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    ◇注意!
    何でも許せる方のみ。深いこと考えたら駄目だ。
    ヘビースモーカーなK学同期原作知識ありトラ転女主です。

    ※本当の名前(トラ転前の名前)を明かせば存在自体が無かったことになる世界で、それでもお互いに恋情を持っていたfryのみは彼女のことを覚えていたら。



    ?「これは、駄目な私の [[rb: I F > しあわせな]] 物語」

    #オリ主
    oligarch
    #fry
    #decn夢

    医療従事者の方々にはマジで申し訳ねぇ!▼僕が欲しいもの▼


    懐かしい場所に呼び出され《少し曰わく付きな彼女》が誰にも明かさなかった本名を教えてくれた。そして突然の『さよなら』を口にした瞬間、目の前のその身が砂のようにサラサラと消えはじめる。『目的を達成したらどうなるかわからない』と言っていた癖に、知っていたんじゃないか。どうにか抱き締めようとしたのに間に合わず伸ばした手の中にキラキラしたものを掴めただけで、手を開くと同時にそれも消えてしまった。彼女の吸っていたタバコの香りだけが残っている。僕には将来を共に歩むのならキミしか居ないのに、どうして。それからこの世から彼女を知る人間が消えた。警察学校同期達をはじめ彼女と親しくしていた者や彼女に関する情報全てが元より存在しなかったかのようにそれとなく改変され何も無い。彼女が好んで吸っていたタバコに火をつけ、あの日からもう何年もこのタバコを吸わなければ眠れないという事態に陥っている。重症だ。最早これは自傷行為に近いなと苦笑した。

    彼女が消えて三年が経ち、赤井秀一がなんの知らせもなく目の前に姿を現す。気に食わないのは相変わらずだが、話し合いもして今は仕事上頼りになる奴だった。顔を合わせるのは合同調査くらいなのだが赤井はこちらが手にするタバコに目を向けては苦笑している。その反応に引っかかりを覚えた。もしや彼女の事を覚えているのか、はたまた吸わなかったタバコをよく吸っているから思うことがあるのか。

    赤井「降谷君に手紙がある。キミは忘れていないようだな。俺は何故かこの手紙が手元にあって、今日この日に手紙を届けろとメモがされていたんだ。それで全て思い出したよ……彼女の事を」

    差し出された手紙の文字を見て確信する。手を震わせながらその場で開封し目を見開いた。


    『貴方は幸せですか?』


    厚紙のカードにはたった一言そう綴られている。赤井はなんて書いてあるのか気になるようで、昔なら無視して背を向けただろうが今は唯一彼女を覚えている人間だ。短い文字を読み上げるとカードは煙のように消えて封筒のみが手元に残った。また目の前から消えるのかと掴めなかったものに唖然としていれば、赤井は面白そうに封筒を見つめている。

    赤井「返事を書いてみたらどうだ」
    降谷「この世に存在せず宛先も知らないのにどう返事をしろと?」
    赤井「真面目だな。降谷くんはもう少し頭を柔らかくして考えるべきだ。たまにはファンタジー小説でも読んでみてはどうかな?」

    すると赤井は彼女が面白かったと言っていたラノベのタイトルを数冊あげた。オススメされたが読んでいなかったと今になって思い出す。

    降谷「…………やってみます」
    赤井「そう不機嫌そうな顔をするな。アメリカから律儀に手紙をここまで手渡しに来たんだぞ?そのままポスティングしても良かったが、わざわざ俺の手元に現れたんだから何か理由があるのだろうと思ってな。なに、実際に開封と共に目の前で消えたから中身を改めずに良かったよ」
    降谷「感謝します。貴方は何か彼女に伝えることはありますか」

    途端に臆病な顔が表に出てしまう。しまった、と思うには遅く赤井は奇妙なものでも見たと言わんばかりの表情で煙草を取り出すと一服し始める。少しして煙を目で追っていればようやく口を開いた。

