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    類のワンダショモノローグ

    お題「思い出の時計」
    15分トレーニング 13

    954文字(所要時間約2分)

    ##類

    センター街の時計が十二時を指していた。
     ざわざわとした喧騒の中、その音だけが一瞬、この空間の空気をかき乱す。

     類も、ご多分に漏れずその大時計を見上げて今の時刻を見つめていた。
     もう、そろそろ終わろうか。
     日曜日。
     人通りの多いこの街の中心で、朝から路上パフォーマンスを続けていた。
     お陰様で本日の営業は上々である。元より類は『魅せるため』だけでこの公演を続けていたにも関わらず、ある母親と子供から、手渡しで感謝の金銭まで頂いていたのだった。
     その小さな手のひらから感謝の気持ちを受け取る瞬間に、幼い少女と目が合った。その瞳は大きくて、類の顔をしっかりと写し取っている。それに映る自分と彼女自身が全く同じにこやかな表情をしていて、嬉しいような、驚くような気持ちにもなるのだった。

    「……今日は、これでお終いだよ」

     大通りの時計が十二時を告げた後、類はそう伝えて群衆に深々と礼をする。
     歓声と、まばらな拍手が伝わってくる。
     喜びと、次の公演へのアイディアが幾つも広がってゆく感触がある。

    「この続きはまたいつか。……ああ、僕はフェニックスランドでもショーをしているから、よかったら遊びに来てね」

     まばらに立ち上がり、それぞれの世界に向かおうとする人々にさり気なく声かける。それに対しては「へぇ」だの「どこで?」という純粋な言葉が返ってくる。

    「そうだね、次はわかりやすいように地図を持ってくるよ」

     もちろん類のゲリラパフォーマンスの目的は、単純にそれがしたいからであって、宣伝のためで行っているものではなかった。けれど、最後にはそんな言葉を付け加えたくてたまらず、うっかり最後の決めゼリフとして定着させてしまっていたのだった。

     フェニックスランドのワンダーランズ×ショウタイム。
     それは類が一人で行っているこのショーよりも、より良いものになっている。
     そこには彼の仲間たちがいてたまらなく楽しくて、素晴らしい公演ができている。
     だから、利益や目的なんていうものよりも感情的に、それを人々に伝えたいと思ってしまうのは仕方がないと思うのだ。

     それは、類の心の底から湧き上がっている、たまらない感情の一つなのだった。
     そして類はそんな気持ちが沸き上がってくる事こそが、自分にとって『嬉しい』事なのだと日々感じている。


    [20210410]
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    TRAINING司の作るカリカリベーコン

    お題「嘘の夜風」
    15分トレーニング 20

    1372文字(所要時間約3分)
    妙に気だるい朝だった。目を開き、辺りを見渡すが照準が合わない。もぞもぞと動いてみるが、肩と腰が妙にぎくしゃくと軋んでいる。
     類は、元より低血圧である。だから起きがけの気分は大抵最悪なのではあるが、今日のそれはいつもの最悪ともまた違う、変な運動をした後のような気だるさがあるのだった。

    「類、起きたのか?」

     まだ起ききっていない頭の片隅を、くぐもった通る声が聞こえてくる。司の声。どこから声をかけてきているのか。それに、妙な雑音が彼の言葉に混じって聞こえ、よくよくその場所を判別できなくなった。

    「……起きてるよ、たぶんね」

     重い体を何とか起こしてみる。体に巻き付いているシーツがいつもと違う。自室にあるソファに投げ捨てられているシーツでも、家の中にあるベッドとも違う、少し手触りの良い物だ。それに、類は今、何も身につけていなかった。
     布団を通り抜け、ひやりとした風が入り込んでくる。少し回復してき思考が回り始めてからようやく、昨日、司の家に泊まったのだと思い出すのだった。

     司は、大学に入ってから一人暮らしを始めた。類はそんな彼の現状を甘んじて受け止めて、よくよく彼の家に泊まるよ 1422

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