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    おはずかしい

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    ギャグです
    なんでも許せる人向け
    メインストしんどすぎて書いた幻覚
    なぜかネファになるしフィガロが怪我します

    東の国地下水路完全攻略RTA 地下水路は真っ暗で、ざあざあと水の流れる音だけが響いていた。

     倒れ込んできたネロの背中に触れたファウストが一瞬息を飲んだのがわかった。だがそれは刹那のことで、すぐに気を取り直したらしかった。
    「ヒースだ……!」
     シノの切羽詰まった声が聞こえる。闇の向こうから唸り声が聞こえた。
    「ヒースは……厄災の傷で過度の恐怖や不安を感じると黒い獣になるんだ!」
    (あれがヒース……?)
     抱えきれなくなったらしく、シノは叫んだ。流れる水音の向こうは静かだが水中を獣が動き回っていたとしても音ではわからないだろう。ファウストは水から上がってネロと少女を水路の隣にある歩道に横たわらせると距離を取り、魔法で灯りを灯した。敵襲に備えて、視界が良くなりすぎないごく小さい明かりだ。
    「ヒース、こっちにこい!」
     ファウストが叫ぶと、ターゲットを見つけた黒豹がしなやかに跳躍し水から上がってくる。水に濡れた毛並みはファウストの灯した弱い光を反射し、艶めいていた。
     黒豹はしなやかな肢体でじりじりとファウストとの間合いを詰めていく。ファウストの緊張感がみなぎるのが手にとるようにわかった。
    「ファウスト……」
     ネロが横たわりながらうめくように呟いた。その声には心底の心配と、己の無力さに対する悔しさが滲んでいた。
     ヒースクリフが脚に力を込めて今にもファウストに飛び掛からんとしたその時、意外なことが起こった。ファウストが破顔したのである。
    「可愛い……!」
    「「ファウスト!?」」
     地下水路ではざあざあという水音と、困惑の声が重なった。
    「ヒースなのか? ……猫になっても美しいな」
     ファウストは感嘆しながらも自らが優位だという姿勢を崩さずすたすたと近寄り、慣れた手つきでヒースクリフの背中を撫でた。ヒースクリフも酷く警戒している様子だったが、意外な展開に呆気に取られているらしい。ファウストが何度か背中を撫でていると、警戒はしているものの反抗することもなくされるがままだった。
    「よしよしいいこいいこかわいいかわいいよしよしよしよしよしよしよしよし」
     ヒースクリフが噛み付かないのをいいことに、ファウストはヒースクリフを撫でて撫でて撫でまくった。猫で磨いたスキルを用いて、ヒースクリフの体の全部を撫でに撫でた。ファウスト自身可愛がることに夢中になっているようだ。
    「先生……猫科ならなんでもいいのかよ……」
     またしても横たわったネロがうめく。シノは体が水で冷えていくのにも構わず、固唾を飲んでヒースクリフとファウストの成り行きを見守っていた。気が気ではないのだろう。幼馴染が大事な師匠を傷付けるかもしれない。それを本人が知ったら絶対に落ち込む。心が不安でいっぱいだった。
    「ヒース……」
     ついにヒースクリフはファウストに寝転んで腹を見せ、喉をゴロゴロ鳴らし始めた。ファウストもその場に腹這いになって服が汚れるのも構わず全力で大きい猫を可愛がる。数分ほどなでなでを続けた頃だろうか。ヒースクリフの体がキラキラと瞬き元の少年の体に戻ったではないか。
    「ヒース!」
     シノが叫び、駆け寄る。
    「うん……? 俺は一体何を? ノーヴァは?」
    「ヒース! 良かった!」
    「シノ! いつの間に合流したんだ? あ、先生も!」
     ファウストの存在に気付いた瞬間に声が一気にうわずった。ヒースクリフはファウストが大好きなのである。
    「あれ!? ていうか俺、裸……!?」
    「ああ、色々とあってな。だが今はそれどころじゃない」
     ファウストはそう言いながらおもむろに後ろを振り返った。薄暗い地下水路には蜘蛛のようなオートマタがいた。
    「オートマタだ!」
     当然の感想ではあるが、ファウストがヒースを撫でている間にこのオートマタは何もせず止まってたんかいというツッコミは野暮である。
     オートマタは耳障りなギチギチという金属が擦れる音を鳴らし、八本ある脚を器用に動かし、魔法使い達に近づいてきた。脚が生えている体の上には顔が載っていて、頭部は四方向に仮面が誂えてあり全方向を隙なく見渡している。
    「なんなんだあれ」
     シノが低い声をさらに緊張で低くする。
    「ノーヴァが作ったオートマタだと思う。多分……おそらく、魔法科学兵器の駆動装置が組み込まれているんじゃないかな」
     ヒースクリフはつぶやくようにそう言うと、自身が全裸であることなどすっかり忘れてじっとその動きに見入った。
    「しかしすごいな……あんなオートマタ、初めて見た。蜘蛛をそのまま巨大にすると自身の体重を支えられなくて自壊するらしいって聞いたことがあるけどあのオートマタは違うらしいな……魔法科学兵器がそれを可能にしているのか?……」
     オタク特有の早口でブツブツと独り言を言いながら感心するヒースクリフを横目に、ファウストはネロに駆け寄り応急処置を施した。
    「遅くなってすまないな。痛むか?」
    「いいや、構わねえよ……いてて」
     ファウストは小さく呪文を唱えた。
    「まず僕の魔力で傷口に蓋をする。とりあえず血は止まるはずなんだが……頼むから死なないでくれよ」
