カタンカタン、と細かく揺れる座席、手元のスマートフォンを眺める乗客たち。
夕焼けの差し込む電車内はほどほどに混雑していた。
ユニットの仕事があるときは誠司さんや英雄さんと一緒だし、たまに一緒になる清澄も同じ電車に乗るから、ひとりの帰り道というのは珍しかったりする。
ぼんやりと手元の端末を眺めながら今日の打ち合わせの内容を振り返る。
雑誌のグラビア特集、か。名指しで俺を選んでくれたなんて嬉しいな。大人っぽい撮影ってどんな感じなんだろう。
「次は――駅、お出口は右側です」
ふと車内アナウンスが耳に飛び込んでくる。
何気なく顔を上げると、何故か見慣れたホームが目に飛び込んでくる。
「あ、」
ここ、清澄の乗り換え駅だ。
駅名が無意識に刷り込まれていたらしい。それではまた、と小さく一礼して電車を降りていく清澄。姿勢の良い後ろ姿。去り際の微笑みが脳内から離れない。
いるはずのない影を追っていた自分に気づき、俺は思わず口元を緩めた。
LINKを開いて意味もなくメッセージを送る。
清澄、今何してるかな。
数秒後についた既読の文字に、俺は胸が踊った。