魂の絆「用意したから、さあ、行こう行こう!」
いつになくご機嫌な彼女……絆の勇者『きずゆう』がグイグイとオレの背中を押して、強引にとある部屋へ連れ出そうとしてきたので、流石に違和感を感じて問いただそうとしたが一歩遅かった。
「用意って何をだ」
「いいからいいから。ラーハルトは喜ぶから」
じゃーんと言いながら扉を開けた、その部屋には……。
ヒュンケル達がいた。そう、四人も。
一人目はアバンの使徒、ヒュンケル。
紫色の衣服に身を包み、剥き出しの二の腕が眩しい。一番この世界に馴染んでいるようでオレの姿を見ると少し微笑んで見せた。
ウッ……今日も可愛い。つい抱きしめてしまいそうになるのを理性でなんとか押しとどめている。
二人目は鎧の魔剣、ヒュンケル。
この世界では兜を脱いで常に顔を出しているので少し不機嫌そうにしているのも丸わかりだ。
顔以外は指の先までガチガチに装備で固められていて手を出せない雰囲気がまたいい。それにしても可愛い。
三人目は鎧の魔槍、ヒュンケル。
魔剣と比べて優し気な表情をしている。
実際性格も穏やかなうえに「みんなの長兄」という感じで弟、妹弟子の面倒もよく見ている。
一度槍を借りようと思い伸ばした手が触れ合い、奴の唯一露出している指先に触れて変に緊張した。
こいつも可愛い。
四人目はサマースタイル、ヒュンケル。
いわゆる水着姿だ。白い半袖シャツの下に青いブラと黒いズボンスタイルだが、なぜブラを付けたのか。
いや、ブラではないのかもしれんがあれはブラだ。この前「少し寒いな」と身体を震わせていたのでふと見ると、白い上着から覗く胸元の二つの突起が寒さ故にブラに貼りつきその形がくっきりと浮き出ていてオレは焦って暖かい建物の中へと連れて行った。色々鈍そうな所がまた可愛い。
「さてっと……どうする?」
きずゆうがニッコニコの笑顔で聞いてくる。
「知るか!!!なぜここにオレを連れてきた?」
「え?ラーハルトが喜ぶと思って。誰とキスしたい?」
「ば、ばか!やめないか!」
「だって私はラーヒュン強火担だから、押しすすめたいけどラーハルトは誰が好きかなと思って」
全員ヒュンケルだ。選べれるわけがない。
当のヒュンケル達は一瞬ポカンとするものの、
「ラーハルトなら、オレは構わんぞ?」
「フン!どうするつもりだ」
「準備は出来ている」
「やるぞ!」
……四人とも、そんなに嫌がってはいないように見える。キスしてもいいのだろうか?
でも、誰から?
迷いに迷って誰にも手を出せずにいると
「臆病な奴だ。キスぐらい簡単に出来るだろう」
そう言いながら、魔剣ヒュンケルが隣に座っている魔槍ヒュンケルに小鳥が啄むように軽く口付けた。
魔槍ヒュンケルは目をパチパチと瞬かせた後、ニッコリと笑う。
「魔剣、お前……可愛いな」
(くそ、ヒュンケル同士でいちゃつくなど!!!)
あまりの眼福な光景にオレは頭がクラクラしてきたがなんとか正気を保っていると、隣で、きずゆうが溜息をつきながら叫んだ。
「あぁああ、眼福ッ!」