     その語尾は揺れていて、ネロは思わず笑ってしまった。
    「死なねえよ」
    「君はそう言って皆を置いていくタイプだ」
     ファウストは自らの魔力を薄く固く練り上げてネロの傷口を覆った。肌に、肉に、細胞に、癒着するように染み込ませていく。
    「先生、出過ぎた真似だとはわかっているんですが、俺にやらせてもらえませんか」
     ヒースクリフが数歩後退りながらファウストに目配せをした。
    「できるのか?」
    「おそらく。シノに手伝ってもらえれば」
    「構わない。どうするつもり?」
     話している間にもオートマタはじりじりと間合いを詰めていた。
    「多分、あれは何かを察知して攻撃してくるんじゃないかと思うんです」
    「何かとは?」
     ファウストはほとんどネロを抱き抱えるようにして尋ねた。
    「わかりません。音や動きやそういうもののはずです」
    「何故そう言い切れる」
    「センサーらしきパーツが見えます。それがこちらを向いているので既に何かを感知しているはずなんです」
    「なるほど」
    「流水があるわけだから音や動きじゃないな。……光か……あるいは魔力かもしれません」
    「やってみなさい。ハードな実地訓練だ」
     ファウストは苦虫を噛み潰した顔で言った。内心かわいいと思っているのだろう。
    「ファウスト先生! ありがとうございます!」
     ヒースクリフは顔を輝かせた。
    「俺がバラしてまた組み立ててやりますよ……」
     その微笑みはややぎらついていた。
    「指示を。我が君?」
     いつの間にか全裸のヒースクリフの横にシノが不敵な笑みを浮かべながら立っていた。その姿は先程の不安そうな様子とうって変わっていて、見るからに頼もしい。
    「脚を狙え」
     凛とした声だ。聞く者の迷いを断ち切るような、ついていきたくなるような。
    「駆動装置でテコ入れしても機械だから接合部分が弱いはずだ。あの設計じゃ歩くときにかなりの負担がかかってるのは間違いない。まだ試作品か芸術品って感じだね」
    「シノ」
     大きく頷いたシノにファウストが声をかける。
    「従者たるもの」
     シノが目を見開いた。
    「ヒースの体の一部になれ。世界一使いやすい武器に。世界一安心して身を任せられる盾に。ヒースの考えの先の先を読め。よく見て気を配れ。僕は……そうされるのがありがたく、楽だった」
     ファウストが息を吐くと、シノが生意気に笑った。
    「当たり前だ」
    「そして、不必要に傷つくな。絶対に。ヒースの一部だという自覚を持て」
     シノは微妙な表情を浮かべたが、ファウストは有無を言わせなかった。
    「返事は?」
    「はいはい」
    「行ってこい、僕もネロの手当てをもう少ししたら援護する」
    「早くしろよ? じいさん達」
    「シノ!」
    「ああ、それと」
     たしなめるヒースクリフを無視して、シノはうなじを手袋でごしごしと擦った。それがどういうものか、ファウストの首の傷を見てシノはすっかりわかっているのだ。
    「俺はヒースのものだって言ってるだろ」
     それを見てファウストは複雑な表情を浮かべた。頼もしい一方で心配にもなる。
     ファウストの気も知らないで、二人は軽快な足取りで駆け出していく。外套でも着せてやれば良かったな、とファウストが後悔する方が遅かった。
     そして、ファウストはネロの体を仰向けに寝かせて、命があることを確かめるように抱き寄せた。ネロは先程からほとんどしゃべらず、体は濡れて冷えていて、呼吸も弱い。
    「……ボス……」
    「ネロ」
    「ん……せんせ……?」
     ネロがぼんやりと目を開いたのでファウストは微笑した。
    「受け止めてくれ。君と僕なら大丈夫なはずだ」
     そう言うと、ファウストはネロに覆い被さり唇と唇を合わせた。体液を介した魔力供給。一時的にネロの体を動かし全員で生きて帰るための最終手段だった。与えた魔力が尽きればネロはまた動けなくなってしまうが、自らの治癒魔法の能力、残された時間と倒さねばならない敵、それらの条件を加味して、そうすることが最適解だとファウストは判断した。
     がっちり抱き合い、お互いの唾液を大量に交換し深くまで貪る。体も心も繋げて、命を分ける。レーティング12+のアプリでは考えられないような濃厚な粘膜の接触であった。
    「あ……ファウスト……俺……」
    「ああ、良かった。これも長くは持たないだろうが、僕にできるのはこれくらいだから」
    「あんた、優しすぎるよ。俺のことなんか見捨てりゃいいのにさ……」
     ネロは湿度を増し、ネロネロし始めた。
    「嫌だね。晩酌をする友達がいなくなる。もう失うのはまっぴらさ」
     ファウストがうんざりだという顔をしながら肩をすくめると、ネロはくすぐったそうに笑った。
    「お前ら! いちゃいちゃしてないで手伝え!」
     シノの怒号が飛ぶ。オートマタは何度かシノの大鎌に捉えられはしたもののまだ健在で、ギリギリのところでくるりと回転して器用に攻撃を躱していた。
    「すみません! 援護願います! 複数で同時に攻撃すれば仕留められるのではないかと!」
     ヒースクリフも叫んだ。飛び散ったオートマタの装甲で股間を隠しながら軽やかに立ち回るヒースクリフの姿を見て、なかなか前途有望な生徒だとファウストは誇らしく思った。
    「ネロ、いくぞ」
    「ああ」
     二人は身を起こすとひらり稲妻の速さで飛び出した。