    赤井「そこに俺からのメッセージは不要だろう。なにせ、キミだけに宛てた手紙だからな。俺の手元に現れたのもキミを思っての事なんじゃないか?昔から彼女はキミにだけ甘いから……今のらしくないキミの手元に現れたら、一人悩んで読まずに引き出しへ仕舞っていただろう……違うか?」

    言い返せないだけに苦々しい表情を浮かべるしかなかった。それから少しの間休みを取り飼い犬のハロも預けて、悩みに悩んで«帰ってこい»とだけ書くとその封筒に入れて机の上に置いておく。ただなんとなくそうすればいい気がした。翌朝、日が昇り始めた時刻に封筒を開けてみて目を見開く事となったのは使った便箋と違うものが入っていたからだ。


    『本当に私が必要なら呼べばいい』


    そういえば彼女が消えて半年間はよく名前を口にしていたのに、それからは一切口にしなかった。忘れる筈がないその名前を呼ぶのに緊張する。カラカラの喉でやっとその名を呼ぶことが出来た。

    降谷「…………会いたい。僕の元にずっと居て。僕とずっと、ずっと一緒に居て……お願いだ、僕の元へ帰ってきてくれ……!」

    昔の自分なら「何をこんな非現実的な事を」と言っていただろう。でもそれくらい彼女は自分にとって大きな存在となっていた。日常から色が消え、ただ我武者羅に休むことなく働き、タバコの香りに幻想を抱き夢馳せる日々。あの日から流れなかった涙が頬を伝い叫ぶようにその名を叫んでしゃがみ込む。

    降谷「僕と一緒に生きて欲しい……キミじゃなきゃ駄目なんだ!」

    ふと、虚しくなるほどに嗅ぎ慣れた血の匂いが辺りに充満した。ゾッとしたがそれも一瞬で、次には知っている香りがしてポンッと肩に暖かさが伝わる。涙が増した。

    「泣かないでください」

    渇望したその暖かさにゆっくりと振り向けば、求めて止まなかった彼女が困り顔で見下ろしている。





    ▼彼が奪ったもの▼


    呆れたような表情で降谷の隣に座っている。むろん、この世界に私という人間は存在しないので戸籍もない。全てを捨てた私にはもう降谷零しかないのだ。視線はよく知るタバコの吸い殻の山、真横には泣いてグズりながらも抱き締めて離さない降谷が居る。よく「壁紙が黄ばんで匂いが残るから僕の部屋は禁煙だ」と同期の喫煙者達にあれだけ言っていた降谷が、私が愛煙する銘柄を吸っているのかと表情を引き攣らせた。部屋を見渡してハロは何処かに預けているのだと推測する。ハロに会いたかったな……久しぶりなこの男の腕の中だというのに色気もへったくれもない。

    「あの降谷零がこんなに泣いちゃう程だとは思いもしませんでした。貴方も歳を取りましたね」
    降谷「ポンコツ鈍感にぶちん。お前も同い年だ」
    「身一つで駆け付けた女になかなか酷いこと言ってる自覚あります?まあ、片道切符ですからもう戻れないんですけどね。今のところ、ここしか居場所が無くなってしまいました」
    降谷「……嬉しい」
    「酷いこと言ってる自覚ないんですね」
    降谷「だって、もうキミは何処にも行けない」
    「世界は広いのでそんな事ないんですが……病んでますねぇ。私の好きな銘柄吸ってたんですか。可愛い事を」
    降谷「おかげさまでニコチン中毒だ」
    「へぇ。いつになったら泣き止んで離してくれるんです」
    降谷「無理。三年分の涙が止まるわけないだろ。離さない」
    「…………タバコ、もらっても?」

    頷く姿にタバコへ手を伸ばす。灰皿の中スゲぇなと思いつつ火をつけ一服し始めれば視線を感じ横目に見た。ついでに隣にある飲みかけであろうミネラルウォーターも確認して一口もらう。泣きすぎだ、お前も飲め。と、手渡すと素直に飲み始める。そうしながらもヒグヒグと息を詰まらせながら一瞬たりとも見逃すまいと瞳が動作一つ一つを追ってくる。

    「なんです。もう泣き飽きましたか」
    降谷「好き。大好き。僕にキミの全部をちょうだい」
    「ここに居ることが答えですが」
    降谷「意地悪……キミは本当に意地悪だ」

