だって全部あいつが悪いだろ(満場一致)「ナワーブとリッパーが付き合ってるってホントか!?」
「まぁな」
椅子に座り茶を啜る彼は軽く笑った。夕食後の暫しの談笑。ロビーやエマ達が自室に戻った食堂は薄暗く、恋愛話にはもってこい。ウィリアムはうわぁー!と興奮した様子で両手で顔を覆った。
「ふふ、まるで夫婦ね」
その恥じもしない態度にウィラが零した。恋する顔を通り越して堂々としていたからか、誰も2人の関係に気が付けなかった。既に赤ら顔のデミは酒の入ったグラスをトンッと机に置いて愉快そうに訊ねた。
「で?夜はどうなんだい?」
それと同時に扉が開いた。
「ジャック」
本日最終のゲームを終えて、サバイバー達とリッパーが帰ってきた。夕飯を手に自室へ帰ろうとする彼へ、ナワーブは駆け足で近寄った。
ナワーブは顔を俯かせてから裾を引っ張り何かを言っているが、此処からでは聞こえない。
「んん?…ちょっと待てよ…?」
他の話題に変わりそうな彼らの注目をイライの言葉が再度集めた。
リッパーはナワーブを諭すように頭を撫でて食堂を出て行く。
「あれ…?……もしかして」
ナワーブは唇を噛み、寂しげな笑顔で手を振って自室の方向へ姿を消した。
イライは久々に天眼を使ってナワーブの中を覗き見た。
「おっと……これは予想外だ」
「何が見えたんだ?」
彼に申し訳なく思いながらも事実を告げると、デミは口から酒を吹いた。
それもそうだろう。誰も想像なんてしないはずだ。
大事にされているが故にまだ数回しか抱かれておらず、その事実がリッパーの意図と反してナワーブを傷付けているなんて!
食堂は朝までこの話で持ち切りだった。
何とかしてやろうと、翌日からリッパーの食事に媚薬がたっぷり混入するのはまた別の話。