合同誌サンプル朝のうちに魔法舎を出て、自宅に着いたのは昼過ぎだった。心地のいい春風が頬を撫で、通り過ぎていく。家の窓を開け放って空気の入れ替えをしたり、軽く掃除をして家の手入れをしてから、おやつの入ったバスケットを持って僕たちは森に散歩に出かけた。
嵐の谷の僕の家は、人気のない山の中にある。
ネロと二人連れ立って森に分け入れば、無数にいる精霊の反応が連鎖反応的に広がってあたりを染めていく。植物が早送りで生い茂ったり、命を枯らしたり、ホタルに似た虹色の光が僕たちを誘うように線を描いて飛び交ったり。この一帯は僕の縄張りであり、久しぶりの帰還のためか僕を歓迎するようにざわめいていた。隣を歩いているネロも喜びの気配を感じたようで、僕の顔を見て穏やかに微笑む。
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