    タバコの煙を生意気な男の顔に吹きかけてやった。意地悪ならここに居ないんですけどねぇ?そんな視線を降谷へ向ければ拗ねつつも色の見え隠れする視線を逸らさない降谷に苦笑する。何もかも捨ててきた私からそう安々と言葉を引き出せると思うなよ?でも甘い自覚はあるので他の言葉を贈る。

    「降谷さん、ただいま」
    降谷「やだ。零のがいい」
    「零さん、ただいま」
    降谷「……お帰りなさい」

    ほんの気まぐれだった。目は真っ赤だがフワッと笑った様子に安堵して吸い寄せられるように顔を寄せれば、降谷が自然と瞼を閉じる。ちゅっ、と音を立て何度かそうしてその距離のまま瞼を開けば瞳が交じる。

    「さて。今後、私をどうするんです?」
    降谷「僕だけのものにする。愛してる」

    噛み付くようなキスに答えながらぼんやりと幸せを噛み締めた。本人には教えてあげないけど。それから国家権力で戸籍を作ってもらい、そのまま結婚と言われたが「身辺調査どうするんです。さてはお前、私を家から出さないつもりだな?」と問い詰めれば非常に苦々しい表情をして黙り込んだ。嘘だろ、こいつこんな優秀で有能な私という人材を飼い殺し監禁する気だった……?呆れて「結婚してやるからもう少し待て」と叱りつければ、スマホを取り出され「言質取ったからな」とニヒルな笑みを浮かべられたので腹が立って鳩尾に一発くれてやった。調子戻ったじゃん?今は安室透が辞めたポアロで働いている。梓さんや毛利一家にも綺麗さっぱり忘れ去られていたが、やっぱりまだ解毒剤待ちのコナン君だけは何かが引っ掛かるといった表情を浮かべるので面白そうだからそっとしておいた。ポアロには降谷が休憩だとスーツ姿で頻繁に来るようになったし、元警察学校同期達もよく訪れカウンターで顔を合わせては談笑している。今や私という人物は周囲に降谷零の婚約者としてガッツリと認知された。

    梓「辞めた安室さんが婚約者だって紹介した時は驚きましたよ~!」
    「その節はどうもご迷惑をおかけしました……」
    梓「久しぶりの安室さんって常連客が騒いだと思ったら、結婚ですからね……でもバイト入ってくれて助かってます。今は前と変わって男性客が増えましたね。人妻に手を出されないよう、私がしっかりしなきゃいけませんっ!」
    「あはは……人が増えたのも看板娘の梓さんが居るからですよ。あの人が入る前は元より男性客のが多かったようですし。それに超個人的な意見ですが、ここは喫煙できるので大変喜ばしいです」
    梓「喫茶店の人妻店員、か…………降谷さんの奥さん」

    ボソリと呟かれた言葉にうっかりガチャッと食器を洗う手を滑らせた反応を見て梓がニヤニヤする。ついでにカウンター席に座っている松田陣平と萩原研二までも同じような表情で見ていた。そう、異例だがポアロには潜入調査で潜るため協力してもらっていたと話しがされている。「キミがいるから万が一何かあっても守ってあげられるだろ?それに、ポアロも守ってくれるだろ」との事だ。尻拭いは相変わらずですか、そうですかと睨みつけておいた。

    「いずれそうなるとわかってはいても…………馴れませんね」
    萩原「あいつも隅に置けないねぇ」
    松田「俺らの中じゃ一番結婚遅いって言われてたのにな」
    「へぇ。それはどなたに言われたんです?」

    それを言ったのは私だった。すると二人は顔を見合わせて誰だったかと話し合うが、結局は謎のまま。

    松田「あいつと結婚するんだから身辺調査されてるんだろうが、悪いこと出来ねーな?」
    萩原「馬っ鹿野郎!お前、彼女が悪いことしているように見えるのか!?」
    「あはははは!……まぁ、そうですねぇ」

