁く低音に、ビクンと跳ねて主人は精を吐き出した。肩で息をするその人の唇は乾いている。乾きを舌で舐めてやり、そのまま噛み付くように唇を重ねた。
    吐精したばかりの下半身に再び指を這わせると、ただそれだけで熱っぽ 4007

    last_of_QED

    BLANK【5/24 キスを超える日】ほんのり執事閣下【524】



     かつてキスをせがまれたことがあった。驚くべきことに、吸血対象の人間の女からだ。勿論、そんなものに応えてやる義理はなかったが、その時の俺は気まぐれに問うたのだ。悪魔にそれを求めるにあたり、対価にお前は何を差し出すのだと。
     女は恍惚の表情で、「この身を」だの「あなたに快楽を」だのと宣った。この人間には畏れが足りぬと、胸元に下がる宝石の飾りで首を絞めたが尚も女は欲に滲んだ瞳で俺を見、苦しそうに笑っていた。女が気を失ったのを確認すると、今しがた吸った血を吐き出して、別の人間の血を求め街の闇夜に身を隠したのを良く覚えている。
     気持ちが悪い。そう、思っていたのだが。
     ──今ならあの濡れた瞳の意味がほんの少しは分かるような気がする。

    「閣下、私とのキスはそんなに退屈ですか」
    「すまん、少しばかり昔のことを思い出していた」
    「……そうですか」

     それ以上は聞きたくないと言うようにフェンリッヒの手が俺の口を塞ぐ。存外にごつく、大きい手だと思う。その指で確かめるよう唇をなぞり、そして再び俺に口付けた。ただ触れるだけのキスは不思議と心地が良かった。体液を交わすような魔力供給をし 749

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    DONEディスガイア4で悪魔一行が祈りに対して抵抗感を露わにしたのが好きでした。そんな彼らがもし次に祈るとしたら?を煮詰めた書き散らしです。【地獄の祈り子たち】



    人間界には祈る習慣があるという。どうしようもない時、どうすれば良いか分からぬ時。人は祈り、神に助けを乞うそうだ。実に愚かしいことだと思う。頭を垂れれば、手を伸ばせば、きっと苦しみから助け出してくれる、そんな甘い考えが人間共にはお似合いだ。
    此処は、魔界。魔神や邪神はいても救いの手を差し伸べる神はいない。そもそも祈る等という行為が悪魔には馴染まない。この暗く澱んだ場所で信じられるのは自分自身だけだと、長らくそう思ってきた。

    「お前には祈りと願いの違いが分かるか?」

    魔界全土でも最も過酷な環境を指す場所、地獄──罪を犯した人間たちがプリニーとして生まれ変わり、その罪を濯ぐために堕とされる地の底。魔の者すら好んで近付くことはないこのどん底で、吸血鬼は気まぐれに問うた。

    「お言葉ですが、閣下、突然いかがされましたか」

    また始まってしまった。そう思った。かすかに胃痛の予感がし、憂う。
    我が主人、ヴァルバトーゼ閣下は悪魔らしからぬ発言で事あるごとに俺を驚かせてきた。思えば、信頼、絆、仲間……悪魔の常識を逸した言葉の数々をこの人は進んで発してきたものだ。 5897