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    somakusanao

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    somakusanao

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    タイトルそのままです。

    #ココイヌ
    cocoInu

    お見合い結婚 本日お日柄もよろしく、大安吉日ともあって、まさにお見合い日和であった。
     高級料亭の一室。さぞやお高いのだろうと思わせる調度品。部屋から一望できる中庭は涼やかで、カコーン、と竹が石を打つ小気味のよい音が響く。そして目の前には反社がずらりと並んでいる。
     オレはだらだらと冷や汗をかいていた。やべぇ。すごくやべぇ。とにかくやべぇ。底辺を這う語彙力がさらに低下していく。
     いったいどうしてこうなった。


     事の発端はD&D MOTORSがある商店街の一角にあるスーパーが潰れたことから始まった。その跡地にラブホが出来るだとかいうきな臭い噂が飛び交った。商店街の連合会長が地主に詰め寄ったところ、土地を買い上げたのは某企業であり、なんとその実態はヤクザだとかなんとか。
     なんとか穏便に済ますことができないかと会長が交渉しに行ったところ、彼らはこう言ったそうだ。

    「うちの四男坊と商店街一の美人が結婚するなら考えてやる」

     当然会長は慄いた。
     齢八十になる会長にとっては、商店街のメンバーは子供や孫のようなものである。目に入れても痛くないほどかわいがっている娘たちを、ヤクザの嫁に差し出せるものか。しかし商店街にラブホができるのは非常に困る。悶々と悩むうちにヤクザとの会合の日がやってくる。商店街の会長はとうとう腹をくくった。

    「イヌピーくん! きみにきめた!」

     ポケモンかよ!
     ドラケンの不在を襲来され、あれよというまに商店街の美容室に連れ込まれ髪をセットされ、その次は老舗テーラーでスーツをあてがわれ、最後に美容師のおねえさんにフェイシャルなんとかをされ、気がついたら料亭に座らされていた。
     満を持して入ってきたのはヤクザ御一行様。
     左から、無敵のマイキー、軍神明司、S62世代の望月に灰谷兄弟、金庫番の九井、梵天ナンバーツーの三途。最後がナンバースリーの鶴蝶だった。
     ヤクザじゃなくて梵天じゃねぇか。しかし真っ青になってプルプル震えている会長にしてみれば、反社もヤクザもおなじだろう。そもそもオレにもヤクザと反社の違いが判らねぇ。
     マイキーと明司の順に偉いのはなんとなく察せるが、それにしてもこれはどういう並びかと思ったが、どうやら年齢順のようだ。兄弟っていうのはもしかして兄弟の杯ってやつのことか。オレの見合い相手が四男坊ということは、左から四番目に座っている奴は。

    「えっ、オレ、灰崎弟と見合いすんの?」

     カコーンと鹿威しが小気味の良い音を鳴らす。

    「あ?」
     
     目の据わったマイキーが初めて声を発した。会長は泡を吹きそうになってるが、マイキーは別に不機嫌なわけではなかった。

    「ああ……さすがに明司は数に入ってねぇよ」

     なるほど明司は除外か。ということは、長男は望月、次男は灰谷兄、三男は灰谷弟、そして四男は。

    「えっ、四男ってもしかして」 

     オレの視線がココで止まる。
     いや。
     いやいや。
     いやいやいや。
     そりゃまずいだろ。そりゃやべぇだろ。オレとココが見合いなんて、天地がひっくり返ったってありえねぇ。
     しかしマイキーは「そうだ」と言わんばかりに首を縦に振った。まじかよ。再びココに視線をやれば、ココはにこりと笑った。

    「ご紹介に預かりました。四男の九井です」
    「えっ、あ、……乾、です?」

     え。なにこの茶番。ぽかんと口を開けていれば、明司が口火を切った。

    「いやぁ、さすが商店街一の美人だ。ブロンド美人とは、うちの四男坊がうらやましい」
    「え」
    「同い年なんだろ。ちょうどいいじゃねぇか」
    「は」
    「九井は金なら持ってるからな、おねだりすればなんでも買ってくれるぞ」
    「いや」
    「オレらのことはお義兄さんって呼んでくれていいからな」
    「えぇ」
    「九井も顔はいいからな、美男美女カップルだ」
    「あの、」
    「九井は頭もいいし、やさしいし、見合い相手としてはじゅうぶんだと思う」

     いや、これ、どういうことだ? 頼りの綱の会長だが、今にも卒倒しそうだ。だめだこりゃ。そもそも梵天と交渉なんて、とうてい無理な人だった。商店街に立って、お客さんが買い物をしているのをにこにことみているのが好きな人なのだ。美人を連れてこいと言われて、どの店の看板娘にも声をかけられず、苦渋の選択としてオレを連れてきたような人だ。おそらく男なら梵天側から断ってくるだろうという算段だったに違いない。しかし梵天はひるまなかった。こうなったらオレが腹をくくるしかねぇ。

    「よし、わかった。テメェと結婚してやる。その代わり商店街には一本も手を出すなよ!」
    「いや、手は出すよ。オレを誰だと思っているんだ。金を作る天才だぞ。日本一の売り上げをほこる商店街にしてやるぜ」
    「お、おう? なんだかよくわかんねぇけど、日本一にしやがれ! のぞむところだ!」

     ココがふっと笑った。その顔はどういう意味なんだ。わからないままオレはココが差し出す手を握り締めた。

    「これからよろしくな、お嫁様」
    「こちらこそよろしくな、旦那様」

     


     これがオレとココの結婚生活の始まりだった。






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