    ごめん、沢山してたし今も堂々とNOとは言えない。ボクサーの父から教えてもらったという松田のボディーブローを真っ正面から鳩尾に喰らったような気持ちになりつつ笑みを浮かべておく。これもなんだか懐かしいなと目を細め、ドアベルの音にいらっしゃいませと振り向けば降谷が入ってきた。

    降谷「おつかれさま。梓さんお久しぶりです」

    目の前に座った降谷がポケットを探るのですかさず灰皿を置く。取り出されたタバコの銘柄は私が好むもので、それを降谷が一服し始めれば梓と二人がもの言いたげに見ている。その様子に降谷は頭にハテナを浮かべた。

    萩原「あんなにタバコは吸わないって言ってたのにね?」
    松田「二年くらい会えない間だったか?彼女恋しさに吸ってみたら止めれなくなったとか、ざまぁねえな」
    降谷「いいんだよ。これで」
    梓「あれですか?同じ銘柄なのもタバコ切らしちゃった時にあげられて共有できる。的な!」
    降谷「それもありますけど、やっぱりすぐには会えないから手元に置いてしまうんです。これが一番イメージと結びつくので」
    萩原「あーやだやだ。惚気話なんてお前から聞く日がくるなんて思いもしなかった」
    松田「なあ、お前に一番結婚遅いって言ったの誰だったか覚えてるか?」

    降谷が視線を向けてきたが面白そうなので皿洗いを終えバックヤードへ入る。どうなることやら。





    降谷「彼女だよ。お前らは命も救ってもらっただろう?……全ては萩原から始まったんだ」

    すると萩原は思い至ったのか少し考え込んでから目を見開く。降谷がそれを見て一番強い彼女との記憶について触れるきっかけさえあれば記憶が戻るのかもしれないと推理し萩原の答えを待った。そして、その期待通りの反応に嬉しさが込み上げてくる。

    萩原「……なあ、なんで忘れてたんだよ。そうだ。降谷の婚期が一番遅いって言ったの」

    ちょうど彼女が調味料のストックを抱えてバックヤードから出てくると同時に梓がシフト上がりだとバックヤードへ去って行った。ギロリと萩原に睨まれた彼女は身に覚えが有りすぎてどの件で睨まれてるのかなぁ……と気楽に構えながらコーヒーを用意するのがわかる。その様子に降谷は一人笑いを堪えていた。

    萩原「お前、何処行ってたんだよ!!」
    松田「萩原お前っ、突然何言ってんだ!?少しバックヤード行ってただけだろう!」
    萩原「いやそうなんだけど!そうじゃなくって!!!」
    「……ああ。ふふっ……覚えてるんですか?貴方、一体何したんです」
    降谷「キミとの一番強い思い出に触れてきっかけを与えただけだよ。他も上手くいけばこうやって思い出すだろうな。今まで景には会いたくないって言うから気づけなかったけど、今度試してみよう」
    萩原「もうなんなの?キミの回りは不思議現象起こりすぎて、もう!!説明してもらうからポアロ閉めた後に集合だからね!降谷はいつもの居酒屋に彼女連れてきて諸伏も呼んどいて。俺は伊達呼ぶから。松田も勿論、強制参加だからな!」
    松田「は?事件起きて呼び出されたら無理だろ」
    萩原「そこは大丈夫。他人の為なら強運発揮するのが彼女だから。俺のためにその運を発揮してくれる筈……待って。キミ、本当に降谷と結婚するの?え、マジ?」

    すると彼女は萩原の前へ向かうとコソコソ話をするよう手を出すので萩原がカウンターに身を乗り出す。そんな事をしても聞こえるが。

    「マジ。この前まで私は本当にこの世に存在しない人間だったんですけど、降谷さんのおかげで戸籍など全て与えてくれたし、今は対価として国家権力で縛られています」
    萩原「ちょっと説明不足でよくわからないけど、いつか降谷ならやりそうだと思ってた……そっか。いつでも俺の元に逃げてきても良いんだよ?キミなら自力でどうにか出来るだろうけど」
    松田「……俺だけ置いてきぼり喰らってるんだが」
    「今夜そのいつもの居酒屋ですか?そこへ行けば知りたいことは知れると思いますけど……伊達さんと松田さんにとっては知らないでいた方がいい気もするんですよねぇ」
    萩原「数々のやらかしたやつバレたくないからってそんな事言わない!陣平ちゃん、お前こいつに色々と言わなきゃならない事いーっぱいあるから!てか俺ら彼女と同期なんだよ!」
    松田「お、おう……同期?」
    萩原「ねえ、陣平ちゃんに何か俺達が知らない思い出か出来事、話してくれない?」
    「……ふふふっ。ははっ!試してみます?」