     そんなわけで東の国の魔法使いはノーヴァの作った殺人マシーンをものの見事に撃破した。
     ヒースクリフは服を着るのも忘れてウキウキでオートマタの破片を回収し、シノはただただ得意顔であった。ネロは意味もなくファウストにくっついたし、ファウストもまんざらではなさそうである。


     東の魔法使いはより強固な連帯感を新たに身にまとい、とはいえ負傷もしているのでなんとかかんとか地下水路を移動し、マンホールから地上にでた。
     よろよろと支え合って地上に上がる彼らを、レノックスに呼ばれたフィガロとブラッドリーがタイミングよく見つけることが出来た。

     …………あ。

     ファウストに担がれた瀕死のネロを目にして、フィガロの目があやしく輝いた。南と北の国もなんやかんやあって状況がくんずほぐれつになっているのである。その辺の事情は各自想像してほしい。
    「ネロを助けてほしい?」
     フィガロはブラッドリーに尋ねた。
    「俺はネロを助けることができる。もしお前が俺の要求を飲んでくれるならね」
     フィガロは勝ち誇ったような2000年もののいやらしい微笑みを浮かべた。なーにが南の優しいお医者ちゃんじゃいと言う読者のツッコミが聞こえてきそうな邪悪な微笑みである。
    「ブラッド……俺はいい……要求は飲むな」
     地下水路から地上には出たものの、もう自力では動けず道に横たわったネロは、息も絶え絶えになりながらうわごとのように呟いた。
    「俺のことはいいんだ……俺はあんたを……」
     最後まで言葉を紡ぐことなくネロがそっと瞼を閉じた時、躍り出てくる者がいた。
    「ファウスト・激昂・ラウィーニアパンチ!!!!!」
     ファウストだ。ファウストが思いっきり助走をつけてフィガロを殴った。
    「ファウスト様! フィガロ様!!」
     フィガロは殴られた勢いのまま無抵抗で壁に叩きつけられた。激しく頭をごつごつした石壁にぶつけていて、かなり痛そうである。
    「貧弱……」
     レノックスの正直レビューが物悲しく響いた。
    「フィガロ様! ネロは僕の大事な友人です! 今すぐ治してやってください。僕は……僕は彼のいない人生なんて考えられません。でないとまた助走をつけてフィガロ様を殴ってしまうかも…………今度は無事では済まないかもしれません!」
     ファウストの心からの言葉であった。それはもう心のまま純度100パーセントの正直な本音であった。仲間が死にそうな時に何をほざいているのか。そんな怒りが言外に溢れまくっていた。
    「いや今も別に無事ではないんだけど」
     フィガロは額に垂れた血をハンカチで拭った。
    「ていうか俺、まあまあな怪我じゃない?」
     フィガロのハンカチはみるみるまに血で染まっていく。
    「うわ、やべ……見えてる」
     フィガロの挫傷を見たブラッドリーが心底気の毒そうにつぶやいた。
    「え、何が……?」
     不安そうなフィガロを無視して、ファウストはすっかり弟子モードに入ってきゅるるんと上目遣いでフィガロを見つめ、手を握った。ファウストはフィガロを尊敬している。それは本当である。なので嘘ではない。フィガロの人間性に心底怒っているだけで。
     真っ直ぐでキラキラと輝くまんまるな瞳で見つめてくるファウストを見て、フィガロは大きな大きなため息をついたのだった。
    「俺、昔からこの顔に弱いんだよね……」
     フィガロはかなりものすごくしぶしぶといった様子でネロに治癒魔法をかけ、ネロは一命をとりとめた。



     東の国の商人の娘は、なんじゃこの感情の重たい男たちは、私のことをもうちょっとチヤホヤせんかい、と白けた顔で全ての成り行きを聞きながらヒースクリフの股間を見つめていた。



     殿戦って何それおいしいの?


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     気が気じゃなさすぎて書きました 来月の更新が怖いですね〜!!😭
     おしまい
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