〈その頃の少し前 〉
神尾くんに映画に誘われた。
珍しく部活が休みの日曜日の朝9時半、駅前の噴水の前に集合。部活で早起きは慣れてるけど、なんだか緊張してよく眠れなかった。映画を見ながら寝てしまったらどうしよう。
変なの。どうして。いつも学校で会ってるのに、こんなにドキドキしている。これはデートなんだろうか。神尾くんに聞いても、そうだ、とも、そうじゃない、ともはっきりした答えはないような気がする。彼はとてもシャイだ。きっと、多分、私に対してだけ。だからなのだ、今日の約束にこんなにドキドキしているのは。
でも彼、私のドキドキになんか気づかないんだろうな。いつもそうなのだ、自分のことで手一杯。ホッとするような、物足りないような。
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