    そこで耳にした彼女の発言に松田は困惑したが、他にも何個か聞いているうち額に青筋を立てはじめた。これは目出度くも思い出したようだ。

    松田「テメー…………夜は覚悟しとけ」
    「嫌ですよ面倒臭い。行きたくないからいまここで事を済ませたのに」
    降谷「それなら僕の家に集まれば良い。後で住所を教えるから、久しぶりにあのメンバーで朝まで飲み明かそう。これなら同棲しているから彼女も逃げれない」
    「……はぁ。お布団やバスタオルとか足りないですよ。私と貴方の立ち位置的に物が少ないんですから」
    降谷「あー……そろそろ買い揃えようか。本当に必要最低限しか無いからな。引っ越しも考えて良いかもしれない」
    松田「お前、本当に結婚するんだな……どんなバケモン産まれるんだ」
    萩原「そこ楽しみだよね!まあ、布団無くても寝られるし旅行支度して行けばその面は解決。一泊する用意で降谷家に集合なおアメニティ無しバスタオル等は持参ねっと……はい、もうみんなに連絡入れたから。確定だから」
    降谷「僕も子供が楽しみだよ。早く欲しいな」

    降谷が彼女へ視線を向ける。ふいっと顔を背けた姿に機嫌を良くしてタバコをしまった。それを見て尚更気まずげにする。

    降谷「僕と一緒に禁煙と子作り、頑張ろうか」

    彼女が耳まで顔を真っ赤にしたら、萩原と松田が茶化すように笑った。





    ▼彼女が捨てたもの▼


    帰ってきたのだ。あの世界で何十年も人生を歩んでおきながら実質は数カ月の月日しか経っていなかった。月日のズレがえげつない。目を覚ました私は包帯だらけで体中が悲鳴を上げており、痛みに苦しんでいると偶然にも側を通った看護師が異変に気付き慌ててナースコールを押した。いや、そうだ、トラックに轢かれたんだった。奇跡的に救出されるが意識不明で今初めて目が覚めたらしい。それからは執念深いリハビリの毎日を過ごし普段通りの生活を過ごせるくらいになっていた。仕事は辞めさせられていたので使わなかった貯金を切り崩し生活している。すぐに職を探そうとしたが駄目だった。思ったよりも心が追いつかない。そのままズルズルとただ寝て起きて食べて寝るを繰り返し、その間にしたことは身辺整理であった。スマホの中の電話帳は全て消したし家の中のいらない物も売るか捨てるかする。そして、とてもシンプルな生活をして数年が経つ。

    夢を見た。懐かしい顔ぶれに泣きたくなる。みんな笑っていた。でも私が一番幸せを願っていた彼だけは泣いている。慰めることは出来ないから側でただ見守った。そんな夢を頻繁に見てから、私は唯一残した両親の形見である結婚指輪を手に、久しく両親を散骨した海へ向かう。まだそんなに暑さのない夏だった。手にした一本のネックレスチェーンに通した指輪2つを迷いなく海へ落とせば、まるで体が軽くなったようだ。

    「ようやく返せた。今までもそうだったけど、もう来ないよ。さよなら」


    ふと、呼ばれた気がする。早く貴方に会いたい。その場を後にする。突然の衝撃に酷い既視感を覚えて、私の口角はつり上がった。


    _…‥・・°・。。・*°°・

    医療従事者の方々にはマジで申し訳ねぇ!

    何故ならまた私はトラックに轢かれてしまったから!!

    あんなにもお世話になったのに!!

