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    ハナ🌹オサカ

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    ハナ🌹オサカ

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    #ジクアグ#

    「アグロヴァル!」
    確かに聞こえた声に視線を廻らせる。
    鬱蒼と繁った木々の合間からは得たいの知れぬ魔力のようなものが滲んでいて、それはアグロヴァルの氷の魔法を持っても凍ることもなくひたすら静かにアグロヴァルへと向かっていた。
    ヒトを喰らう魔物がいる、そう報告は受けたものの詳細は分からず。
    送り出した騎士達も戻らず、アグロヴァルが騎士を率いての調査に向かっていた。
    形なき魔物、と言った所だろうか?
    霧のようなそれは攻撃すれば霧散して、捕らえることも足止めすることも叶わない。
    アグロヴァルを逃がそうと霧のようなそれに飲み込まれる騎士たちに押され、アグロヴァルの足はそれ以上進めなくなっていた。
    切り立った崖の上、アグロヴァルはそこまで追い込まれていた。
    あの霧に飲まれて帰ってきたものはいない。
    愛剣を握り締めて、アグロヴァルは思案する。
    帰らなければならない、絶対に。
    そう思った所で、聞こえてきたのだ。
    崖の下、ではない。
    ぶわりと大きな風が吹いて霧が左右に割れる、とその間だから黒い風がアグロヴァルへと向かってきた。
    「っ、おま、え」
    「アグロヴァル、飛べ!」
    飛べとは何処にか、一瞬の迷いの間に黒い風はアグロヴァルの脇を凄い早さで通り抜ける。
    馬だ、黒い馬の上に乗るヒトの顔が見えた。
    無論、声でそれと分かっていたが、改めて見えた顔にアグロヴァルは舌打ちしながら馬に並んで走り地を蹴った。
    その先は地面がない。
    それでも地を蹴ったアグロヴァルの体は確かに支えられて引き寄せられる。
    「貴様、どうする気だ」
    「何とかなるだろう。馬には申し訳ないが」
    眼下に広がるのはやはり深い森と、そして水の音が聞こえてくる。
    川か、滝か、どちらにしてもこのまま落ちては互いに無傷とはいかないだろう。
    握った剣に魔力を込めようとすれば、その手を取られてゆびさきに男のくちびるが押し当てられた。
    「な、にをしている!」
    「お前を死なせない。案ずるな」
    突然、ごうと下から風が吹き上げてくる。
    呼吸すらままならぬ強さのそれは確かにアグロヴァル達を重力と反する力で押し上げる。
    落下がゆっくりとなるのが分かる頃にはバキバキと枝の折れる音と、馬の嘶き、そして地面に着地した衝撃に息が詰まる。
    目まぐるしく変わった筈の景色は余り先ほどと変わらず、深い森の中をアグロヴァルは黒い馬に乗って疾走していた。
    「ジークフリート、」
    黒い馬の手綱を握る男の名を呼べば唐突に額にくちびるが押し当てられた。
    「もう少し離れる」
    それだけを言って真っ直ぐ前を向く瞳にアグロヴァルはくちをつぐむしかない。
    そう言えば風の魔力も使えたのだったが、それにしても無茶をしすぎではないだろうか?
    馬の方も余程ジークフリートに懐いているのかあんな場所から飛んだにも関わらず動揺した様子もない。
    馬とヒトの信頼関係が厚いのか、双方共に感覚が鈍いだけなのか、どちらにしてもアグロヴァルの理解はまるで追い付かない。
    しかし助かったことは間違いなく、アグロヴァルはジークフリートの胸に額を寄せる。
    「―――あれは、」
    「グラン達とも解明をしている。たぶん、飲み込まれたからと言って死んでしまう訳ではないらしい」
    「では、」
    「飽くまで仮説だ。故に、お前だけはどうしても連れていかれる訳にはいかん」
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