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    somakusanao

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    ココイヌ春のマブ祭り投稿作品です。ありがとうございます。

    #ココイヌ
    cocoInu

    オレたちマブデビューしました オレとイヌピーは、紆余曲折いろいろあって、自由の国・アメリカにやってきて、そして一般人ということになっている。おかげさまで仕事はしている。それなりに稼ぎ、それなりに充実し、それなりにやっている。 
     ゆいいつ困っていることと言えば、休みのたびにバーベキューに誘われることだ。気候がいい時期なので、バーベキューシーズンなのだ。
    『ハジメ、今日こそはバーベキューに参加してもらうぞ。いい肉を買ったんだ。ぜひ来てくれ』
     今日もバーベキューに誘われている。
     いい加減断るバリエーションもない。しかたない。そろそろ腹をくくって行くかと重い腰を上げたところで、ガレージでバイクを弄っていたイヌピーがやってきた。
    「ココ、これはなんだ? どこに行くんだ?」
     テーブルの上にはワインとサラダが乗っている。バーベキューには手土産が必須だった。イヌピーはオレがバーベキューを嫌っていることを知っているので、物珍しげな顔をして「ふぅん」と言ったので、なんとなく「いい肉を焼いてくれるって言うからさ」と言い訳のようなことを言った。
    「暇ならイヌピーも来る?」
     誘ったのは社交辞令のようなものだ。イヌピーは社交的ではないし、なにより英語が喋れない。オレがいないときはどうやって過ごしているのかと言えば、バイクでツーリングを楽しんでいるようだった。たしかにアメリカは走り甲斐がありそうだ。本場という感じがする。
    「行く」
    「あ、そう。じゃあ、サラダは冷蔵庫にもあるから……って、え?」
    「行く。肉が食えるんだろ」
     そりゃそうだけど、というオレのつぶやきは、用意をしてくると言ったイヌピーの背中には届かなかったようだ。
     

     バーベキュー会場となっている家に着くと、すでにパーティは始まっていた。オレたちの他にもたくさんの参加者がいて、家族やカップルや友人たちがそれぞれが楽しんでいる。ホストはいま肉を焼くのにいそがしいらしく、挨拶をしたきりだが、まぁこちらのパーティはそういうものだ。
     知り合いがいたので、あたりさわりのない挨拶だけをするつもりが、うっかり捕まってしまった。どうやらオレはバーベキュー会場レアキャラらしい。その自覚はある。
     彼らから手土産のサラダやフルーツ、チーズなどを渡されたところで、イヌピーを探す。イヌピーは先ほどまで、ぽつんとひとりでいたはずだ。フォローしなければと思ったが、そのイヌピーの姿がない。どこに行ったと慌てて探すと、イヌピーはホストに捕まっていた。背の丈はイヌピーと同じくらいだが、三倍くらい体重がありそうなホストがにこやかに肉の塊をイヌピーの皿に盛りつけている。
     ホストはもてなしをするのが礼儀だから、イヌピーがひとりきりでいたところを見かけ、話しかけたのだろう。
     しかしホストは日本語が喋れず、イヌピーは英語がわからない。だが、ふたりは和やかに会話をしていた。
    『君はバイクがすきなのか。わたしも若いころはずいぶんと旅をしたよ』
    「あの車はおっさんのか? いい車に乗っているな」
    『古いポンコツだよ。手入れにコツがいるんだ』
    「よく手入れされている。色も派手でいい」
    『その通り! 妻と娘は派手すぎるというんだが、あの色がいいんだよな! 君の名はなんていうんだい』
    「イヌピー」
     そこは乾青宗じゃないんかい。
     べつにイヌピーがいいならいいんだけどね。ていうか、つっこみ所はそこじゃない。
     和やかに会話をしているようだが、英語と日本語である。なぜ通じるのか。イヌピーだけならまだしも、ホストもにこやかに返している。なんだこの空間。
     更に小さな女の子がやってきて『イヌピー、あっちに遊びに行こうよ』と手を引いている。イヌピーは慌てるでもなく「肉を食い終わったらな」とやはり日本語で答えていた。
    『ところで君はハジメの家族だったかな?』 
     肉を切り分けながら、ホストがイヌピーに訊ねている。日本人ならオレとイヌピーが似ていないことは一目瞭然だが、彼らにとってはわからないのだろう。
    「マブだ」
    『おお、なるほど! すばらしいな!』
     なんで通じてんだよ。
     いや、通じてないのか?
     マブはヤンキー語で日本語でもないしな?
     そのとき、ホストがオレに気づいた。大袈裟な仕草で両手を広げている。
    『ハジメ、水臭いじゃないか。こんな素敵なマブをなぜ今まで紹介してくれなかったんだ!』
     さらに彼は庭にいる参加者に聞こえるよう大声を張り上げた。
    『みんな! 聞いてくれ! 彼はイヌピー!ハジメのマブだ!』
     おお、とどよめきが走る。なぜかイヌピーといっしょに中央に立たされた挙句、ワインを渡された。
    『すてきなふたりのマブに乾杯だ!』
     あの、みなさん、マブの意味わかってます? マブダチの略なんですけど?
     しかし説明するのもめんどうくさいし、野暮である。イヌピーの肩を抱いて『オレの自慢のマブです』と言ってやった。なぜか喝采が起きる。彼らの中ではオレはシャイな日本人なのだ。
     イヌピーはぽかんとした顔をして、
    「ココ、今なんて言ったんだ?」
     と言った。アメリカ人の英語が通じて、なんでオレの英語がわかんないんだよ。オレはげらげらと笑ってしまった。


       
      
     オレはまぁ、いろいろあって、自由の国、アメリカにやってきて、そして一般人ということになっている。おかげさまで仕事はしている。それなりに稼ぎ、それなりに充実し、それなりにやっている。 
     ゆいいつ困っていることと言えば、休みのたびにバーベキューに誘われることだ。気候がいい時期なのでバーベキューシーズンなのだ。
    「イヌピー、そろそろオレもバーベキューセットを揃えるべきかな」
     バーベキューの次の日。オレはイヌピーに訊ねた。それはこの国でしばらくやっていくということだが、わかっているのかいないのか、「いいな」と言って、イヌピーは目を輝かせた。イヌピーはイヌピーなりに昨日のバーベキューを楽しんだということだ。
    「じゃあ、今から買いに行こうぜ。でっかいのを買おう」
     決まると行動が早いのがイヌピーだ。まぁオレも大体の目星はつけているのだが。
    「とりあえず、ふたり用でよくないか?」
    「でかいほうが勝ちだろ」
     イヌピーはそういうところあるよな。なにせオレはイヌピーの笑顔に弱いので、でかいバーベキューグリルを買うことは決定事項になった。そのまま肩を抱いて、額をくっつける。なにせオレたちは昨日のホストたちいわく『すてきなマブ』なのだから。

        
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