    不可抗力だったんです!!

    またトラ転するなんて思いもしなかったんです!!

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    moege3

    MOURNING【迂闊に~】心霊現象は科学で説明できるから信じないけどふと少し恐くなったfry
    ホラーにエ ロ混ぜると恐怖心が台無しになる(fry)ソファーで二人まったりとマグカップを持ちながら、降谷が選んで借りてきたディスクを見ているとまさかの濃厚なベッドシーンが流れる。横に座る鳥海が固まったのがわかった。相変わらず長く続いているベッドシーンにどうやらホラーよりもセックスが撮りたかっただけのようにも思えてくる。女と男がベッドで絡み合っては情事特有の音声が室内に響いていた。これじゃあただのAVを見てるのとそう変わらないなと降谷はリモコンを手にする。降谷「……飛ばそうか」コクリと頷いた鳥海はちょうど冷めて飲み頃な降谷が作ったハチミツたっぷりミルクティーを啜り始めた。今さらホラーシーンが続いても何も恐くない。そもそもホラーとエロは混ぜるとたちまち恐怖心が無くなってしまうものだ。鳥海の視線は画面へと向き続けており、物語や撮影セットにトリックなど製作サイドのほうに興味があるらしい。だから恐いと飛び上がり抱き付いてくるなんて期待は持てる筈がなかった。「なんか……思っていたのと違う」降谷「ハズレだったな」「でもベッドシーンで唯一、変なの写ってましたよね」鳥海のこういった事は真実であることの方が多く、あのとき身体がピクリと固まったのはそういうことだったのかと思い至った。「ベッドの下に」降谷「待て。やめとこう」口を閉じた鳥海はチラリといま二人が座っている足元を見る。「このソファー、下に隙間なくてよかったですね」降谷「心霊現象はだいたい科学で説明できるから信じないタイプだけど、お前が言うと恐いからやめてくれ」「巻き戻して確認してみます?私の勘違いかもしれないですし」降谷「そんなにベッドシーンが見たいのか」「男女が絡み合っていてもそれより目を引くモノがあったので。画面中央で目を引く行為をしているからみんな気付かないんでしょうけど。あれです、まるでミスディレクションってやつ」降谷「今日はもうやめとこう。ほら、一緒に歯を磨いて寝ようか」「降谷さん珍しく怯えてるじゃん」降谷「この家のベッドは下に隙間があるんだよ!」「あはは!まあ、たぶんあれはスケベな幽霊の悪戯ですよ。変な動きしてたし」こう、と言って鳥海が見たであろう動きの真似をする。上目遣いで親指と人差し指で丸を作った中に舌を突き出すと手を前後した。降谷が色んな意味で固まる。たぶん鳥海は恐怖心を和らげようと茶化して本当のことを言っていない。やはり確認してから眠った方が良かったのかもしれ
    1107

    moege3

    MOURNINGfry夢小説。キスで情報端末受け渡しするだけのお話。
    情報端末の受け渡し(fry)パーティー会場内で偶然居合わせて事情を話せば彼女は驚きながらも快諾してくれたので頬に手を添える。頭にハテナを浮かべた彼女の唇を奪った。固まる彼女の唇を割って舌を差し込み同時にマイクロ情報端末を口移しする。すぐ察したのかそれを上手く頬と奥歯の隙間へ寄せては絡ませてくる降谷の舌を素直に受け入れた。我ながらずるいのはわかっている。大切な情報の受け渡しの協力だけを頼んで、その方法を教えなかったのだから。本当はウエイターに扮した部下がグラス回収のときにその中へ情報端末を落として回収させる予定だったが手違いが発生してしまったのだ。名残惜しげに唇を解放して額を合わせて見つめ合う。目を細めれば少し頬を染めて目を逸らした。その仕草が男を煽ることに気付いた方が良い。会場外への扉の前へエスコートする。地下駐車場で待機する男に渡せば良い。降谷「お気を付けて」彼女は上手くやってくれたようだ。バーボンとして仕事をしなければならないのでまだこの場を離れられない。後から情報端末を受け取った部下に聞けば、ハンカチに包んで目の前でわざと落としたのを拾わせて回収させたらしい。そんな事は教えていないので彼女が配慮してやったことだろう。その部下が彼女の事を聞いてきたのですぐに察した。一目ぼれしたらしきその部下に釘を刺すべく、わざと見えるところで休憩中にテレビ電話で今日は泊まりに行くということをわざわざ伝えて彼女との仲を見せつけてやる。後で風見に教えられたのだが、一目ぼれ相手は上司の恋人だった、ということでその部下は他の仲間達から盛大に慰められたらしい。残念だったな。まあ、まだ恋人じゃないけど。意外にもテレビ電話でも出てくれるので、それから何かと手が空けば休憩室からテレビ電話でかけ続けると彼女は面白そうに「最近のマイブームですか?」とクスクス笑っている。降谷「キミがちゃんと生きているかの生存確認だよ」「貴方よりは社畜じゃありませんから!」思わず笑い声を上げると周囲の視線を感じたが、例の部下もいたので気にせず通話を続けた。降谷「たぶん、二日後にお邪魔するよ」「私はちょうどその日にお休みなので、いつでも大丈夫ですよ。お食事用意しましょうか?」降谷「うん。僕の好物を作って待っていてくれ」そのあと風見にそれとなく部下達が可哀想なので、と注意された。
    965

    moege3

    MOURNING【迂闊に~】で3顔。お題:眼鏡
    なんでも大丈夫な方だけどうぞ
    視力の悪い鳥海だからこそ鳥海が眼鏡をかけていない裸眼のとき、降谷は「きみがすきだよ」「きみをあいしてる」「きみにふりむいてほしい」「ぼくをすきになって」「ぼくにこいして」「ぼくをあいして」と音無く囁く。眼鏡をかけず普段よりも開いていない瞳を見て、どれくらい近付けばこの音無き囁きが拾われる距離なのだろうかともどかしくもある。でも、この気持ちは組織を壊滅させるまで腹の奥底へ眠らせると決めたから。この想いが溢れこぼれる前に、少しずつこうして口からこぼす。いつかこの言葉達を音に乗せて伝えられるように願いながら。

    ===

    #バーボンVer

    今日も僕は闇に身を沈める。目の前に喉から手が出るほど欲しい獲物が飛び込んできた。こんなチャンス、僕が逃す筈ないでしょう?「愛してます。僕だけを愛しなさい。そうすれば貴女の身の保証はしましょう」こんな怪しい侵入者に何を言い出すのかと周りのネームドがザワつく。「前から目をつけていたんです。それが、自ら飛び込んできてくれるなんて……もうこれって、運命、ですよね?」眼鏡はどこかへ落としたのだろう。拘束され床に転がされている鳥海は見えていなくとも声で判別できたようで、顎を掴んで持ち上げると目を見開いた。普段は伏せ目がちな瞳がしっかりと僕を写す。「こんなところへ足を踏み入れなければ僕に捕まらなかったのに。本当に、本当に可哀想」嬉々としながらも興奮を隠せていない声に鳥海が真っ青になって震える。いま、鳥海には僕がどう見えているのだろうか。「もう明るいところなんて歩けませんよ、貴女。ずっと、ずっと僕の腕の中で生き続けるんです。好奇心は猫をも殺す……そうだ、貴女は可哀想な猫だったんですね。ならばとびきりお似合いの首輪を用意してあげなければ。これって、飼い主として当たり前ですよね?」鳥海の口が「いやだ」と動いた瞬間、許しがたくて顎を掴んでいた手で首を締める。周りのまだ穏便なネームドがやめてあげろと言うが、最初の躾が肝心なのだ。邪魔をしないで欲しい。気道を潰され息が出来ない鳥海の瞳からポロリと涙がこぼれた。ゾクリと快感から背筋が震える。「僕が優しくしているうちに、ちゃんと言うことを聞いた方がいいですよ?」声は出ていないが鳥海の口の動きが肯定を示す。パッと手を離してあげた。ほら、支えてあげていないとキミは座っていることも儘ならないじゃないですか。
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    moege3

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